さいたまと
ワールドカップ





COLUMN●コラム


#082
  様変わりしていた2度目のチャールトン


 30日火曜日、午後3時半ころロンドンのヒースロー空港に着いた。ヴァージン・アトランティックはムチャクチャすいていた。埋まっているのは席の4分の1から3分の1というところ。こんなの初めてだった。平日だからか?

 この日は夜の8時からチャールトン・アスレチックvsダービー・カウンティがある。アーセナルの試合もあったけれど、チケットがあるはずないし、ダフ屋から買うにしてもだいぶ高いだろう。時間があれば、早めにアーセナルに行って、ダフ屋の様子を見てからチャールトンに行く手もあるが、ロンドン到着の当日だから、そんな時間はない。これだけロンドンに行っていてアーセナルを生で見たことがないというのも悔しいが、これはあきらめる。

 今回、たまたまサッカーを見にロンドンに来ていたレッズサポーターのMさんと待ち合わせ、チャールトンに向かう。チャールトンの試合は、97年に来たときに見たことがある。そのときはディビジョン1だったが、このチームはたしか98/99シーズンにプレミアに昇格し、1年で降格。そして00/01シーズンにまた上がってきたはず。今回はこの時点で9位だから、1年で降格することはないだろう。

 ディビジョン1時代とどう違うかが楽しみだった。ロンドンの中心部、チャリング・クロスの駅から列車に乗って25分、チャールトンの駅についたのが午後7時15分だった。駅からスタジアム「ザ・バレー(Valley)」までは徒歩5分。雨模様だったが、誰も傘を差していない。僕たちも湿りながら歩く。

 マッチデー・プログラム、2.5ポンド(460円)を買って、チケット売り場を探す。4年前はたしかこのへんだったな、というところにチケット売り場がなく、聞いた場所を見ると長蛇の列。うそ!前はすぐ買えたぞ。でも確かに列の先頭は「Ticket Office」だった。2つの窓口から延びる2つの列に並んでいたら、絶対にキックオフに間に合いそうもない。少し横の窓口に並ぶ列は短い。こっちはどうだ? 「Ticket

 Office for Collection」と書いてある。「Collection」って何だ。コレクション用に特別なチケットがあるのか? 昔、天皇杯であったようなやつか? 違うだろうなあ。でも、絶対に間に合わない列より、ここに並んでおいて、駄目なら移動してもいい。とりあえずMさんに並んでもらって、僕は周りのようすを調べに行った。といっても僕の英語力では詳しい調査はできない。雰囲気でつかむしかない。

 なんの係かは知らないが蛍光色のビブスを着たスチュワードをつかまえて聞いた。
「チケットが2枚ほしいんだけど」
「今夜のか?」
「そう」
「この窓口だけど、買えるかどうかわからない(推定)」
「売り切れてしまうのか」
「あっち側の窓口に行って、余っていれば買えるかもしれない(推定)」。

 「あっち側」というのはMさんが並んでいる「for Collection」という窓口だ。つまり、あそこは一般チケット売り場ではないけれど、売ってくれるかもしれない、ということか? うんうん、大間違いではなさそうだぞ。

 Mさんに引き続き並んでもらって、その窓口を見ていると、窓口から離れる人は3種類いる。手帳のようなものとチケットを持っている人、封筒を持っている人、そしてチケットだけを持っている人。

 手帳のようなものはシーズンチケットだと思う。イングランドのシーズンチケットは1枚1枚バラバラにはできないと聞いた。でも、いちいち手帳を見せてチケットに換えるのか? そりゃ大手間だろう。封筒は、おそらく予約したチケットじゃないだろうか。

 ふと思い付いた。「for Collection」って、もしかしてチケットの半券をためておきたいシーズンチケットのホルダーのためにあるのか?イングランドのシーズンチケットは手帳のページを1枚ずつもぎっていく方式だから、シーズンが終わると空っぽになってしまうだろう。半券がないのは寂しい、というサポーターもいるから、そのために一般のチケットと交換する窓口があるとしたら…。そうすると、ここの窓口はシーズンホルダーに対応するチケットと、事前に予約したチケットの2種類のため、ということか? フリーの客は本当に買えるのか?

