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Weps うち明け話 #1010

学力テスト(2020年3月10日) 

 

 #1008「だから言ったでしょ」で、3月に入って練習が再開されてからの紅白戦がキャンプより激しくなっているようだ、と僕の感触を書いた。選手たちはどう感じているのか聞きたかったので7日、汰木の“通信取材”の際に、キャンプ中の紅白戦と比べて今はどうか聞いてみた。

 

 汰木「紅白戦の強度、球際の部分はキャンプの頃より激しくなっていますし、プレースピードや判断のスピードもキャンプの時以上に上がっていると思います」

 その理由として「キャンプよりは今の時期の方が調子は良いと思いますし、それは自分だけではなくみんなに共通して言えることだと思います」と、時間の経過とともに個人のコンディションや動きが良くなってきたことを挙げている。それはもちろん、必要な条件の一つだろう。

 

 だが#1008で僕が書いた、「スタートラインから見て自分がどこに立っているかが少し明らかになった今だからこそ、ある意味でその(「自分が先発で出る」という)思いは開幕前のキャンプより強くなるのかもしれない」という背景も絶対にあるはずだ。

 昨季の汰木は結果をあまり出せず、今季は開幕から2試合先発し、2試合とも得点に絡んでいる。本人は自分のゴールがなかったこと満足していないようだったが、この2試合だけでも、昨季とは段違いだと試合を見た誰もが思っている。

 実際、汰木のキャンプでの動きは非常に良く、練習試合ではよくゴールに絡んでいた。その結果が、開幕2試合先発だ。頑張ったら成果が出る。これを維持するには引き続き、いやもっと頑張らないといけないという心理になるから紅白戦に熱が入るのは当然だと思う。

 一方、同じように頑張り、結果も出していた多くの選手のうち、たとえばマルティノスは2試合とも途中出場。仙台戦ではゴールを決め、湘南戦では決勝点に絡んだから、彼も昨季に比して段違いの貢献度を示していると言えるが、先発の座はまだ回ってきていない。それなら、と紅白戦でアピールする意欲は高くなる。

 また昨季まで多くの試合で先発していたが、今回2試合とも先発を外れた選手もいる。内心、面白かろうはずがない。先発の座を奪還するために、これまで以上にギアを上げるのも、これまた当然だ。

 

 一般的には、自分に対してある評価が示された場合、良い評価だと安心してしまう人もいるし、悪い評価だとやる気をなくしてしまう人もいる。前者より後者の方が多いかもしれない。

 だがプロスポーツの世界で、そういう振る舞いをしていたら、すぐに脱落してしまう。シーズン開幕から間もないこともあるが、今の選手たちはみんなが向上心を持ってやっている。大槻監督が、こういう時期には紅白戦の際にメンバーをシャッフルして分けていることも、その一因だろう。まあ、それも時間があるからできることだが。

 

 一方で、紅白戦だけではわからないことがある。

 8日の通信取材で柏木はこう言った。湘南戦の後に「2連勝はしたが危機感の方が多い」と言っていたが、その感触は変わってきているのか、という質問に対して

 柏木「そこを今突き詰めてやろうというところはすごくやれていると思っています。けど、結局試合の中でしか改善できない部分も大きいです。でも、練習の中で、ビルドアップに関しても守備に関しても、ある程度みんなでこうしよう、というのはあります。そこをみんなができるようになったときに、もう少し試合の中で良くなっていくと思います」

 

 キャンプでは適度な間隔で練習試合が行われ、紅白戦で強化した部分を対外試合で試す、ということができた。たとえが正しいかどうかわからないが、ふだんの練習での紅白戦が学校でいうと「小テスト」のようなものだとしたら、練習試合は全国一斉の「学力テスト」みたいなものかもしれない。その点数によって成績が左右されるわけではないが、自分の実力と現在地を知るには、良い物差しになる。

 練習が再開して9日間、そろそろ練習試合をやりたいところだが、この状況ではなかなか難しいかもしれない。

 

EXTRA

 と思ったが、ここまで練習は「一般非公開、メディア公開」が続いていたのに、10日、11日はメディアにも非公開だ。練習後の通信取材もない。もしかすると、ここで練習試合を入れることも考えられる。その結果は知らされなくても構わない。ただ非公開明けの練習に何か違いが出るかどうか、目を凝らして見てこよう。男子、三日会わざれば、だ。

 

EXTRA×EXTRA

 昨日、Jリーグが3月中の公式戦を延期すると発表した。4月最初の公式戦からの再開を目指すと言う。「本当に18日に再開できるのか」と思いながら、レッズのホームゲームに当たるのでMDPの準備をしてきたが、一時中断して他のことにシフトしていこう。このコラムはもちろん、自分にできることは何かをこのところいつも考えている。

 

(文:清尾 淳)

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