さいたまと
ワールドカップ





COLUMN●コラム


#084
  やっぱ昇格組でしょ


 2月1日、2日は試合がなかった。正確に言うと1日にディビジョン2の試合が2つあったが、どちらも行ったら帰って来られないところだった。ディビジョン2や3の試合も見たいのだけど、なかなか機会がない。

 3日、土曜日はイプスウィッチ・タウンvsリーズに行くつもりでいた。ロンドンでチェルシーやスパーズのゲームもあるがチケットは完売。チケット屋だと、60ポンド〜75ポンドと高いし、両方のスタジアムとも僕は行ったことがある。土曜の3時キックオフだから、少々遠くても問題ないので、ロンドンを離れることにし、考えた結果、イプスウィッチに行くことにしたのだ。ここはチャールトン同様、今季ディビジョン1から昇格したチームで、現在なんと5位。昨季のサンダーランドもそうだったが、昇格組としては大健闘している。ちなみにMさんは、この日リヴァプールvsウエスト・ハムに行った。日本でチケットを入手してあったそうだ。リヴァプールまで近くはないが、デーゲームなら戻って来られる。

 さて2日の夕方、地下鉄の中で拾った「Sports」という新聞を見て驚いた。3日のプレミアリーグの試合の予想メンバーが載っているが、その中にイプスウィッチvsリーズがない。カップ戦の都合でリーグの試合が変更になることはままある。だから僕はいつも新聞を見て、確認しているのだが、この日は先にこの新聞を拾ってしまったのが運の尽きだった。何も疑わずに「ああ、イプスウィッチvsリーズは流れたのか、リーズのカップ戦の都合かな」と納得して、じゃあどこへ行こうかと思案した結果、レイトン・オリエント(Leyton Orient)に決めた。知らない人がほとんどだと思うが、ロンドンにあるチームで、現在ディビジョン3だ。古いスタジアムで、ゴール裏は当然手すり付きの立ち見。チームカラーは赤だった。土曜日にボトムリーグの試合を見るのも話のタネになるな、と思った。そうと決まれば楽しくなった。

 ロンドンの試合なら時間に余裕がある。チケットも万が一にも完売ということはない。3日は午後まで観光してから試合に行くつもりで、ゆっくり地下鉄に乗った。土曜日の大衆新聞にはプレミアリーグの試合の見どころが大きく載っているから、それを読んで驚いた。イプスウィッチvsリーズがある!

 ここでやっと僕は気がついた。昨日の新聞は全部の試合ではなく、注目カードだけを載せたものだったのだ、と。大ドジである。ちゃんと「サン」か「デイリー・ミラー」を買って確かめればよかった。

 滅多にないディビジョン3観戦の機会も捨てがたいが、プレミアリーグが見られるならやはりそっちだ。それにレッズサポーターとしては、昇格チームを見ておかないといけないでしょう。

 買い物や食事などの予定は全部狂ってしまい、かなり忙しくなったが、それでも時間は間に合った。12時15分の列車に乗れば、イプスウィッチには1時28分に着く。スタジアムは駅から徒歩5分とあるから、楽勝だ。土曜のゲームは早くからサポーターが集まり始めるから、時間があって退屈することがない。乗り慣れた列車に座ると余裕が出て、寝てしまった。駅に止まった感じで目が覚めた。時計を見ると1時19分。あれ着く時間だったっけ? 周りの乗客が何人か降りたが明らかにサッカーのスカーフをしている。あれはイプスウィッチかリーズか? そもそもイプスウィッチって何色だっけ?

