さいたまと
ワールドカップ


●INDEX

●バックナンバー
●ご意見・ご感想
COLUMN●コラム


#125
空白の横断幕+後日談

 天皇杯の初戦というのは毎年、下のリーグのチームが相手だから、勝って当然。互角に渡り合っているだけでもハラハラする。


 12月9日の試合も、これがJ1のチームならイライラすることもないが、相手が甲府だから前半は我慢のし通しだった。ゴールマウスの前に何人も甲府の選手が固まっているから、ちょっとやそっとではシュートコースがない。相手に攻めさせておいて、マイボールにしたときに早く前に送って、時間をかけずにシュートまで持っていくという方法しかないだろうと思っていた。


 実際、後半レッズが取った点は2点とも早い縦パスから生まれたものだし、もしかして甲府は前半優位に試合を進めていたところから、「勝てるかも」と色気が出てきたのかもしれない。先制点のときは、ずいぶんと甲府が前がかりになって、守備の人数が前半より少なかった。


 トーナメントは負けたら終わりだし、ましてや初戦、しかもJ2のチーム相手となると、いい試合よりもとにかく勝つことが求められる。その意味で前半苦戦して2−0という結果は内容的には褒められたものではないが、結果は100パーセントOKである 。14試合で6チームもJ1が負けたということから考えれば、年間10位のレッズとしては上出来かもしれない。まあ次からは妙なプレッシャーなく、勝つだけに集中できるだろう。


 さてレッズの新しい監督は11日に発表されるそうだ。11日からは森孝慈GM−中村修三チーム統括CM体制になるから、その最初の仕事として、たぶん午前中に選手たちに知らされ、午後からプレス発表ということになるのかもしれない。


 森GM−中村チーム統括CM。これをどう考えたらいいのだろうか。ついでに言っておくと、レッズには「強化部長」というポストはない。「チーム統括グループ」というセクションがあって中村さんはそこのチーフマネージャー(CM)だ。CMは一般の部長級。課長クラスに対応するマネージャー(M)というポストもある(グラウンドで練習の準備をする人とは違う)。一般の企業とは少し違うということを示したいのだろう。


 「森−中村」路線に話を戻す。9日の試合のとき、大宮サッカー場のフェンスに「フロント椅子取ゲームは楽しいですか?」という横断幕と、「NO MORE 三菱(マーク)人事」というゲート旗が出ていた。

 意味はよくわかる。マリノス、アビスパの水を飲んだとはいえ、森さんは三菱OBだし、中村さんはレッズの社内異動だ。また三菱の枠内でのメンバー交代は、確かに新鮮味に欠ける。


 意味をわかった上で、この横断幕に合わせて言うと、椅子取りゲームというのは、参加している人数より椅子の数が少なく、みんなが座ろうと椅子を狙うゲームだ。ひとつの椅子からあぶれても、違う椅子に座れる状況では椅子取りゲームは成立しない。


 それより、浦和レッズのフロントの椅子というのは、みんなが競って手に入れようとするほど「うまみ」のあるものではない。特に今の時期にそこに座らされるのは「火中の栗を拾う」ようなものだ。今回、GMとチーム統括CMに就任する2人には、お世辞抜きにして、その勇気に敬意を覚える。


 森さんはチームの監督も2回経験したし、フロントも2チームで務めてきた。フロントがどうあれば監督がやりやすいか(やりにくいか)は実感しているだろう。中村さんはかつて青山学院の監督を務めたこともあるし、広報時代から選手の気持ちを汲むことに心を砕いてきた。前任者に対して一番注文や批判をしてきたことも知っている。僕は期待しているし、また期待せざるを得ない。


 三菱マークの人、という批判は甘んじて受けるしかないだろう。実際そうなのだから。ここで失敗すれば、三菱以外の人が来て失敗するよりも、もっと大きな批判を浴びることになる。それを覚悟の就任だから、よけいに「火中の栗」だと思うのだ。しかし、 サポーターは「三菱マークだから」批判しているのではなく、身内の中のたらい回し人事に見えてしょうがないから批判しているのだ。たらい回しでも結果が出れば認めるはず。


 選手は何試合かで結果を出せるが、監督の実績はシーズンが終わらないと判断はできない。フロントの評価は下されるのにさらに時間がかかる。森、中村両氏は、これから期待と冷ややかな視線を半々に受けながらやっていくことになるだろうが、ぜひ頑張ってほしい。


 さっき「レッズのフロントの椅子はうまみがない」と書いたが、「うまみ」はなくても「魅力」はあるはず。日本一大きな期待を受けて、しかも一度もタイトルを手にしたことのないチーム。それを強くする仕事なのだから、阪神タイガースの監督よりも難しいポジションかもしれない。難しいから達成したときの喜びも格別に大きい。やる気のある人にとっては日本一魅力的な仕事に違いない。


 批判、というよりおせっかいな助言をしながら、その魅力ある仕事に、違う立場から参加していく。僕は今、そういうつもりでいく。その意味ではサポーターも同じだろう。


 9日の横断幕の隣には、最後に「!」だけ書かれた空白の横断幕があった。「あきれて言葉が出てこなかったから」だそうだが、僕はクラブの回答欄を用意してくれたのかと思った。森さん、中村さん。あそこにぜひこう書いてほしい。

 「楽しいです。椅子取りゲームが、ではなく、みなさんと一緒にレッズを強くしていく仕事が!」

 字余りか。

(2001年12月10日)

(後日談)

 中村修三氏から「清尾さん、コラム読んだよ。俺もそういうふうに書きたいね」と言われた。
 レッズを運営するものと応援するもののつながりは、見方を変えると「金を払うお客さん」と「その収益で給料をもらう人」みたいになってしまう。しかし、それだけでは悲しい。僕たちが喜びを感じるのは精神的な満足感が大きい訳で、そういう意味ではクラブのスタッフ、フロントとサポーターは、たとえすべてが一致しなくても心が通い合っていてほしい。ぶっちゃけて言えば、試合に負けたときにもサポーターのところへ酒が飲みにいけるフロントであってほしい、ということだ。
 修三氏を引っ張っていくのでリクエストは僕に。マネージャーか、俺は。

(2001年12月17日)