さいたまと
ワールドカップ


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COLUMN●コラム


#157
朝礼

 1年に1回ぐらい、会社の朝礼の順番が回ってくる。毎週月曜日9時から、その時間に出勤している社員約30〜40人くらいを対象に行われているもので、ある程度以上の管理職者が当番で5分程度のスピーチをする。
 毎年初めに順番が決められるのだが、それによると僕の当番は6月10日。こりゃ、ワールドカップの話をしろということかいな、と思いあれやこれやとネタを考えていた。結局僕は、自分が会社を休んでワールドカップのボランティアをしていることをカミングアウトした上で、本題に入った。以下、朝礼ふうに。
 
*   *   *
 
 みなさんの中には、この十日間の中で埼玉スタジアムやほかの会場に、試合を見に行かれた方がいるでしょう。その中では、試合の面白さ、素晴らしさと同時に、運営面で不満を感じられた方、特にボランティアについて、「案内が悪い」とか「聞いてもうまく教えてくれない」という印象を持った方がいるかもしれません。
 わからないことを尋ねて、それをボランティアがきちんと教えてくれなかったら、不満なのは当然です。お客さんであるみなさんから見れば、すべての係員はすべてのことを知っていると思われるでしょうから。
 でもボランティアの立場から言えば、すべての人がすべての知識を持っている訳ではないのです。ボランティアは事前に何度か研修を受けましたが、その中では、直接自分たちに関わる役割や情報を覚えるのが精いっぱいで、ほかのすべてを吸収する時間は限られているのです。
 小学校ではほとんどの先生がほとんどの科目を教えます。しかし中学、高校では、学校全体ではすべてのことを教えてくれますが、一人一人の先生は自分の専門科目しか教えません。英語の先生に歴史のことを聞いても、専門的なことになると「○○先生に聞きなさい」と言われるかもしれません。それに似ています。


 ワールドカップの会場ではほとんどすべてのエリアにボランティアが配置されて、そこでのお客さんに対応するようになっています。しかしお客さんが必ずそのエリアにふさわしいことを聞くとは限りません。そういうときに「係員のくせに不案内だ」という印象を持たれてしまったかもしれません。
 加えて、当日になってみなければわからないことがたくさんありました。たとえば「○○は売店に売っていますか」という質問がたくさんありましたが、こんなのは研修段階では絶対にわかりません。またグッズとプログラムを同じところで売っていたためにお客さんの列が長くなって、通路を遮断してしまうという事態も起こりました。こんなのはボランティアの責任ではないのですが、苦情は一番目立つボランティアに行きます。


 埼玉スタジアムでも特に初日の2日は、そういう混乱がたくさんありました。しかし4日、6日と試合が進むうちに、主催者も改善に努力しましたが、多くのボランティアが自主的に対応してきました。「自分のいるところでは、こういう質問が多いからこれについての情報がほしい」と管轄外の情報を集める人。売店で売っているものを紙に書き出して張り、わかりやすくした人。入場を待つ列の整理の仕方を、仲間で相談して改善したグループ。そのおかげで3試合目はずいぶんスムーズな対応ができたはずです。
 もちろん人によって差が出ます。レッズやアルディージャでサッカーのボランティアの経験を積んでいる人もいるのですが、そういう経験のあるなしよりも、「自分の仕事をまっとうしたい」「お客さんにスムーズに案内したい」という気持ちの強い人が積極的に改善に努めていたと思います。


 これは私たちの仕事でも同じではないでしょうか。お客さんから見れば「埼玉新聞社の社員」なのに、いろんなことを聞かれて「編集のことはわかりません」「販売のことは知りません」ではいけないでしょう。たとえ自分の部局ではない仕事でも、だいたいのことは知っておくべきだし、少なくとも「何時ごろ、ここへ電話すれば詳しいものがいます」程度の対応はするべきです。
 もちろん、みなさんのほとんどはすでに完璧な対応をしておられると思いますが、ワールドカップのボランティア活動を通じて、自分の反省も込めてあらためてそういうことの大事さを認識しましたので、少し申し述べました。
 
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 最後がいかにも「朝礼ふう」だったでしょう。
 6月4日、埼玉スタジアム2002で行われた日本−ベルギー戦の試合前、ボランティア仲間が「いま望月三起也さんが席への行き方がわからずにウロウロしてたので案内してきた」と言っていたので、もしかしたら…と思っていたら、やっぱり「ダブル週刊サッカーマガジン第3号」(第3号、ベルギー戦の稲本が表紙のやつ)に書いておられた。
 「ボランティアの皆さん、自分の担当以外もできるだけ多く覚えて、外国からのお客さんに役に立ってあげてください」


 望月先生、おっしゃる通りです。ご迷惑をおかけしましたが、埼玉スタジアムのボランティアも進化しています。もし26日の準決勝にお越しになるようでしたら、ぜひ前回と比べてみていただきたいと思います。
 ちなみに先生を案内したボランティアは、案内・誘導の係ではなく、僕と同じ事務局補助の係だった。

(2002年6月11日)