さいたまと
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COLUMN●コラム


#041
「留任」情報が生んだ混乱


 12月21日付埼玉新聞の「非難覚悟の留任」という記事を見て驚いた。レッズの中川代表と横山GMが留任するという。びっくりしたのは、そのこと自体ではない。あの時期にそんなことが報道されたことだ。

 そのころのレッズサポーターの関心は、第一に小野伸二の去就、第二に新監督が誰か、第三にレンタル移籍選手やフェルナンド・ピクンの動向であって、中川、横山両氏が辞めるのか、残るのかということは、その次ぐらいに来る事項だった。

 それが、来季のレッズがどうなるのか、ということをほとんど示さずに、ただフロントのトップ2人が留任することだけを知らせるのは意味がない。それどころか、来季を案じるサポーターを馬鹿にしてるのか、ということになりかねない。思った通り、その日からクラブには「抗議」のファクスやメールが押し寄せたようだ。

 しかし僕は、ある意味でホッとした。というのは、あの「留任」の情報はレッズの側から流したものだと思っていたのだが、実際はそうではないことがわかったからだ。レッズの中川代表も横山GMも、自分からそんなことは一言も話していなかった。記事はすべて記者の独自ルートでの取材で書かれたものだった。新聞は、それが仕事だから他紙より1日でも早く載せたいというのは当然のこと。レッズ本体からでなくても確実な情報をつかんだら書いてしまいたいだろう。

 レッズのフロントが、他の強化策を何も打ち出さないうちに代表、GMの留任だけを記者にもらすほど脳天気でないことはわかった。しかし情報管理という点では大いに問題がある。クラブの外部からとは言え、「留任」が報道されることによって、どんな混乱を招いたか、よく振り返ってもらいたい。

 選手の残留・新規獲得の状況、新監督の発表、サポーターとのコミュニケーションの持ち方、MDP増刊号を出すこと、それらと合わせて中川、横山両氏の留任が発表されたのなら、その方針の内容について議論ができた。またフロントの人事についても、そういう方針を遂行していくのふさわしいものなのかどうか、という観点で是非が言えた。

 12月の下旬は、そのための重要な時期だったのに、21日以降は「留任」問題だけにサポーターの興味が集中してしまった。問い合わせや抗議を受けても、正式に発表していないものだから、クラブのスタッフも対応に苦慮し、そこで24日に正式な「留任」発表があったのだ。不手際、と言っていい。

 その不手際の原因はどこにあったかというと、なかなか判断が難しいのだが、一つだけ言わせてもらうと、レッズはフロント以上の力を持ったOBが多すぎるように思う。

クラブのトップシークレットを、外部の人から記者が聞き出せるような状況にあって(聞き出すテクニックも必要なのだが)、レッズのフロントは悔しくないのだろうか。

(2000年1月2日)