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COLUMN●コラム


#231
water


 13試合ぶりだとか、168日ぶりだとか、うるせえってんだよ!2003シーズン公式戦初勝利でいいじゃねえか。去年は去年、今年は今年だよ。どうして続けて勘定しなくちゃいけねえんだ。
 と思っていた。いや過去形じゃないな。やっぱり昨シーズンとつなげるのは嫌だ。良くない記録だから。


 でも9日の神戸戦で、具体的な数字はともかく、「うわあ、この感覚久しぶり‥」と思ったことがある。神戸に行った人なら同じ感覚を味わったんじゃないかな。
 そりゃ勝利の味だろうって?違うんだな。もちろん勝ちの感覚も久しぶりだったんだけど、それとは別の、サポーターでなければおそらく感じない、あのなんとも言えない気持ち‥。


 あれだよ!1点差で勝っている時に、いつ追いつかれるか、同点にされるか、という不安と隣り合わせで、時間のたつのが遅くてたまらない、あの感覚。調子が良いときなら感じない。そのまま勝てるか、追加点が入るかというポジティブ思考になる。
 しかし勝っていないときは、気合を入れながらも思考のどこかにネガティブさが張り付いている。リードされているときは「またか」と思うが、リードしているときは「まさか」と思ってしまうのだ。なまじ達也が早く(後半8分)勝ち越し点を挙げたものだから、心配する時間の長いこと長いこと。その後も、こっちが押していたのは間違いないが、決定的なチャンスに点が入らなかったりすると、流れが向こうに行きそうな気がするのだ。
 ボールが向こう(レッズの陣地)に運ばれると、(まさか誰かがPK取られるんじゃないか)(まさか山田がスコっと抜かれるんじゃないか)と心配で心配でしょうがない。終盤は時間稼ぎで(これも久しぶりに見たなあ)、CKキッカーの山田がボールをセットするときに、ラインから微妙に出して置いて副審に注意されたのは笑えたが、ショートコーナーにして詰めてきた相手に当てて出そうとした永井のキックがそのまま出てしまったりすると、(このゴールキックから同点になったりしたら永井はまたいろいろ言われるんだろうなあ)と考えたり。ロスタイム1分の表示が出てからは祈るような気持ちだった。飛び跳ねて応援しているサポーターにはこういう不安はないんだろうか。


 実際には、今季最高と言っていい試合だった。とにかくボールが速く動く。出すほうも受けるほうも、みんな次のこと次のことを考えている。それがリズムになっているから、相手ボール、ルーズボールになったときにも素早く奪いにいけるのだ。見ていない人にどう説明したらいいか。
 そうだ、山田を例に取るとわかりやすい。山田がボールを持って上がったときに、永井か達也が外を回ったりスペースに走りこんだりして、前へのパスコースを作る。同時に啓太が寄って行って横へのコースも作る。後ろから坪井が押し上げているから、いったん戻す選択もある。もちろん2トップの片方はゴール前に詰めるタイミングを計っている。
 そんな感じだから、いつもみたいにゴール近くでペースダウンすることがない。中を見てからやっぱり上げず、ドリブルを始めたら詰められ、結局バックパス、なんてことがないのだ。言い切ってしまうけど、昨日の山田からは風格が感じられたぞ。


 オフトがよく「グループで戦う」と言うのは、こういうことなのだろう。練習で、ミニゲームを多用しているのはこういう狙いなのだろう。口をすっぱくして「いいポジションを取れ」と言うのもこういうことなんだろう。「サイドから攻める」というのも、何もクロスに合わせるというだけじゃなくて、サイドを起点にして崩す、ということなのだ。
 試合後、選手が異口同音に「監督の目指しているのはこういうことなんだ」と言う。何かを練習してきて、その成果が現れたときに、あらためて練習の意味がわかる。そこで初めて、しっかりと身に付く。そういうものなんだろう。福田や井原や柱谷が「(オフト監督になって)必ず良くなる。ただし時間がかかるけど」と言ったのもうなずける。
 ヤマが当たってたまたまテストでいい点が取れた訳ではなく、本当に実力がアップしたことを示すために、土曜日の磐田戦でも同じサッカーをやってくれ。


 ヘレン・ケラーが井戸水を手に受けて、突然「water」という言葉が頭に浮かんできた瞬間。世の中のものにはすべて名前があるんだということを理解し、いろいろなものの名前を確認したいと思うようになった(美内すずえ「ガラスの仮面」より)。いま、そういう気分じゃないか?選手たち。


 こんな試合のときにテレビ中継がないなんて。神戸に来た、あの200〜300人のサポーターは歴史の証言者かもしれない。


(2003年4月11日)

<追伸>
 後半17分、達也の右クロスに長谷部が「延髄切り」(ジャンピングハイキック)みたいなボレーシュート。ボールはかなりはずれたが、かっこ良かった。39分には田中の左クロスを待ち構えて永井がヘディングシュート。ダイビングヘッドバットそっくりだった。その40秒後、ゴールラインを割ろうとしたボールを達也がオーバーヘッドキックで中に折り返した。あれはなんだ、サマーソルトキックか?後半だけで3回もプロレス技のような空飛ぶプレーがあった。みんながいいプレーをすると相乗効果でエスカレートしていくのか?これらの写真はすべて19日のMDPに掲載するので、その目で確かめておくれ。悪いけどJリーグの試合写真はインターネット上には載せられないの。


<追伸2>
  #230で、僕が楽しみにしていたこと。赤が薄くなったんじゃないか?と言われる新ユニだが、もしかしてナイターで映える色にすることを目的にして、ああいう色合いにしたんじゃないか?と思っていた。それが試される初めての機会だったからさ。結果は?うーん、みんなはどう思う?