さいたまと
ワールドカップ





COLUMN●コラム


#058
  「アマーティアス」って知ってますか?


 4月8日、駒場スタジアムで「アマーティアス」マッチの第3戦が行われた。

 「アマーティアス」とは聞いたことのない人もいるだろうが、埼玉県在住のサッカー経験者でチームを作り、2002年ワールドカップの埼玉開催を盛り上げるために、世界各国のチームと試合を行っていこうというもの。世界各国のチーム、といっても選手は日本に住んでいる人たちで、ほとんどが大使館職員を中心に留学生などが交じってチームを構成しているらしい。といっても、ほとんどの外国は日本よりサッカー経験者の比率が高いから、限られた人数の中でもかなり強いチームになっており、実力者を集めた「アマーティアス」チームといっても、楽には勝てないようだ。

 「アマーティアス」とはアマチュアから来ていると思ったら大違い。「SAITAMA」を逆から読んだものなのである。ネーミングにもしゃれっ気があるし、草の根の国際交流として、大変意義あることだと思う。これまでにアルゼンチン、イギリスのチームと対戦しているが、できればもっと試合の頻度を高めて、いろいろな国のチームを呼んでほしいし、前回あった物産展とかもやってほしいと思う。2002年で終わらず、ずっと続けていってほしいものだ。

 ただ残念なことがある。この「アマーティアス」マッチ。あまり報道されないのだ。企画立ち上げのときは各マスコミで紹介されたし、昨年6月の第1戦(アルゼンチン)のときは、新聞各紙でも取り上げていたと思う。

 しかし第2戦のイギリス(昨年10月)のときは、「え?いつやったの?」という感じだった。自分の情報アンテナの感度が鈍いのを恥じなくてはいけないのだけど、それにしても世の中に出ている情報が少なすぎる。今回のトルコ戦のことだって、4月6日の午後9時ごろ、レッドダイヤモンズ後援会の運営委員会に出ていて(僕、運営委員なんです。何かあったら言ってくれてもいいですよ)、同じ運営委員の浦和市役所の人から「8日、これがありますので、よろしければどうぞ」と紙を渡されて初めて知ったのだ。それで、たまにはMDPにも載せようと、花見をやめて取材に出掛けたという次第だ。

 「アマーティアス」の露出(変な響きがあるかもしれないけれど、広報・宣伝関係では、こういう言葉を使うんです)が少ない理由。それは、このイベントの主催に毎日新聞浦和支局が入っていることと無関係ではないと思う。

 このイベントの主催は浦和市、埼玉県サッカー協会、毎日新聞浦和支局の三者だ。浦和ケーブルテレビの発案に毎日新聞が乗って、浦和市が賛同。サッカー協会が名義的に主催に入ったという感じだと思う。なぜ浦和ケーブルが主催に入っていないのかはわからない。

 報道機関がかんでいれば、宣伝はバッチリだ、と思われがちだが、実はそうでもない。一般的には、ある報道機関が主催しているイベントは、他の報道機関はあまり積極的に報道したがらない。ニュースバリュー、市民生活への関連度によっては、そんなことを言っていられないが、歴史が浅いスポーツイベントなどに、そういう「重要性」はあまりない。ユニークさと将来性、開催の意義などが命だ。高校野球などの国民的行事になると話は逆で、主催が朝日(夏)であろうと、毎日(春)であろうと、取材、報道に一番熱心なのは読売だったりする。

 「アマーティアス」は、まったくもって埼玉らしいイベントで、全報道機関あげて盛り立てていってほしいものだが、そうなっていないのは上記のような理由だと僕は思う。8日のトルコ戦は、毎日新聞埼玉版とNACK5と浦和ケーブルテレビ以外では紹介されなかったと思う。NACK5というより、「大野勢太郎さんの番組」といった方がいい。大野さんが「アマーティアス」チームの監督をしている。埼玉新聞だって取材に来ていなかった。それはそうだ。「こういう催しがありますから取材に来てください」という案内が、どこの新聞社にもいっていないんだから。報道は毎日と浦和ケーブルとNACK5で十分だ、ということだろうけど、本当にそうだろうか。イベントの意義の割に盛り上がりが少なすぎるし、今後大きくなっていく予感がしないのは僕だけだろうか。

 何も、毎日新聞浦和支局が主催からはずれる必要はない。こんな素晴らしいイベントを企画したんだから(言いだしっぺは浦和ケーブルらしいが)、その栄誉とメリットを受け取る権利はある。だけど、イベントのたびに周囲の道路にまで「毎日新聞」の旗をいっぱい並べるなんてことはやめた方がいい。あれではまるで、よその新聞記者封じのお札だ。「第3回アマーティスマッチ」という幟旗でも作って浦和市内に立て、そこに「主催・毎日新聞浦和支局…」と書いてあるくらいでいいじゃないか。

 他の新聞社も「毎日が勝手にやってること…」と無視せず、紙面から「毎日」の文字は削っても、もっと積極的に取り上げたらどうかと思う。どっちが先か、という問題になってしまうが。

 本来、文化を守り育てるのも仕事のはずの報道機関。報道機関がイベントを企画、主催するのは使命にのっとったことなのだけど、そのために他のメディアの協力を得られないというのは善し悪しだ。自分が勤めている会社を忘れている訳ではないが、自戒も兼ねて、そう思う。

(2000年4月14日)