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Weps うち明け話 #998

数年後の楽しみ(2019年12月26日) 

 

 関根貴大と汰木康也は同い年で、お互いがレッズのジュニアユース、F・マリノスのジュニアユースにいたころ対戦した。

 そういう関係だと当然ながら、ユースでも対戦することになり、中1、高1のころからそれぞれのカテゴリーで試合に出ていれば何度も同じピッチで戦うことになる。

 

 セレッソ大阪堺レディースは、最近なでしこリーグで頭角を現わしてきた。まだリーグの一部と二部を行ったり来たりしている状況だが、あと数年後には一部で優勝争いに絡んでくるかもしれない。そう考える理由はこうだ。

 

 僕が初めてC大阪に女子チームがあることを知ったのは2011年だ。夏に行われる全日本女子ユース(U-15)サッカー選手権。それまでJヴィレッジで開催されていたが、東日本大震災があってからは大阪のJ-GREEN堺で行われるようになった。当時、その大会でレッズレディースジュニアユースは3連覇しており、この年から中学3年生ではなく、中学2年生以下のチームで出場するようにしていた。中学3年生の選手たちは高校生と一緒にU-18のカテゴリーで試合に出場していたのだ(現在は年齢に応じたカテゴリー分けになっている)。

 2011年、第16回大会の準決勝でレッズレディースジュニアユースはC大阪レディースU-15と対戦し、5-1で圧勝した。中心メンバーだった中学2年生の選手には、現在レディースのトップチームに所属している松本真未子、塩越柚歩、遠藤優らが、1学年下には南萌華や長嶋玲奈がいたときだ。

中学2年生主体のチームで中3生主体のチームに勝つ。この大会で、それに少し快感を覚えていた僕だったが、メンバー表をよく見て驚いた。C大阪レディースU-15も2年生主体のチームだったのだ。聞けば、レッズのように意識的に下の年代のチームで出場しているのではなく、チームの最上級生が中学2年生、すなわち発足して間もないチームであり、小学時代にスカウティングした子どもたちが上がってきたのだという。前年、中学1年主体だったときは、さぞ苦戦の連続だっただろうが、その翌年には関西予選を勝ち抜き、全国大会でもベスト4に上がってきたのだ。

 これは将来、脅威になるのではないか。そんな予感がしていた。もっとも、そのときはレッズレディースジュニアユースの大会4連覇(それも初めて中2生以下のチームで)を喜ぶ方が大きかったのだが。

 

 そのわずかな予感が的中したのは、それから4シーズン後の2015年度。毎年、1月に行われる全日本女子ユース(U-18)サッカー選手権だった。

 同じくJ-GREEN堺で開催されるこの大会で、レッズレディースユースはこの年、優勝を目指して順調に勝ち上がってきた。準決勝の相手は、セレッソ大阪堺ガールズと名前は変わっていたが、4年前にU-15大会で圧勝した相手だ。もちろんメンバーは多少入れ替わっていた。

 当時のことを塩越に聞くと「決勝の相手、日テレ・メニーナに勝つことばかり考えていて、準決勝の相手はあまり意識していなかった」と言う。もちろん戦う相手がどこか知らないはずはないから、4年前に5-1で勝っている相手であることは頭にあっただろう。しかし「三日会わざれば刮目せよ」という言葉は、何も男子にだけ当てはまるものではない。その準決勝、レッズレディースユースはC大阪堺ガールズに1-2で敗れたのだ。当たりが強く、前への推進力もパワフルな相手に、チャンスも作れたがシュート数でも上回られ、0-2から終了間際に1点を返すのが精いっぱいだった。「本当に強くなっていた」と塩越は当時を振り返った。

 C大阪堺ガールズがその年だけ強かったわけではないのは、翌年の同じ大会の今度は決勝で対戦して思い知らされる。なんとレッズレディースユースは0-4で完敗したのだ。取材していて「えげつないくらいに強い」と思ったし、自分のファウルで倒れた相手が痛んでいても、審判に促されるまで謝るどころかそばに寄ろうともしない振る舞いにあきれもしたが、勝負に専念することをたたき込まれているのだろう、と実感した。

 そして、それから間もなくC大阪堺レディースがなでしこリーグに参入した。さすがに年齢制限のないトップリーグでは、それほど簡単には勝てず一部定着が今の課題かもしれないが、堺ガールズから毎年優秀な選手が昇格してくるのだから、冒頭で述べたように、なでしこリーグ一部の優勝に絡んでくるのも遠くないと考えても不思議はないだろう。

 

 先日、12月21日(土)に行われた、なでしこリーグに所属するクラブの育成チームが出場する「U-15なでしこアカデミーカップ」の準決勝で、レッズレディースジュニアユースが対戦したセレッソ大阪堺アカデミーは、その中学生チームだ。レッズが優勝した夏の全日本U-15女子選手権でも優勝候補筆頭と思っていたが、早くに番狂わせ的に負けてしまったので、今季初めての対戦だったのだが、1-2でレッズレディースジュニアユースが敗れた。

 失点は2点ともミスが少し絡んでいたし、勝つチャンスもあった。しかし全体的な力では相手がやや上回っていた、というところだろうか。

 ただ前半はペースをつかめないまま2失点してしまったが、後半早々に1点を返すとレッズがあと一歩のところまで追い上げた。惜しい内容だったと言える。

 試合が終わり、スタンドのレッズサポーターに挨拶した後、キャプテンの角田楓佳は、百武江梨監督が肩に手を掛けるまでしばらくピッチを見つめていた。表情は見えなかったが、おそらく試合を振り返りながらリベンジを誓っていたのだろう。

 

 そう。先輩たちがかつて高校3年生のときに味わった驚きと悔しさを、今度は数年後に君たちがユースの大会でC大阪堺ガールズに与えて欲しい。それが切磋琢磨。そうやって日本の女子サッカーが強くなっていく。

 

 2年後か3年後か。この2チームの対戦は絶対に取材したい。

 

(文:清尾 淳)

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