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COLUMN●コラム


#169
ホームスタジアム移転?

 今日の午前10時ごろ、埼玉新聞のさいたま市担当記者から電話。
 「清尾さん、今日の朝日見ましたか?」
 「いや」
 「レッズが埼スタにホームスタジアム移転を決めた、という記事が載ってるんですが、何か知ってますか」
 「なにぃ〜?」
 すぐ見たかったが、家には「北陸中日新聞」しかない。そう、ここは石川県。夏休みで月曜から実家に来ているのだ。しょうがないから車で買いに出掛けた。どうせゼリッチの記事を見たかったのでスポーツ紙を買いにいく予定だったのだが。


 行く途中の車の中で考えた。
 MDPの特集で今月8日に犬飼社長に取材したとき、「ベースは駒場です」と社長がはっきり言っていた。「埼スタは、みんなが見たいと思うカードのときになるでしょう」と。そのニュアンスからして、今年の5回使用から大きく増えるとは思っていなかった。国立が1回あったから、それを足して6回。せいぜい7回ぐらいかな、と思っていたのだが、ホームスタジアム移転とは。
 スポーツ新聞ならともかく、天下の朝日新聞に載っているんだから、クラブの公式な意向だろう。オフィシャルの発行物より一般紙に本当のことを言うなら、MDPなんかいらないだろう。僕もまったくコケにされたものだ。


 全国版ということだったが、JR加賀温泉駅で買った朝日新聞には載っていなかった。仕方がないのでクラブに電話して読み上げてもらった。
 落ちついて考えると、どうもこの記事はウサン臭い。
 まず「いつから」という記述がない。来季からなのか、5年後なのか、10年後なのか。「決めた」というのだから来季からのように思ってしまうが、そうはっきり書かれている訳ではない。
 「主催試合15試合のうち10試合」とあるが、15試合とはリーグ戦だけの数。今年はナビスコを含めて18〜20試合が主催となる。本当にレッズの関係者が語ったのなら自分たちの主催の試合数を間違えるのは変だ。
 そして、当事者の話が一つもない。レッズも県も、あるいは埼スタも。ちなみにレッズはこの件で朝日新聞の取材を受けた覚えがないと言っている(広報)。普通だったら当事者であるレッズに取材するのが当然なのに、それがない。
 そして、さりげなく付いている「事実上」という言葉。これは「公式なものではないよ」「ひょっとして細かいところは違っているかもしれないよ」というときに、あらかじめ逃げ場を作っておくための常套句だ。
 どうも新聞記事としては不備きわまりない。朝日新聞ともあろうものが、どうしてこんなズサンな取材で記事にしてしまうのだろうか。「浅い」新聞に名前変えるかい?
 そうすると、はっきり名前を出せないところから出た話なのだろうか。レッズが埼スタをホームスタジアムにすると決めた、と新聞記事にしてほしい人が記者にもらす。記者は本来「裏を取る」作業をしたり、当事者にコメントを求めたりするのが常道だが、それをしないでそのまま書いちゃえ、と言えるほどの立場の人だ。いや、あくまで推測。ただ、そうとでも考えないと朝日がこんな記事を載せてしまう理由がわからないのだ。


 ワールドカップ後のスタジアムの利用について各地で批判の対象になっている。サッカーのために作ったスタジアムだから、地元にJリーグのチームがあれば、当然そこが使うものと誰もが考える。だからと言って、レッズがすぐに埼スタをホームスタジアムに決めるのには無理がある。
 まずアクセスの悪さは言うまでもない。今、駒場に毎回行っている人は往復で2時間、3時間よけいにかかるのではないか。
 中の設備にしても新しいから良いとは限らない。観客の立場からも、運営サイドにとっても、使いづらいところが埼スタには少なくない。それもそのはず、建設にあたって「新しいスタジアムはレッズのために作るんじゃありません」と、埼玉県の担当者はレッズの提案をほとんど取り入れなかったと聞いている。
 駒場の試合は確かに完売しているものが多いが、だからといって埼スタが満員になるほどチケットが毎回売れるとは思えない。完売しなくても4万人入れば採算的にはOKだろうが、満員のスタジアムで応援しているサポーターにとっては、3分の1も空席があるスタジアムでは意気が上がらない。極論すれば「4万人入ってる6万のスタジアム」よりも「満員の2万のスタジアム」の方が好きだと言うだろう。クラブの採算は大事なことだが、サポーターのスピリットは同じくらい重要なはずだ。特にレッズの場合は。
 サポーターのスピリットで言えば、人数よりも重要なのが駒場の「ホーム」意識だろう。「自分たちの家」と言える駒場がある以上、年間数試合ならともかく、半分以上を埼スタで行うのは納得しがたい。それを助長するのが、埼スタでは天皇杯を含めて1勝4敗という成績の悪さだ。これが逆で「リーグ戦埼スタ不敗」神話でもあれば、だいぶ違っただろうが。
 クラブとしては、さいたま市への配慮があるだろう。なにしろ二度にわたって公費で改修してもらったのだ。もちろん「市民のため」なのだけど、使い勝手も含めて、ここまでレッズを優先してもらっていて、「もっとキャパの大きいところができたんで、そっちへ行く」とは言いにくい。


 こんな状況で「移転決定」などと良く言えたものだ。たしかに事務所を埼スタに移転したい意向なのだから、将来的にはホームスタジアム移転があるかもしれない。埼スタが常に5万人くらい入って、アクセスも今より改善され、チームの成績も上々、となればやぶさかではない。だけど今、唐突にこんなことを決めるほど、レッズは状況オンチではないはずだが。
 ホームスタジアムをどうするかは、やはり一番の当事者であるサポーターを尊重してほしい。決定権まで欲しいとは言わない(第一サポーターの中でもまとまらない)。県の思惑、市の思惑、クラブの都合…、いろいろなものがある中で、サポーターの事情も最大限尊重してほしいのだ。
 この問題は、関係者全員が満足する解決はない。だけど一番被害(精神的なものも含めて)を受けるのが、サポーターであってはならないと思う。サポーターのデメリットが極力少なくなる努力をして、方向づけをしてほしい。それが結局は浦和レッズのためになるのだから。


 そういう意味で、今回何の前触れもなく新聞に「埼スタ移転」が出たのは多くのサポーターにとってショックだったはず。MDPで当面はこれまで通り、みたいな社長のコメントを読んだ後だけによけい「?」という人もいる。
 朝日新聞にこの記事のネタをもらした人は、レッズサポーターの気持ちなど斟酌しない人なのだろう。え、誰かって?そんなの知らないよ、僕は。


(2002年8月21日)


■追伸
 Q・J1復帰のVゴールを決めた選手は?
 Q・現役時代「クリア」の大声で有名だった選手は?
 Q・神戸でシジクレイと並んでいるスキンヘッドの選手は?

■追伸2
 Jリーグでは、ホームゲームの8割はホームスタジアムで行うこと、という決まりがある。しかしホームスタジアムは一つに限るという規定は、ややあいまいで、サンフレッチェのビッグアーチとスタジアム、マリノスの横浜国際と三ツ沢、レイソルの柏の葉と日立柏、など承認を得れば二つのスタジアムを半々に使うことも可、となっているようだ。