さいたまと
ワールドカップ


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COLUMN●コラム


#158
中止

 どしたの?1日に2回も!
 いや、一つにまとめてもいいんだけど、長くなるしテーマが違うので…。


 No157で書いた朝礼のことだが、最後に「余談ですが」と付け加えたことがあるので、それも書いておこう。
 
*   *   *
 
 ところで埼玉スタジアムでの3試合を終えて、ボランティアの感想では「日本人が一番マナーが悪い」ということでした。外国の方はあれこれ言ってくるが、駄目だというと従ってくれる。しかし日本人は駄目だといっても「どうして駄目なんだ」と食い下がるし、喫煙場所なども守らない人が多い、ということでした。
 絶対数が違うので、マナーの悪い人の割合が日本人と外国人とでどう違うかはわかりませんが、日本人が日本で開催されるワールドカップでマナーを守らない、これは残念なことです。
 
*   *   *
 
 これを付け加えたのは、前日9日の駒場の件が頭にあったからだ(No156参照)。
 さいたま市は、14日の「パブリック・ビューイング」の中止を決めた。賢明な措置だと思う。
 多くの人は「一部のヤツらのために、どうして自分たちの楽しみが奪われるんだ」と憤慨しているだろう。たしかにグラウンドへの飛び降りがあったとき「マナーを守れ!」というコールがメインスタンドから飛んでいたのを僕も聞いている。また、スタンドのゴミを拾っていたグループもあったという。あの騒ぎの後で、本当に頭が下がる思いだ。
 だけど、その「一部」が問題なのだ。あの駒場に集まった数のわずか1%、150人がサブグランドの人工芝の上で物を食べ散らかしたり(ガムの噛み捨てもあったらしい)、メインの芝の上を駆け回ったりすれば、それは「一部のマナーが悪い」などという言い方では済まない、完全な「実害」なのだ。僕は見ていなかったが、花火は芝の上でもやられたらしい(情報をいただいたKさん、ありがとう)。さいたま市のサッカー施設、そして自分たちの家が荒らされるのを黙って見てはいられない。


 「サポーターだけが悪いように言っているけど、元々主催者の対応がなっていなかったからじゃないか」という意見もあるかもしれない。
 入場に関して、主催者に不手際があったことは僕も昨日のコラムで書いた。主催者が甘く見ていたことは否めない。だってレッズの試合では入場時に大きな混乱はないから。
 しかし、この日はレッズ戦を上回る人数がサブグラウンドに集まっていたし、それを仕切る係員はレッズ戦のときより少なかった。また駒場を知っている多くの警備員は横浜に行っていたらしい。さらに、そこにいたのは駒場を愛し、入場のやり方にも慣れたレッズサポーターではなかったのだ。
 終わってから言っても仕方がないが、予定時間を過ぎてもいいから入場させる前にきちんと列を整理し、ルールを全体に案内してからスタートすべきだった。主催者ではないのに余計なことを言ってはいけないと提言しなかった自分が悔やまれる。もっと言えば、整理券を配る直前、列がずいぶん長いのを見て「10人ぐらいずつ切って入れていかないと危険だよ」と言ったのだが、ポロシャツユニフォームを着た警備員が「わかってます」と言ったのを聞いて、インフォメーションテントに引き返してしまった自分を悔やんでいる。思い出せば、入場の先頭は初めから切っておくべきなのに、それをしていなかった。あの警備員はトラメガで「はい、ここで少し待ってください」と言えば止まると思っていたのだろう。
 あのときの主催者の顔触れを思い起こせば、レッズの運営担当はいない、イベント警備会社の幹部はいない…。あの日の駒場にいた人間の中で、一番危機感を感じていたのは、「現場を知っている」僕や後援会のスチュワードだったに違いない。どうして嫌がられてもいいからもっと口を出さなかったのか…。


 だけど、だけど。じゃあ、そういうやり方で入場させていたら、あの混乱は一切なかったのか。
 おそらく入場し始めてから最後が入り終わるまでに1時間はかかっただろう。それでも、じれたグループや後から来た人が、割り込みとかフェンスのよじのぼりとか整理券の強奪をしなかっただろうか。いや、そもそも主催者の手際が悪いからといって、そんなことをしてもいいということにはならない。
 そして順番には不満があっても、5時半には全員が入場できたのだ。入場が整然と行われていたら、その後の花火、爆竹騒ぎやピッチへの乱入はなかったのかと言えばそうではないだろう。
 主催者の不手際とマナーの悪さはまったく別のものだ。


 僕は今回のさいたま市の決定を支持する。
 たしかに万全の警備体制を敷けば大丈夫だろう。ここで言う「万全の」とは、「レッズ戦よりも厳重かつ入念な」という意味だ。だが、そんな経費をかけてまで開催する必要があるだろうか?
 主催者のさいたま市の責任も問われるだろうが、中止を一番残念に思っているのは、さいたま市の担当者に違いない。この「パブリック・ビューイング」のために、どれほどの手間をかけて準備したことか。
 9日の開場が、試合開始午後8時半なのにもかかわらず、どうして午後時2時と早かったのか。実は、開場後はサブグラウンドでフットサルや「キックターゲット」的なゲームなどを楽しんでもらおうと準備をしていた。整理券を持っていれば出入り自由にして、試合までの時間はいったん家に帰るなり、サブグラウンドや売店、イベントコーナーで時間をつぶすなり、という企画だったのだ。僕は担当者の無念な顔が想像できる。
 14日は平日にもかかわらず、市の職員やイベント会社の社員以外にレッドダイヤモンズ後援会のスチュワードが何人も有給休暇を取って、手伝いにきてくれることになっていた。僕は彼らに「中止になってほしいけど、もしやることになったら14日もよろしく。手薄だから」と頼んで別れたが、彼らはその休暇をどう使うのだろうか。


 今回のことは僕に二つのことを教えてくれた。
 ああいうときは自分の立場にこだわらず積極的にモノを言った方がいいということ。もう一つは、レッズサポーターがふだん、いかに駒場を愛し、サッカーを愛し、ルールを守るヤツらだったか、ということだ。


 え?「日本代表サポ」を装っても、いろいろな連中がいるということがわかったんじゃないの?
 いや。そんなの、前から知っていたんで…。

(2002年6月11日)