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COLUMN●コラム


#171
拠(よ)り所

 オールスター戦をスタジアムで観戦したのも初めてなら、埼スタのスタンドで試合を見たのも初めてだった。
 オールスターは、これまで見たり見なかったりだったけど、あんなに激しい当たりあったっけ?チームへの思い入れの少ない試合を見るのは、正直言って退屈かと思ったけれど、案外(といっては選手に失礼か)面白かった。テレビの余計なしゃべりがない分(昨日は見ていないから知らないけど)良かったかも。
 でも予想どおり埼スタのアッパーというのは、遠い。いくらサッカー専用と言ったって6万人も入るスタジアムだったら、後ろの方の席は陸上競技場の前の方の席より遠いのは当たり前だ。トラックがないから臨場感があるが、それは雰囲気による錯覚。現実には選手は小さく見えて、個人が判別しにくい。その代わり、全体の動きがよくわかる。こっちにスペースがある。パスコースがある。ほら、サイドバックがオーバーラップした。


 どうして、あんなに軽視していたオールスターを観戦したかというと、24日、25日に「第4回全国ホームタウンサミットin浦和」という催しがあって、その一環だったのだ。僕も運営委員の一人になっているレッドダイヤモンズ後援会が主催するもので、全国のJリーグのホームタウンから、後援会のようなチームのバックアップ組織や青年会議所などの地域活動団体が集まって、お互いの活動を交流するものだ。4年前に平塚で行われたのを皮切りに、新潟(長岡市)、磐田と続いて今回で4回目。24日は午後からテーマ別に4つの分科会が行われ、夜はオールスター観戦。25日はスポーツジャーナリスト・二宮清純さんの講演会があった。
 現在JリーグにはJ1、J2合わせて28のチームがあるが、今回は17チームの関係団体が集まった。参加者が多かったのはモンテディオ山形とベガルタ仙台の関係団体。何となく勢いを感じた。
 仙台は言うまでもなく今年J1に昇格して、開幕当初は破竹の連勝。1stステージの最後は少し落ちついたけれど、J1残留をほぼ確実にして、2ndステージに楽しみを残している感じだ。オールスターにも、清水監督と小村、岩本、山下の3選手をファン投票で送りだした。埼スタで小村たちが紹介されたときの仙台サポの拍手に「俺たちの代表がJ1のオールスターに出ているんだ!」という晴れがましい喜びを感じたのは錯覚だろうか。だけど、J2時代に宮城スタジアムでJ1のオールスター戦が行われた経験を思えば、あながち深読みしすぎではないだろう。仙台サポはたとえ2ndステージでの成績が芳しくなくても、一度味わった上位の喜びを核に、頑張っていけるに違いない。
 山形は、去年柱谷幸一監督によって、トップクラスに躍り出た。今季は下位に低迷しているが、それまでの苦労を思えば、今年の低迷は次の飛躍へのバネと考えているのだろうか。参加者の顔は明るかった。決してバラ色の未来が保証されている訳ではないが、それを夢見て頑張ることができる。


 ある意味、うらやましい。鹿島、磐田といった常勝チームへのうらやましさとは違ったものだ。うらやましい、というのは自分たちにないものだから感じるもの。言葉にするとなんだろう。苦しくても頑張る拠り所が新鮮な形で存在していることだろうか。
 レッズは、試合への入場者では全国のチーム関係者からうらやましがられる存在だ。だが、それは僕たちにとってはもはや新鮮ではない。
 かつて1stステージ3位になった。あるいは一時首位に立った。2ndステージ最終節で勝って3位になった。頑張る拠り所としてはもうくすんでいる。最も新しい「J1復帰」さえも、昨年シーズン途中で監督が替わったときに、単なる思い出になってしまった。


 待ち過ぎた。待たされ過ぎたのだろう。仙台や山形のように、Jリーグ入りしてまだ日が浅ければ、小さな喜びでもしばらく新鮮さを失わない。ましてや仙台のように、J1昇格、いきなり5連勝という強いインパクトがあればなおさらだ(仙台の市民後援会の会長は、9月8日の埼スタには後援会のバス25台で1000人、新幹線で1000人、マイカーで1000人、3000人くらい応援に来るだろうと予想していた)。
 待たされ過ぎたレッズサポーターには、よほど強固なものでないと、頑張る拠り所として長続きしない。昨年末から今季にかけて行われた、(レッズとしては)大改革「オフト−ヤンセン体制、3年計画」に一時は期待が高まったが、ここへ来てもう薄れかけているように見える。ナビスコカップで5勝1敗という文句なしの成績を挙げたことなど、もう遠い昔のようだ。No170で紹介したように「訣別宣言」するサポーターも出てきた。
 もちろんレッズサポーター全員が拠り所を失っている訳ではない。実際には2ndステージ、来季に期待をかけているサポーターの方が多いだろう。だが思うような結果が出ないと、目立って見える批判につられて、失望していく人が増えていくかもしれない。


 そのときにクラブはどうするのか。
 もう、これまでの轍は踏んでほしくない。1試合1試合の結果ももちろん大事だが、「土台作り」を優先順位の一番としたのなら、それがある程度しっかり見えてくるまでは方針を変えないでほしい。
 犬飼代表はMDPのインタビューの中で「浦和レッズには、この10年間の歴史の中でそういうものが積み重なっていません。どこかで脱皮するために歯を食いしばってそういうものを作らないといけない」と語っている(201号16ページ中段1行目から)。
 「そういうもの」とは、勝つことに慣れること、優勝の経験を積むこと、などを指す。至極もっともな発言だ。しかし僕は思った。この中で使われた「歯を食いしばって」という修飾語。これこそ、これまでのレッズになかったものではないか、と。たしかに毎年、ダラダラとやってきた訳ではない。シーズンが始まるころには希望に満ちた言葉も並べられた。しかしほとんど完遂されたものがない。監督在籍年数が最長でオジェックの2年、という事実がそれを示している。
 「歯を食いしばって」というのは、どんなに状況が悪くなろうとも我慢して続ける、ということだ。ブーイングが吹き荒れようと、グッズの売上が落ち込もうと、スタジアムがガラガラになろうとも、土台作りのための期間を取る、という意味に解釈したい。この言葉を何気なく使ったのか、相当の決意を込めて使ったのか、犬飼さんに確かめてはいない。だが活字として公式発行物に掲載された以上、守ってほしい。


 実際には、ある程度の勝ちを収めながら進んでいくだろうと、思っている。1stステージやナビスコを見ても、ボロボロに負けることは考えにくい。しかし選手のケガや試合を壊すジャッジで、結果が出ないことが続くかもしれない。そのときにはクラブに対して相当の逆風が吹くだろう(1stステージ最後の3連敗などはまさにそれだ)。そのときにも頭を上げて風を受け止めていてほしい。風に顔をそむけたり、揺れたりしないでほしい。
 歯を食いしばって頑張る拠り所、時がたっても色あせない拠り所とは、自分の信念なのだ。


(2002年8月26日)