 でも、裸のチケットだけを持って出てくる人もいる。僕はもう一度、さっきと違うスチュワードに聞いてみた。

「この列に並んでいれば今夜のチケットは買えるのか?」
「そうです。他(意味不明)」
「全員が買えるくらい十分残っているのか」
「そう思う(推定)」。

 極めて怪しいが、首を横に振ったりかしげたりしなかったから、まるで駄目ということはないだろう。Mさんは、窓口まであと20人くらいになっている。そのうちアナウンスが流れた。チケットのことらしい。よくわからないが、「Collection」という単語が聞こえる。よし、これは当日券を買う人に、一般窓口が混雑しているから「Collection」の窓口でも買えるよ、と言っているに違いない。まったく恣意的に解釈することにした。同じ(らしき)放送が頻繁に流れているところをみると、ますますそうだろう。

 Mさんが、このコラムを読んだら「清尾さん、そんな曖昧なことで私に並ばせといたんですかあ!」と怒るだろうなあ。
 いよいよMさんの番になった。
「清尾さん、どうもシーズンっぽいんですけど…」
 Mさんが不安げな顔で僕を振り返る。僕は後ろに並ぶイギリス人をかき分けて窓口に行った。
「係員から、この窓口で買えると聞いた」
「それはそうですが、これでは1枚しか買えません」

 ん? なんだMさんは予約済みなの? だったらたしかにその通りだが、もう1回一番後ろに並ぶんじゃ大変だ。
「2枚買いたいんだ」
「席が離れてしまいますよ」
 そうだろう。Mさんの席は決まっているんだろうからな。
「それは問題ない」

 窓口のレディーは「OK」と言って、にこやかにチケットを取りにいった。そして数枚のチケットを持ってくると、封筒の束からMさんのものを探して取り出すと、紙に何やら書いて裸のチケットを突き出した。僕たちは1枚20ポンド、合わせて40ポンドを渡すと窓口を離れた。

 渡されたチケットを見ると60と61。あれ?連番じゃないか。そうか換えてくれたのか。席が離れる「かもしれない」という意味だったんだな。おや3枚あるぞ?No62もある。1枚余計にくれてしまったのか?どうしようか。もうだいぶ歩いてしまったので窓口まで戻っている時間がない。ええい、行っちゃえ。ごめんよ、レディー。

 てな訳で、無事(?)チケットを手にしてスタンドへ向かうが、これが遠い。駒場でいうと、メースタンドの本部あたりでチケットを買って、西側ゲートから入るのに東側ゲートとバックスタンドを回って行くようなもの。周囲の4分の3を歩くことになる。 4分の1の近い方から回る道がないのだ。しかもバックスタンド側にあたる道はかなりの登り坂になっている。僕たちが入るスタンドは「SOUTH STAND」なのだけど、そこは一番上から入って下へ降りていく。反対側の「NORTH STAND」は一般のスタンドのように下から入って階段を昇る方式だからどれくらい高低差があるかわかってもらえるだろう。

 入場ゲートで並んでいるときにキックオフになった。歓声が上がるたびにあせるが、その後の反応を聞けば、得点はなかったらしい、と安心する。

 試合は前半1−1。チャールトンがCKから先制したがダービーがFKで追い付いた。しかし後半チャールトンが勝ち越しゴールを挙げ、2−1で勝ち。特にどっちでもよいが、やっぱりホームが勝った方がツーリストとしても気分はいい。帰り道は当然、坂を下るのだけど、大勢が坂を登ってくる。8対2の割合で登る人が多い。おいおい、駅はこっちだろう。どうしてみんな逆へ行くんだ?不安になる。

 1・試合後は駅が混雑するので、一方向からしかいけなくなる。
 2・みんな、そちらに家があるか車を置いてあるか。

 「1」だったら、大変だなあと思いつつ、今さら坂道を登るのもつらいので、そのまま行く。駅に近くなっても何の規制もない。入ってホームに行く。サポーターであふれている、ほどではない。来たときはもっといっぱいいた。帰りの方が混むだろうと思っていたのだが、なんでだろう? みんな酒でも飲んでいるのか、列車を利用しないのか、この前の列車に乗ってしまったのか。

 だって座れてしまうんだぜ、2人並んで。来た列車がガラガラだったので、チャールトン始発かと思っていたら、数人は乗っていたからそうでもない。つまり10時すぎになって郊外から都心に行く人は少ないということか。僕は乗ったことがないけど、水曜夜の試合が終わった後、浦和から東京へいく京浜東北線はどうですか?

 97年にチャールトンへ行ったときとはだいぶ変わっていた。僕たちが今回入ったところは相手サポーターと同じ側だった。もちろんしっかり仕切られているが。しかし4年前は、その反対側のゴール裏にすぐ入れた。たしか8ポンドではなかったか、と記憶している。人の入りは7割くらいだった。今回、チケットを買うのに苦労したこと、買えたチケットのスタンドがビジターサポーターに隣接した場所だったこと、試合が始まるころはスタンドがほぼ満席になっていたこと。それが4年の差なのか、ディビジョン1とプレミアの差なのかはわからない。ちなみにマッチデー・プログラムの値段も1.5ポンドから2.5ポンドに上がっていた。10年間、300円で値段据え置きのMDPは立派だなあ。

(2001年2月14日)