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COLUMN●コラム


#199
モチベーション


 12月に入っても忙しい日々は続いている。埼玉新聞社で出す「浦和レッズ2002年全記録」を始め、イヤーブックなど、もろもろの原稿を書かなくてはならない。いわゆる就業時間中(僕にもそんな区別があったのか)に書く訳にはいかないものもあるから、夜の方が忙しい。
 この時期に書かされる原稿は必然的に今季の総括的なものが多い。僕は今季は「意外なほど起伏に富んだシーズン」だと思う。良くも悪くも。そして今のところ悪い起伏(谷と言ったほうがいいのか?)で中断しているが、天皇杯ではこれがまた良い方に盛り上がる可能性だってあると思っている。だからシーズンとしての総括はまだできないはずなのだが。


 今季のスタートは開幕3連敗。「やや↓」
 その後のナビスコ予選1位通過。「やや↑」(相手は代表抜きだから「やや」付き)
 再開後のリーグ戦では思うように勝てず1stステージ11位。「かなり↓」
 2ndステージ開幕8連勝首位奪取とナビスコ決勝進出。「かなり↑」
 ナビスコ決勝敗退とリーグ6連敗。「大いに↓」


 そういう流れだと天皇杯は「大いに↑」の番じゃないか?
 冗談ではなく、ここ数年間の天皇杯はモチベーション勝負、みたいなところがある。リーグ戦を終えて、天皇杯こそ、と意欲に燃えるはずが、選手は来季の契約交渉中で、今度の天皇杯の結果はそれには反映されない。外国人選手はクリスマスで早く帰りたい者もいる。リーグで優勝、残留争いをしたチームは空気が抜けているかもしれない。負けたら明日からオフ、という状況での試合は準決勝ぐらいでもないと、最後まで頑張る気にならないかも…。
 などなどの理由で、リーグ時の実力がそのまま結果に出るとは限らないのが天皇杯だ。ましてや「ジャイアントキリング」が起こる、一発トーナメントなのだから。


 わが浦和レッズに先に並べたマイナスの要素がないとは言えない。しかし今年のレッズには、どこのチームにも存在しないモチベーションがあるはず。
 「福田正博」。
 引退か移籍か、という複雑な状況ではあるが、いずれにしても天皇杯の終了が、本当に福田がレッズのユニホームを脱ぐ日になることは間違いない。
 僕も含めた多くのサポーターは「最後のタイトルのチャンス。何としも福田に優勝カップを」「チーム最大の功労者に花道を」という思いが強いが、選手たちは少し違うのではないか。
 昔の日本リーグのように、多くの選手が長年そのチーム(会社)に在籍している訳ではない。レッズの現役選手で言えば、一番長くて山田の9年。次に土橋の8年、石井、内舘の7年…。サポーターのように10年以上、福田正博を見てきた選手はいないのだ。
 先日、ある選手と話をしたときに、福田への思いを聞いた。その選手は「複雑ですね。福田さんにコーチとして教えてほしい、という気持ちはあります。でも一方で、違うチームでもいいから福田さんのプレーをもっと見たい、とも思ってます」と語っていた。かなり突っ込んだ話の後だったから、社交辞令なしの本音のはずだ。
 「功労者に報いる」とか「福田にカップを」などということは、クラブとサポーターが考えればいい。選手たちの多くの思いは、「1試合でも多く福田と一緒にサッカーをしたい」というものだろう。あるときは口やかましい、あるときは勝手な先輩だが、その存在感はその選手にも大きく横たわっている。
 「負けたら、もう福田と同じチームでサッカーができないんだぞ!」
 レッズの選手たちは、それを肝に銘じて15日からの天皇杯を戦ってほしい。


(2002年12月9日)

<追伸>
 ところで2回戦の結果、J2のチームが10残った。3回戦で注目したいのは、(今季J1最下位の)札幌vs(J2優勝の)大分、(降格してしまった)広島vs(惜しくも昇格を逃した)新潟、(1年でJ1復帰を果たした)C大阪vs(最後まで残留が確定しなかった)柏、この3試合だ。天皇杯がモチベーション勝負、という観点でこの勝敗には大変興味がある。予想はあるけど、それは失礼だから遠慮しよう。
 レッズvsアビスパは?そんなの注目なんてレベルの問題じゃないだろう。鴨池の飛行機と宿は手配済みだし、チケットは決勝まで買ってあるよ。あ、息子のね。