 一瞬寝てしまったこともあって、ややパニックになりかけながら窓からホームの駅名を見ると、イプスウィッチではない。なあんだ。安心してカバンからメモ帳を出し、列車の時間を見ると、ちゃんと1215→1328と書いている。まだじゃないか、しっかりせえよ、と自分を叱り、駅の間隔からすると次あたりだな、と見当をつけて降りる用意をしていた。時計は1時37分、列車のスピードが落ち、駅に着く。さあ降りようと腰を浮かせてたら窓からホームの駅名が目に入った。

「Man…」。

 よく読めなかったが、イプスウィッチ(Ipswich)ではない。ジェフ市原のスタジアムが五井駅にあるのと違い、イプスウィッチのスタジアムはイプスウィッチ駅にあるはずだ。しかし、どこを見てもそういう看板はない。じゃあ違う駅だろう。でも時間はピタリ1時28分だぞ???

 さあ頭は完全にパニック。降りるか、どうする。ここが目的地でないことだけははっきりしているから降りてもしょうがない。列車ホームを離れた。

 考えられることは
1・寝ている間にイプスウィッチを過ぎてしまった。
 →そうだとしたら戻らなくてはならないが、では1時19分より前にイプスウィッチに着いたことになり、そんなに早くなるはずがない。

2・乗る列車を間違えた。
 →だとしたら大変である。しかし確かホームを示す駅の表示は「11」となっていたし、間違いなく11番線から乗ったはずだ。

3・列車が遅れている。
 →それなら、このまま乗っていればよい。しかし発車したのは間違いなく定刻12時15分だった。途中、長く停まったこともないし、アナウンスもなかった。たかだか1時間ちょっとの間に10分も遅れるか?

 答えは「3」だった。列車のスピードはどんどん速くなり、まるで「しばらく駅には停まらないよ」と僕に言っているかのようだったが、時計が1時40分になったころスピードが緩みはじめ、駅のホームが見えた。ここがどこでもとりあえず降りるぞ、と窓に顔を押しつけていた僕の目に「Ipswich」の文字が飛び込んできてホッとした。

 降りて駅員に「この列車は遅れているんだね」と聞いたら「ああ、15分ほど遅れたようだね」と事も無げにいう。しかも全然発車しようとしない。何なんだよ!イギリスってもっと時間に正確な国だと思ってたぞ!

 まあ、とにかく目的地に着いたのだから安心して、スタジアムに向かった。近いも何も、駅から見える。どうやらスタンドを改修しているようで、クレーンがそのままになっていた。さすがに土曜日、あちこちから三々五々サポーターが集まってくる。スタジアムの前の道を人が埋め尽くしている感じだ。とりあえずチケットを買わなくちゃ。おなじみの「Ticket Office」に入る。

「Can I get a ticket?(チケットありますか)」
「ペラペラ(不明)」
 これだよ。YesかNoで答えてくれよ。
「I want to buy a ticket of today’s match(今日の試合のチケットを買いたいんです)」
「ペラペラ(不明)」
 だが、大丈夫らしい。パソコンを操作している。
「Anywhere OK(どの場所でもいいです)」
「ペラペラ(不明)」

 で、1枚のチケットを出してきた。19ポンド。今回訪れた試合では一番安い。これで大丈夫だ。時間があるから周りを見物しよう。かなり人でごったがえしているスタジアムの周りを歩いて見る。ちょうどチケット売り場の反対側に来たとき、芝のグラウンドでサッカーをしている子どもたちがいた。場所的にスタジアムの付属施設のようである。近くまで行くと係員らしき人が寄ってきた。

「Hello」
 本当は「何か用か、日本人」と言いたいのかもしれないが、ハローと言われると悪い気はしない。日本でも、そういうときに「こんにちは」と言ったほうがいいな。

「ここの写真を撮ってもいいですか」
「ピッチに入らなければいいですよ(推定)」
「ここは誰でもプレーできるのですか」
「いいえ」
「じゃあ、あの子たちはクラブのジュニアですか」
「そうです」
「未来の選手?」
「そうそう」
「試合の日だからではなく、毎日練習しているのですか」
「そうです」
 きれいな芝のグラウンドで練習する小学生たちは楽しそうだった。

