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Weps うち明け話 #1007

画面の向こうの西川にした質問(2020年3月2日) 

 

 昨日(3月1日)からレッズの練習が再開された。

 午前、午後の2部練習で一般には非公開、メディアには公開、というのは人が集まることでの新型コロナウィルス感染拡大リスクを高めたくない、ということだろう。メディアにも全員マスクの着用と手指のアルコール消毒が要請された。

 メディアには公開、と言ってもそれは練習を見たり、撮影したりするのはOKというだけで、選手や監督と話をすること、つまり接近はご遠慮ください、ということだった。昨日は、午後練習が終わったあと、キャプテンの西川が代表して取材に応じた。それも面談ではなく、テレビ電話を使ってのリアルタイム取材だった。タブレットの向こうの西川をメディアみんなが見て、いろいろ質問し、西川が答えるという光景は、宇宙船の中にいる飛行士と会話しているところを思い浮かべてもらうとわかりやすいだろう。声のタイムラグはほとんどなかったが。

 大勢の(昨日はかなりいた)メディアに大原まで来てもらって、選手を取材させないのは申し訳ない。しかし万一のことを考えるとリスクを軽減する措置を取らざるを得ない。そう悩んだ広報担当が考えついた「苦肉の策」だった。今後どうしていくか、さらに検討するそうだが、現状では悪くない、と言うか、これしかない方法ではないかと感じた。

 

この「バーチャル記者会見」中、ずっと悩んでいたが、最後に僕も質問した。

「無観客試合」について、どう考えるかだ。

 西川の答えは予想どおりだった。かいつまんで言うと、

「2014年に経験して、二度と無観客試合はやりたくないと思った。試合にはサポーターの存在が欠かせない。大勢のサポーターの前では絶対にふだん以上の力が出る。無観客での試合は全く違うものになってしまう。だから選手としては、無観客試合は避けたいのが本音だ」

 

 質問しようかどうか悩んだ理由は、おそらく西川はそう答えるだろうが、だからといって自分たちだけでなく国民全体に関わる問題を、軽々に「Jリーグで無観客試合はやめて!」とか「嫌だ!」と言えばいいという状況ではないからだ。

 それでもJリーグで唯一の無観客試合を経験した2チームのうちの一つ、浦和レッズの選手やサポーターが「無観客試合の経験」を語らないうちに、そういう結論を出して欲しくないという思いがあったから、答えが想像できる質問を敢えてした。

 

 プロ野球のオープン戦などいくつかのイベントが無観客で行われ始め、大相撲三月場所も無観客開催になることが決まった。大相撲はチケットの払い戻しなど10億円の損失だと言われている。今後、プロ野球の公式戦がどうなるのかわからないが、開幕が今のところJリーグの再開とされている3月18日よりあとだから、Jリーグの方が先に何らかの方針を出すことになるかもしれない。

 クラブ経営にとっては無観客試合による経済的打撃は計り知れないのはもちろんだ。これにも国から何らかの補助があるのだろうが(安倍首相の発言ではそう受け取れる)、最も大きなネックとされるのはそこだろう。

 だが、もう一つ。他のスポーツも言えることかもしれないが、Jリーグが無観客で行われたら、それはまるで違うものになってしまうんだ、ということもしっかり理解しておいて欲しいのだ。

 無観客でもテレビで中継はされるだろう。たとえば普通の試合をテレビで音声を消して見るのと、無観客試合をそうやって見るのとでは、絶対に選手たちの動きに大きな差があるはずだ。よく生観戦とテレビ観戦では迫力が違うと言われるが、それとは次元が違う話だ。Jリーグの観客は、演劇で言えば観客であると同時に演者あるいは背景だし、応援は試合を構成する一部だ。

 何度も言うが、だから無観客にしないで、と軽々しく言う気はない。それもしっかり飲み込んだ上での結論をJリーグには出して欲しいのだ。

 そして、2014年に下したあの制裁措置は、それほどのものだったんだ、ということをあらためて言っておきたい。

 

EXTRA

 このコラムを更新しているときなのかどうか迷ったが、僕は新型コロナウィルスに関して無力であり、自分ができるのは、レッズについて書くことだけだ。そして試合がない現在、少しでもレッズに関するものに触れたいと思っている人もいるだろうから、その人たちのために書こうと、埼玉縣信用金庫さんとも相談して決めた。

 今回は、ウイルス関連の話になってしまったが、次回からは純粋にレッズだけの話になると思う。

 

※写真1 タブレット電話で西川に質問した(3.2)

 

※写真2 バーチャル記者会見が唯一選手の話を聞ける機会だった(3.2)

 

(文:清尾 淳)

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