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COLUMN●コラム


#227
モデル


 ポスターというのは、やっぱり宣伝媒体と言っていいのだろう。ただし他の印刷媒体と違ってビジュアルに訴える部分が大きい。
 そのビジュアルで何を訴えるか。商品の性能、性質を伝えるのか、会社をアピールするのか。その中でも、モデルを使ってイメージを表現するのか、商品や会社そのものを載せるのか。実にさまざまだ。


 埼玉縣信用金庫が作っていた福田正博のポスターはファンにとって最高だった。福田がアップになっているところへ、隅っこに小さく「さいしん」のロゴ。埼玉縣信用金庫のポスターではなく福田のポスターと言っていい。いかに会社の名前や業務内容はあまり宣伝する必要がない企業だと言っても、あそこまで企業名や商品名を出さないポスターにはお目にかかったことがない。
 このコラムを書かせてもらっているから褒めているんじゃない。そういう会社だからコラムを書かせてもらっているんだと思う。


 特に何かを告知する必要がない企業ポスターは、なまじ会社名をデカデカと入れるより、そういうデザインの方が見る人に好感を与え、ひいては会社のイメージアップになる。さいしん以外にどこかやらないかなあ、と思ったらキリンビールがやってくれた。
 昨年、駒場スタジアムの立見席を写真に使って「お、なかなかかっこいいじゃないか」と感心していたのだが、今度はマフラー。ここに写っているのは、レッズがこれまでに製作・販売したニットマフラー、タオルマフラー約50本だ。よく見ると同じものは一つもないはず。つまり50種類という訳だ。
 このポスターを見つめていると、この重ねられたマフラーにレッズの歴史が感じられる。人物は一人も登場していないがこのマフラーをスタジアムで掲げているサポーターの姿が浮かんでくる。このマフラーたちはもはや「小道具」ではなく、立派な「モデル」だ。そしてこのモデルたちがクラブに頼んで用意されたものではなく、実際にサポーターが使っているものを借りて撮影された、と聞けば、汗のにおい、熱気、歓声までが感じられるじゃないか。


 このポスターは4月6日、駒場スタジアムのキリンビール特設ブース(2ゲート前)で希望者にプレゼントされるそうだ。1500枚って少なくないか、というのは僕の思い入れが過ぎるだろうか。


(2003年4月1日)


<追伸>
  最後に日付を書いて気づいたけど、もちろんエイプリルフールじゃないよ。実はこのモデルたちを集めるのに、知り合いのサポーター数人に声をかけたところ口コミで広がって、僕の知らない人も含めてあっという間に47人から約150本の提供があった。1人で何本も貸してくれた人もいる。僕からはまだお礼を言っていないので、この場を借りて完成の報告をしておく。