さいたまと
ワールドカップ


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COLUMN●コラム


#128
もう一つのホーム

 試合が終わった後、みなさんはいつもどうしているだろう?家の場所にもよるが、ホームゲームの後は仲間と飲みに行くという人は、たいていその場所が決まっているものだろう。
 レッズのホームゲームの後の浦和市内の居酒屋はどこを見ても、赤いサポーターが必ずいるし、店によっては真っ赤っかだ。僕は試合の後、サポーターと話をしたいので、数軒の店を回る。一見の店にフラリと寄って初対面の人に「どうもどうも」と話しかける度胸はないので、知っているところだけになるが、最低でも2軒、デーゲームの後など、4軒ぐらいは回って、試合の感想や夢を語り合う。
 浦和駅東口の居酒屋「酒蔵 天国」もその中の1軒だ。初めて行ったのは、おそらく96年だったと思う。知り合いのサポーターグループ「福stars」に誘われて行ったその店は、「天国」なのに地下に入っていくところで、店内はかなり広い。カウンターあり、座敷あり、詰めれば30人は入れる個室あり、と使い勝手の良いところだった。
 他に行く店が増えてきたため、僕自身は毎試合「天国」だけに行く訳にはいかなくなったが、開幕や最終節、胸のすく勝利の後など節目には必ず顔を出してきた。その間に「天国」を試合の後の語らいの場にするレッズサポーターは年々増えてきて、今年などは店の9割が赤かったように思う。
 試合の後の客がほとんどレッズサポーターだと言っても、全員が知り合いという訳ではない。大小グループ、個人がそれぞれ集っている。そう、まるで駒場スタジアムのゴール裏のように。
 スタジアムが夢を追い、闘う場なら、試合の後に行く店は夢をはぐくみ、闘いのエネルギーを補充する場所だ。そこはサポーターにとって、もう一つのホームスタジアムかもしれない。


 さようなら。ありがとう。
 2001年12月27日。浦和の「酒蔵 天国」が閉店した。

(2001年12月28日)



 みなさん、今年1年ご愛読ありがとうございました。新年は1月7日に更新予定です。2002年もよろしくお願いします。

清尾 淳