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Weps うち明け話 #1013
忘れてはいけないこと(2020年3月17日)
3月16日(月)のテレビ会見は武藤雄樹だった。
武藤はいつもどおりの明朗快活な話し方で、立ち会った記者たちにはありがたかっただろう。中断に入ってからの取材方法はずっと変わらず、公開練習のときに練習を見るのは自由。その後の個別取材はNGで、選手たちの動線にはあまり近寄れない。取材は1日1人、テレビ通信による共同記者会見によるものだけだ。
決して良い取材環境とは言えない。にも関わらず、プレスルームには毎日多くの記者がいて、例の「クラスター発生のリスク条件」に近い気もするが、二方向での喚起と長時間はそこにいないことで、何とかクリアしている。
そんな状況だが、他のクラブに比べればレッズは取材ができる方らしい。だから材料が必要な全国メディアも毎日のように取材に来るということになる。
異常事態の中での練習はどんな具合か、好調なスタートを切ったレッズだがそれを維持できるか、再開が再延期になったことでの心理的な影響は、自身やチーム、家族が感染リスクを避けるために心掛けていることは、さまざまなプロスポーツが延期されたり無観客で開催されたりしているがそれについてどう思うか…。
目下のところ、それが取材すべきこと、サポーターも関心あることに違いない。この日の武藤も、それらの質問に対してしっかりと答えていった。僕が聞こうかな、と思ったことにも言及してくれたので、今日は自分は質問しなくていいな、と考えたとき、僕は沖縄キャンプ以降、他の選手たちにして武藤にはしていない質問があったのに気がつき、彼の顔が映し出されているパソコンの前に進み出た。
質問:昨年末、土田SDと面談したと思いますが、今回クラブの強化体制が大きく変わったこと、そして『浦和を背負う責任』についてどう受け止めていますか。
「僕の中では加入してから試合にも出させてもらっていますし、ずっと試合に出してもらえることでたくさんのファン・サポーターのみなさんに後押ししてもらって一緒に戦っている中で、レッズには本当に素晴らしいファン・サポーターがいると思っています。その方たちの期待に応えなければいけないとずっと思っていましたし、プレーで見せること、結果で見せることが浦和でやる責任だと思ってきました。結果を残したこともありますが、もっともっとタイトルを獲りたいとも思っているので、これからも浦和のために全力を出して戦うということが浦和の責任を果たすということだと思います。今年も自分にできることを全て出して、浦和のために戦いたいと思っています。」
満点、というと偉そうに聞こえるかもしれないが、聞きながらそう感じた。あまりにスラスラ語られると言葉だけが上滑りして聞こえてしまうことがあるが、武藤の誠実さはよく知っているからそんなこともなく、胸に落ちた。
だが前半の質問に関しては…
「チームの強化体制は変わったかもしれませんが、僕がやるべきことはそんなに大きくは変わらないと思います。チーム一丸となって戦っていければと思っています。」
質問の仕方が悪かったか。たしかに選手にとってはクラブの強化体制がどうなろうと、あまり関係ないかもしれない。だが、その強化担当が打ち出す方針は、チームに、そして選手たちにも関わってくるはずだ。
今回、クラブが出した「3年計画」について現在31歳の武藤はどう受け止めているのか。そして監督ではなくクラブが、チームの戦い方として「個の能力を最大限に発揮すること」「前向きに、積極的に、情熱的に戦うこと」「攻守に切れ目なく、常にゴールを奪うためのプレーを展開すること」という3つのチームコンセプトを打ち出したことを、選手としてどう思うのか。
異常な事態の中でつい忘れそうになっていた。今度、機会があったら武藤にもじっくり聞いてみたいし、早くその機会が欲しいものだ。
(文:清尾 淳)