さいたまと
ワールドカップ


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COLUMN●コラム


#147
熱さの証拠

 「何を言いよんなら。ありゃあ、目ぇにゴミが入ったんじゃ」
 思わず岡山弁で、お約束そのまんまの言い訳をする彼。
 でも僕は見ていた。あれはゴミなんかじゃない。4月14日午後5時半ごろ。福田正博の通算9個目のVゴールがベガルタ仙台のゴールネットを揺らした後、抱き合う選手たちを撮って、レッズのベンチに(買いたての)望遠レンズ付きカメラを向けたとき、彼の姿が入ってきた。
 ヤンセンコーチと握手を交わした後、両目を右手で押さえ、さらに涙をぬぐい、ピッチに向かって1人で何度もガッツポーズをしていた。日焼けで黒い顔が、そのときは真っ赤に見えた。


 翌日、大原でそのことを言うと、冒頭の言葉が返ってきたのだった。
 からかうつもりはまったくなかった。僕だって試合中、涙が出たことは何度もある。ベガルタ戦のときは、そのあとの仕事が忙しくて泣いている余裕こそなかったが、目頭は熱くなった。
 「おどれは、何カバチたれよんなら!チームがあんな勝ち方したときに涙が出て、どこが悪いんじゃ!」
 そう言ってくれて良かったのだ。
 ただ、クラブの一員になってまだ3ヵ月の彼。その彼がスタッフの誰よりもレッズのVゴール勝ちに感激しているように見えたのがうれしくて、ついからかってしまった(やっぱり、からかったんじゃないか)。
 職業としてだけでなく、心底自分をチームに入れ込んでいる彼が、ぐっと身近に感じられて本当にうれしかった。レッズサポーターは試合を見るだけでなく、熱い思いを分かち合うのが大きな喜びだ、と言ってもいいのだから。


 ところで写真は焼いたのだが、さすがに本人に内緒では載せられない。18日にオフトとヤンセンに持っていくことになっているから、その後の推移次第ではお目にかけられるかもしれない。
 通訳・手島淳さんが熱い男である証拠写真を。


(2002年4月17日)