 さっきからすれ違うサポーターが身につけているイプスウィッチのスカーフやニット帽を見ると、馬の姿を模したエンブレムがすごくカッコいい。オフィシャルのスカーフは高いのだけど、買っていこう。ロンドンの屋台ではなかなかイプスウィッチのスカーフは売っていないだろう。ショップに入ると3種類のスカーフがあった。7.99ポンド(約1470円)。屋台で買うと4.99ポンド、5本で20ポンドというやつに比べると、なんと倍である。でも構わない。

 イプスウィッチのカラーは青だが、赤と黒ベースのものが一番カッコ良いので、それにする。今度のギャラクシー戦に持っていくから、見たい人はおいで。ふと気づいた。クラブのオフィシャルグッズと、屋台で売っているアンオフィシャルグッズの違い。それてクラブのエンブレムがあるかどうか、じゃないか? たしか屋台で買ったものにはチーム名はデカデカと書いているが、エンブレムはないぞ。してみるとエンブレムがカッコ良いイプスウィッチのものはオフィシャルを買って正解だ。いまごろ何言ってるんだか。

 さてスタンドに入った。チケットの券面を見て席を探す。ふと意味がわかる単語に目が行く。「Uucovered Area」。これって、もしかして屋根がない席、という意味か? そんな場所あったっけ? と周りを見回すと、あった。日本でいうとメーンスタンドとサイドスタンドのつなぎ目にあたる角のところ。そこは屋根が切れている。そうか、ほかのスタジアムはここに席がないのだ。

 雨がふらなければ問題ないのだが、朝から一滴も降らなかったこの日、なんと午後3時のキックオフに合わせたように湿ってきた。霧雨がだんだん小雨になる。あまりのタイミングの良さに感心してしまったほどだ。これも話のタネ。

 このあたりのサポーターはなんと試合中ずっと立っているヤツが多い。1人が立つと邪魔になって見えないから後ろや横が立つ。僕も斜め前のヤツもそうだった。通常はいいのだが、こちらのゴール付近が見にくい。ほうら、その間にイプスウィッチが2点入れられちまった。2点目は見たぞ、リーズのボーヤだ。スタンドはもちろん静かなもの。ちょうど僕の対角線のあたりにリーズサポーターの集団が陣取って歓声を上げている。そういえば、96年にリーズに行ったとき、帰りの列車の中で「リーズ・サポーターズクラブ・ロンドン支部」のグループと会ったなあ。今日も来てるかな、などと思ううちハーフタイム。

 面倒だから後半はずっと立っていることにした。ホームのゴールが見られないのは悔しいものな。今日はまだ「イ〜エイ」を聞いていない。

 あらら、イプスウィッチの選手が危険なタックルで退場。0−2で10人、これはきつい。しばらくすると帰り始める人も出てきた。う〜ん、今回はホームゲーム3連勝という訳にいかなかったか。

 しかし後半30分ごろ、イプスウィッチがFKを直接決めて1点差。さあ、こうなるとサポーターのムードが一変する。「カモン」という声がやまない。タッチライン沿いではロングコートを来たデビッド・オリアリー(リーズの監督)が必死で指示を出す。カッコいい。どっしり構えている監督も悪くないけど、メ粳っぱりこの方が僕は好きだ。

 終了。最後まで必死に攻めたイプスウィッチだったが、追いつけなかった。前半の2点が簡単に取られすぎだ。

 帰りの列車はやっぱり楽に座れた。みんな町の中から来て、列車に乗って試合に来るサポーターはあまり多くないようだ。試合の結果は残念だったが、デーゲームは1時間ぐらい前に行ってスタジアムの周りにいると、いろんなサポーターが観察できて面白い。特にやや上等のふだん着、という服装の年配の女性の襟元から、チームカラーのスカーフがのぞいているところなど最高に好きだ。あれは少し色あせていたからディビジョン1時代に買ったものだろうな、もちろん。

 わが浦和レッズとは、やや立場が違うと思うが、やっぱり昇格組は活気があったぞ。今回のイングランド行きは正解だった。

(2001年2月16日)