コラム

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「非常識がいつしか常識に?」 清尾 淳
 


 浦和レッズについて、あちこちのJリーグのスタジアムを回っていると、いろんなことが目につくし、鼻につく。僕の目と鼻は足掛け7年の間にすっかりレッズ仕様になってしまったのだろうか。?な出来事がいっぱいあるんだ。ちょっと聞いておくれ。

 駒場スタジアムに、レッズがあるチームを迎えたときのこと。ビジターサポーター専用エリアの入口で、係員と相手のサポーターが何やらもめていた。たまたま僕はそこにいて、やりとりを聞いていたのだ。サポーターは開場時間の前に応援のための楽器を先に持ち込ませろと要求していた。

サポーター「大勢の人と一緒に楽器を持ち込むと危ないから、先に入れさせてよ。」
係 員「いや、それはできません。」
サポーター「じゃあ、入るときにケガ人が出たら責任はお前が取れよ。」
係 員「いや、そんな。」
サポーター「俺たちはトラブルがないように、どこのスタジアム行ってもそうしてるんだよ。常識なんだよ。ここだけ、それをしないで事故が起きても知らないよ。」


駒場スタジアムのビジタースタンドは専用席
(写真は記事とは関係ありません)

 実際にはこんなていねいな言葉遣いではなかったが、上品な僕にはそのまま書けない。結局、サポーターは中に入れないが係員が中に運び込むことになり、制服を着た係員たちは、サポーターにあれこれ指図されながらドラムセットを中に搬入した。

 僕はそのやり取りを見ていて、吹き出しそうになった。なぜって、自分が持っている物が当たって誰かにケガさせたら、本人が責任取るのが当たり前。他人にけがさせるような物を持ってくるほうが悪い。

 ある中学校のサッカー部の練習で、スパイクの準備をしていなかった生徒が練習のスタートに遅れてしまい、ヒモを通している間にコーチにそのスパイクを取り上げられて頭をたたかれた事があった。コーチいわく「ちゃんと履いてりゃ、スパイクでぶたれなかったろうが!」−確かに履いているスパイクでなぐることはできない。でも無茶苦茶である。師弟関係で相手が中学生ならなんとか押し通せるが、世間では通用しないなあ、と思っていた。その言い分を思い出した。

 しかし、一番腹が立ったのは、それが常識、と彼らが思っているところ。彼らのホームではそれが慣例になっているのだろうけど、よそのスタジアムにはそんな慣例はないはず。あくまで彼らだけ(うるさいから)特例でそうしてもらっているに違いない。少なくとも駒場スタジアムにはそんな常識はない。そもそも応援にドラムセットをいくつも持ってくること自体が常識とは思えない。

 だとすれば、それなりの頼み方があるはず。この場合もきちんと筋を通して頼めば、係員が運営の責任者に打診して、許可が出たかもしれない。もっともそんな必要はないのだ。だってそのゲートはビジター専用だから並んでいる人はみんな仲間のはず。開場時間になったら、楽器を一番先にゆっくり入れれば済むことで、誰も競争なんかしなくていいはずなのだ。

 「これが常識だよ」という彼らの言葉が、本当にそう思っているものなのか、係員に認めさせるためのハッタリだったのか、ちょっとわからない。だけど、自分たちだけの特例をお願いする側が、それを常識と言い張る非常識にあきれたのだった。

 ところが、この話には続きがあった。と興味を引く終わり方をしておこう。