さいたまと
ワールドカップ





COLUMN●コラム


#061
  1試合を切り取る解説者


 4月24日、月曜日の日刊スポーツに、元日本代表選手の都並敏史氏がコラムで仙台−浦和戦のことを書いていた。そういえば氏は前日、仙台スタジアムに来ていた。

 「J1通じぬ浦和」という見出しで「さすが浦和、苦しんでも逆転Vと褒めたいとこだが、仙台まで応援ツアーしたファンは満足できただろうか。そもそも浦和の使命がJ1復帰だけだとは、僕は思っていない。J1の『上位』に復帰すべきチームではないだろうか。(以下、略)」という内容だった。

 氏が忘れている、というか、思いつかないことがある。レッズサポーターは単なる評論家ではなく、一緒に闘っている者がすごく多いということだ。仙台戦のレッズが、後半も前半のような試合をしていたら、闘う気は起こらなかったかもしれない。選手が闘っていないからだ。

 しかし後半のレッズは変身した。追いつき、逆転するんだという気持ちがはっきり見て取れた。穴があろうと、J1上位のレベルに達していまいと、いま目の前で仲間が必死で闘っているのに、評論家然として「まだビルドアップが甘いな」「これじゃJ1で優勝できないな」と腕組みしているサポーターはあまりいない(皆無かというと、自信がないけど)。だったら仙台まで来ていない。

 僕の「勝ち点120からのスタート」論でいうと、1減ってしまったが、2点差に追いつき、Vゴール勝ちした試合に、とりあえずはみんな満足したはずだ。しかしそれだけでも終わらないのがレッズサポーター。何が悪くて、何が良かったのか、帰り道にちゃんと「総括」しているはず。そして開幕当初から、何が向上して何が変わっていないのか、その人なりに考えているはずだ。それが全員同じ訳ではないだろうけど。

 レッズサポーターの多くは、何年もチームを見ている。もちろん今年も何試合も見てきた。仙台戦の前半に、見るべきところがほとんどなかったのに怒りつつも、2点差を引っ繰り返した粘り。前半の悪さを変身させられる試合運び。クビツァと周りとのかみあい。個人技だけでなく、コンビネーションで取った3点。こういうものに、少しずつ手応えを感じているはずだ。

 たしかに今、そのままJ1にスライドしたら、優勝どころか上位争いもできないかもしれない。でも、現実にはJ1の戦いまでにはまだ時間がある。ナビスコも負けてしまったので、J1チームとは天皇杯の3回戦、12月まで当たらない。そのときまでに完璧に強くなっていけばいいと僕は思っている。

 チームも選手個人と同じように、ケガもすればスランプにもなる。レッズは去年、それがいっぺんに来て、しかも対処を間違った(監督の途中解任)。今シーズンは、そのリハビリ期間だと思う。よく言われるように、選手の能力はJ1に見劣りしていないのだから、戦いながら欠点を少しずつ矯正していけばいいはずだ。

 サポーターの中には、ナビスコで川崎フロンターレに負けたことや、J2の中で失点したり、常に大量得点できるとは限らないことに不満たっぷりの人もいるだろうが、僕はちょっと違う。40試合を最後までアップアップでは困るが、シーズンが終わるころには完璧に強くなっていれば、それでいい。そしてリーグ戦で試合のたびに、行きつ戻りつしながらも、上向いているのをちゃんと感じているから。

 都並さん。あなたの言うことはもっともだけれど、仙台戦のレッズだけを切り取って述べている。それが解説者なんだろうけど、大原では会ったこともないし、試合でもあまりお見かけしないあなたが、去年の春先に指宿の合宿にちょっと来ただけでレッズを優勝候補筆頭に挙げた。あのときから、あなたの評論家としての言葉には重みを感じられないのですよ。

 

(2000年4月25日)