さいたまと
ワールドカップ


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COLUMN●コラム


#161
食べられる料理

 自分が今回のワールドカップで楽しみにしていたものは何だったのか。実は、6月に入ってからきちんと整理したのだけど、4つあった。


 一つは世界のトッププレーヤーの真剣勝負がたくさん見られること。
 これは以前にも書いたが、スタジアムでの観戦にこだわらなかった。試合そのものはテレビでも十分見られるし、いろいろな角度からのスローがあって、かえって面白かったりする。もちろんスタジアムで見て、テレビの再放送やビデオで見直す、というのもいいだろうが、たぶん見る時間がなかっただろう。何はともあれ、まともな時間にワールドカップの試合が生でテレビ観戦できるというのは非常に有り難かった。


 二つ目は日本代表がどこまで世界と戦えるか。
 フランス大会は、出場国が32になってアジアの枠が3に増えたから出られた訳だし、今回は予選なし。93年当時と比べて本当に強くなっているのか、ワールドカップ本大会で戦わないと立証できないような気がしていた。もちろん向上しているのだろうけど、9年間で日本だけがレベルアップした訳ではなく、他の国も変わっているはずで、世界の中での位置というものがどこまで上がったのか、ということだ。
 これに関しては「?」。僕は日本代表に関しては一サッカーファンとしてのコメントしかできないが、相手が引き分けを意識してくる(特に対開催国だから)一次リーグでは勝てても、決勝トーナメントで勝てなかった今大会では、結論は保留。2006年の大会にアジア予選を勝ち抜いて出場し、かつフランス大会よりも良い成績を残して初めて、「ああ日本は強くなった」と言えるんじゃないか。
 もちろん初の勝ち点、初の勝利、初の決勝トーナメント進出、という実績は日本サッカー史に残るし、もしドイツ大会である程度の成績を挙げられれば、それは2002年があったからこそだ、と言って間違いないだろう。


 三つ目は、自分がボランティアとして運営側に入って何ができるのか、ということ。
 ワールドカップを違う角度から見ることができるし、これまでと違う自分を発見することができるかもしれなかった。これに関しては、別項で詳しく書くつもりだ。


 最後に、この数カ月で一気に増えたサッカーファン(「にわか」と言われている人も含めて)が、7月からJ1、J2の試合にどこまで来てくれるか、ということ。これが今日の本題。


 去年9月、韓国のKリーグのキム事務局長の話を聞いたとき「韓国では国家代表(向こうでは国の代表ではなく国家の代表と言う)には応援が集まるが、Kリーグになると試合場に来ない」と悩んでおられた。
 「国家」への国民の帰属意識が強く、スポーツを「国威発揚」の手段の一つとしてとらえている韓国とは事情が違うが、日本でも「ニッポン、ニッポン」を連呼した代表ファンの全員が、どこかのクラブチームのサポーターであるとは限らない。いやサッカーファンであったかどうかもわからない。
 結構なことだ。これまでJリーグを応援していなかった人たちが、今度は地元のJの試合を見に行ってくれれば、Jリーグは大いに盛り上がる。
 「あんな騒ぎたいだけのヤツらに来てほしくない」なんて言っちゃ駄目。誰だって最初は新参モノだったんだし、みんなでJリーグの楽しみ方を教えてあげればいいんだ。


 問題はその「Jリーグの楽しみ方」。
 試合そのものを代表戦と比べて見ると、どう考えてもレベルが下がるのは仕方がない。そりゃそうだ。向こう(代表戦)は、漫画週刊誌の面白い作品だけを2〜3カ月ごとにコミックでまとめ読みするようなものだから。
 残念ながら、Jリーグでは「思い入れ」というスパイスがないと食べられない料理のような試合もある。もちろん客観的に見て痛快な試合も少なくないが。
 その「思い入れ」こそ、Jリーグを楽しむコツなのだ。「自分の」と呼べるチームを作り、毎回スタジアムには行けなくとも、その成績に一喜一憂する生活。あるいは生活のリズムやサイクルをチームに合わせてしまうことが、なんと心地良いことか。


 今回、多くの方から「レッズの試合が待ち遠しい」という話を聞いた。その中でワールドカップとレッズの試合の違いを、いろいろな例えで表現してくれた人もいる。僕も料理に例えてみよう。
 ワールドカップで繰り広げられる試合は、素晴らしいご馳走だ。フランス料理(3皿で終わってしまったが…)、イタリア料理、韓国料理、もちろん日本料理。一流のシェフが一流の材料を使って作ったご馳走だった。「食傷気味」という人もいたが、僕はそうは思わない。なぜなら「食べて」はいないから。
 ワールドカップというご馳走は(自分の国の試合をのぞいて)、メニューに載った写真、あるいはショーケースの中の見本、テレビでタレントが食べている料理だ。おいしそうで、よだれが出る。しかしいくら見ていても腹の足しにはならない。
 ところがレッズの試合は、実際に食べられる料理だ。ウマくて満足するときもあれば、マズくて口直しが必要なときもある。昔は腹をこわしそうなときもあった。しかしいずれにしても、それで腹が膨れる。絵にかいた餅ではない。それが体の栄養になり、生活のエネルギーになっていくのだ。
 しかも、この料理は自分たちで多少の味付けができる。スタジアムでの応援という形で。いや、さっきも言ったように、自分で味付けしないとマズくて食べられないときもあるのだが。


 ワールドカップで一気に増えた「サッカーファン」を、どれだけJリーグに定着させることができるか。実はそれが2006年にドイツに行ける条件の一つでもあるのだが、これは終わってしまった楽しみではなく、これからの課題だ。もちろん僕が食べる料理は浦和レッドダイヤモンズしかない。


 当面は7月13日の磐田戦(埼スタ)。
チケット残券状況を見ると 6月 4日現在 23,743枚
    11日現在   22,619枚(−1,124)
    18日現在   21,620枚(−999)
    25日現在   18,897枚(−2,723)


 6月に入って約5000枚が売れている。しかも日本代表がワールドカップから姿を消した18日からの一週間で2,723枚だ。これって、6月2、4、6日に埼スタを訪れた人が、「日本代表の次はレッズでも見るか」という気持ちになってくれたということだろうか。7月2日の数字が楽しみだ。


 初めてレッズの試合に来る人は、まだ「思い入れ」というスパイスを持っていない。オフトシェフの料理、スチュワードの接客、サポーターの味付けがこの上なく重要だ。僕も「メニュー」MDPを、腕によりをかけて作ろう。そして「レストラン埼スタ」に来た一見のお客さんに満足して帰ってもらわなければ。
 なにしろ「料亭国立」の予約はまだ3万以上空いているのだから…。

(2002年7月1日)