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COLUMN●コラム


#203
去る選手、来る選手


 更新が1月6日になるので「冬休み日記」みたいになるが…。


 27日、井原の現役引退記者会見があった。レッズの記者会見は何度となく出席したが、考えてみると「引退」のための記者会見に出るのは初めてだ。
 「私、井原正巳はレッズとの契約満了をもって現役を引退することを決めました」という本人の言葉から始まった約40分の会見。集まった記者からはさまざまな質問が寄せられた。選手としての井原が終わるのをみんなで1分でも引き延ばしたいように感じられたのは僕の思い込みだったろうか。
 井原正巳という選手は、「日産=マリノス」と「日本代表」のイメージが強いのは当たり前だが、僕としては2年間しかいなかったとは思えないほど「レッズの井原」が大きい。レッズしか見ていない僕だから当然かもしれないが、接している長さと重さは必ずしも比例しない、ということがよくわかった。
 僕も一つ質問させてもらった。レッズというチームはどういうチームだったか、良いところも悪いところも挙げてほしい、と聞いた。答えは


 「2年間浦和レッズに在籍することができて、最後の締めくくりが浦和レッズになったというのはすごく感慨深いことでもあるし、非常に勉強になった。特にレッズは日本一のサポーターがいるチームだし、そういうチームの中でいろんなプレッシャーを感じながら2年間サッカーをできたというのは選手としてもいい経験ができたと思うし、そういう中で結果を出していかなければいけない監督、コーチの大変さも感じた。何が良かった悪かったというのははっきり言えないが、ここに在籍したことによっていろんなことが自分にとってプラスになった」


 なるほど。正直に心境を語ってくれた気がする。「やり残したことは」と聞かれて、「悔しかったのは、今年のワールドカップの代表メンバーに入れなかったことと、レッズでタイトルを取るという目標を果たせなかったこと」と語ったのもうれしかった。
 「今はレベルの高い選手がいっぱいいるのだから、そこで勝ち抜いていくには何かが必要」「自分は常に満足しないでやってきた」というコメントも、若い選手たちに大いに参考になるだろう。
 お疲れさま、という言葉だけでは物足りないが、今はそう言うしかない。
 撮った写真を伸ばしてみると井原の目が潤んでいるのがよくわかった。


 その足で、坪井慶介にデビュー記念の集合写真パネルをプレゼントしに車で寮へ行った。先発デビューした選手にはみんなにあげているのだ。
 寮の近まで来ると、向こうからパジェロが走ってくる。この辺りを走っているパジェロは半分以上の確率でレッズ関係だ。運転席を見ると、どうやらマネージャーの水上さんらしい。助手席に誰かが乗っている。誰だ?免許を持っていない選手?車を持っていない選手?ケガしている選手?お互いに走っているから顔を見るのは一瞬だ。あれは確かー


 山瀬功治だった。決まったのか、話し合いに来ただけなのか。去る選手と来る選手を短い間に見た貴重な時間だった。選手は、チームに来るときにどれだけ騒がれるかより、去るときにどれだけ惜しまれるかがはるかに重要だということを、あらためて感じた。

(2002年12月28日)
 
引退記者会見の井原選手、いや井原「さん」