さいたまと
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COLUMN●コラム


#040
眠くてすがすがしい2000年の幕開け


 あけましておめでとうございます。

 2000年が明けて30分後の1月1日午前0時半から、テレビ埼玉で行われた「どうなるレッズ、どうするレッズ、大討論会」という生放送の番組を取材に行った。

 見た人も多いと思うが、一応説明しておくと、セルジオ越後さん、松本暁司さん(埼玉県サッカー協会理事長)、福田知孝さん(レッドダイヤモンズ後援会運営委員)、相良純真さん(レッズサポーター・URAWA BOYS代表)、水内猛さん(テレビキャスター、元浦和レッズ選手)、河野正さん(埼玉新聞社運動部)、田口禎則さん(浦和市議、元浦和レッズ選手)という7人をゲストコメンテーターに、集まったサポーターを交えて標題のテーマで語り合うというものだ。進行は上野晃さん(フリーアナウンサー)。会場のスタジオには80人近いレッズサポーターが詰めかけ、満員になった。

 実は、大晦日には実家の石川県にいる予定だったが、この討論会を取材するため妻子だけ先に帰して、僕は1日遅らせた。6時間前の午前4時に会が終わったばかりで、いま新幹線の中でこのコラムを書いている。2000年の1月1日に飛行機に乗る勇気は、さすがになかった。

 率直な感想を述べると面白かった。テレビ埼玉は、これまでレッズというと試合中継以外は、情報中心の番組ばかりで、こういう硬派なものは初めてだと思う。レッズのJ2降格という状況が、この番組を産んだのだろうが、思い切った企画を立てた関係者に敬意を表したい。

 ただ、「大討論会」にはならなかった。最初の趣旨としては、テレビ朝日の「朝まで生テレビ」的なものを考えていたと思うのだが、それとはだいぶ違ってしまった。ゲストコメンテーターや会場のサポーターから出た意見について、互いに反対意見を述べるシーンはほとんどなかった。

 たとえば、フロントの責任を問う署名活動や三菱製品不買運動などを肯定する人と否定する人。絶対に1年でJ1に戻るという決意を述べる人と、このままでは1年で戻れないだろうという人。一所懸命さが伝わる試合が見たいというサポーターと、一所懸命にやっていれば負けてもいいのかというセルジオさん。明らかに、他の人の意見に疑問を呈したり、否定したりしているのに、そのことが「もまれる」ことはなかった。というのは、テーマが多岐にわたっていて進行が追いつかなかったこともあるが、みんな「討論」に慣れていないことが理由だろう。

 公の場で、相手を目の前にして「あなたの意見は少し(だいぶ)おかしい」というのは勇気がいることかもしれないが、問題を掘り下げるには欠かせないことだ。今後、そういうことにみんなが慣れてきて、もっとテーマを限定してやっていけば、この討論会の意義は非常に大きくなる。

 「今後」などと簡単に言ってしまったが、僕はこういう会を今後も持っていってもらいたいと思っている。もちろんレッズからも出席して、だ。今回はあくまでテレビ埼玉が急に立ち上げたイベントだし、内容もよく見えなかったから、クラブとしても出席しにくかったのだろう。しかし、これからはサポーターとの対話集会を開いていく、とレッズも表明しているのだから、その一つと位置づければ、この「大討論会」は充実していく。

 今回の80人というサポーターの数は、何とか「対話」と呼ぶことができる範囲だし、一度に大勢の人が見ることができる。生放送であれば、ファクスやメールで参加することもできる。クラブ以外にコメンテーターがいれば、内容がもっと深まる。直前のMDPに議論のたたき台を掲載しておけば、進行もスムーズだろう。テレビ埼玉さんにはぜひ検討をお願いしたいし、番組制作を可能にするために三菱自動車はスポンサーとして協力してほしいものだ。

 レッズのフロントが出席すれば、「討論するのに慣れていない」などと心配することなく、議論が沸騰するかもしれない。しかしレッズが出席しても、サポーターからの批判や意見に対してただ頭を下げて「お説ごもっとも」と言っているだけでは、これもまた意味がない。サポーターの意見でおかしいところは指摘しなければならないし、反論するところは反論しなければならない。そういうぶつかり合いがあって、初めてクラブとサポーターが互いをパートナーとして高まりあっていけるのだと思う。

 新幹線から乗り換えた特急も、そろそろ福井県を抜ける。元日に浦和にいたのは、たしか昭和最後の正月だったから11年ぶりだが、帰省を1日遅らせた甲斐は十分あった。僕にとってはすがすがしい2000年の幕開けだった。眠いけど。

 今年もこのコラムとMDP、あわせてよろしくお願いします。

(2000年1月1日)