さいたまと
ワールドカップ


●INDEX

●バックナンバー
●ご意見・ご感想
COLUMN●コラム


#127
逆転勝ちって…? +後日談

 また勝ってしまった。リーグ戦と一緒には考えられないにしても、逆転勝ちというのは今季これまで1回だけ。それも相手が9人になってからようやく2点を奪った8月25日のサンフレッチェ戦だけだ。
 思えば今季、セレッソ戦で0−2から引き分けに持ち込んだとき、「こんなのはレッズであまり記憶がない」と思った。マリノス戦で後半45分間、10人で1点のリードを守り切ったとき、「こんな粘りが戻ってきたのか」と思った。


 途中、監督の交代やエメルソンの加入などがあったり、残留争いがクローズアップされたりして、チームそのものの成長ということから目が離れてしまったが、レッズに今まであった「もろさ」が少しずつ鍛えられてきたのかな、という気がする。
 天皇杯は勢いで勝ち抜けるところがあるし、特に昨今は「モチベーション勝負」みたいな大会になっているから、ヴィッセル戦のように先制、追加点が順調に入っていけば調子に乗っていける。
 しかし24日のジェフ戦は、思うように試合が運べず、とうとう先制されてしまった。ようやく調子良く走り出したと思ったら、ちょっとつまずいただけで転んでしまう。結局2001年のドラマはそんな筋書きなのか、という思いが頭をかすめたが、そうではなかった。それも今季初の(相手が11人での)逆転勝ち、というおまけも付いて準決勝に進めた。


 毎日の練習を見ても、何も特別なことはしていない。天皇杯だからPK戦の練習らしきことを加えた日もあるが、口の悪い人が見れば「こんな練習ばかりで勝てるはずがない」というかもしれない。でも勝っている。選手のコンディションとモチベーションを維持していけばそれでいい、というピッタ監督の考えだろう。悪く言えば「愚直」。はずしても、止められても永井を使っていたところなどは、気の短い人からは「ダメ監督」と言われるかもしれない。リーグ戦の間の負け試合の後のコメントを見て、なんとノー天気な、と思った人もいるかもしれない。
 わかったように言うと、ピッタ監督はチームでも選手でも、試合でも練習でもプラス面を重視しているようだ。良かった部分を見て、そこを評価する。悪い部分は直さなければならないが、それを厳しく言うよりも良かった面を拠り所にしていく。そういうやり方なのかもしれない。
 それがプロの監督としてどうなのかは僕には言えない。わからない。厳しさが足りない、と言われるのかもしれない。しかし今は、1日でも長くピッタと一緒に仕事をしたい、と思っている。天皇杯で良い結果を残せば、今後日本で指導者としての仕事が増えていく可能性も高まるだろうから、ピッタは彼自身とチームのために、選手は自分自身とピッタのために、あと2試合勝ち抜いてほしい。
 アップで彼の顔をのぞくことの多い僕は、ピッタが練習や試合を見ているときの厳しい顔と、人と雑談するときの「人の好いオッサン」(失礼)みたいな顔の落差が大好きである。


 さて、この場をお借りして言っておくことがある。天皇杯に入って、3回戦=アシスト(アリソンへ)、4回戦=アシスト(トゥットへ)、準々決勝=ゴールと、3試合連続で点に絡んでいる山田暢久だが、MDP190号で打ち上げた「ヤマちゃんスペシャルプレゼント」は最終節のグランパス戦のゴールで終了しているので、ご了承を。
 山田暢久=「ベビーフェイスの悪魔」。これは、あと2回勝ったら使おうと思っているコピー。予約済だからね。何の拘束力もないけれど。


 最後に問題。ジェフ戦の後半47分、ボールがジェフ側のゴールラインを越えてコーナーキックになったとき、転がってきたボールを足でけったカメラマン(清尾)に対して、それを拾いに来たジェフの選手が一言。さて何と言ったでしょう。

(2001年12月25日)



〈後日談〉

 試合のときにゴール裏で写真を撮っていると、いろんなことがある。サポーターの振る大旗にシャッターが邪魔されたり、旗の竿が頭に当たってケガしたり。
 アウトになったボールが近くに転がってくるときもある。自分のところへボールが来たときに僕は基本的に関わらないようにしている。レッズのボールであっても相手のボールであっても、レッズが勝っていても負けていても、だ。もちろん心情的にはレッズに有利になってほしいが、それは心の中だけにとどめている。
 マルチボールシステムになった今は、ふつうボールアウトと同時に近くの係が持っているボールを入れ、違う係がボールを取りにいく。だからボールボーイ以外は何もしないのが一番リスタートがスムーズなのだ。なまじ親切にボールを拾ってピッチに入れると、ボールが2個になってリスタートが遅れることがある。
 12月24日の天皇杯準々決勝、ジェフ戦の後半ロスタイム。ゴールラインを割ったボールが僕に向かって転がってきた。普通ならすぐ近くを通ろうとも絶対に触らない。しかし自分に真っ直ぐに向かってきているので脚を伸ばしてコースを変えた。後ろから来ているであろうボールボーイが拾いやすいようにしたつもりだった。
 実はそのポールがアウトになったとき、ゴールキックなのかコーナーキックなのか僕はわからなかった。僕はゴールに向かっている福田をカメラで追っていてボールを見ていなかったからだ。
 ジェフの選手が転がったボールを拾いに来た。ゴールキックなのか、と思ったらその選手はボールをコーナーの方にやって、そのあと僕の顔を見てこう言った。

 「ちゃんと返せよ、バカ」

 後ろを見たら、どのボールボーイも椅子に座ったままだった。
(2002年1月7日)