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COLUMN●コラム


#239
経験。「やめて〜」


 ほら、お前が「ホーム無失点記録」なんて言うから4点も取られるじゃないか。


 はあ、すみません。僕も前半12分にいきなりCKで、しかもマグロンじゃなく背番号6(すぐに名前がわからなかった)にヘディングで入れられたときは、「うわ、俺があんなこと言うから、サッカーの神様が『ん、レッズがホーム無失点?そりゃいかん』と気が付いちまったか!」と思ってしまいました。ほんの一瞬だけど。すぐに試合に(というか仕事に)集中しましたが。
 終わってみると4失点。リーグで言うとホーム1試合平均1失点してる計算になってしまう。これだけなら、無茶苦茶悪い数字じゃないが、アウエーでは5試合で13失点もしてるんだから、「堅守のレッズ」の看板はとても揚げられない。せめてホーム無失点が続いていれば‥と少し落ち込んでいたら、土曜日居酒屋で「まだホーム無敗があるじゃないですか」とポジティブお姉さんに励まされた。もちろん、それも思っているけど、なんだか石鹸がだんだん磨り減っていくみたいで‥。


 でも、(審判の力を借りなくても)ホームで強い、というのは今季言えると思う。アウエーで負けた経験を次のホームで生かしている、ともいえるが(実質ホームだった国立ヴェルディ戦含む)。
 17日のガンバ戦、僕は前半メーンスタンド側のタッチライン沿いから後ろの選手のアップを中心に写真を撮っていた。2点取られたあたりから雨がぱらついてきた。僕はまだ専門カメラマンほど雨対策が完璧ではないので、雨のときは2台のカメラを1台にして集中しないと自信がない。長短2種類のレンズ、どっちを生かすか。さあ、どうする。
 ちょっと考えて西側のゴール裏、つまりレッズが攻める方のゴール裏に、短めのズームレンズ(ペナルティエリアより近くのシーンを撮るのに適している。つまりシュートシーンはだいたいこれでカバーできる)を付けたカメラを持って移動した。理由はこうだ。


 (2点取られたんだから、取り返すしかないねえだろ)
 (だったらレッズが攻めるところだけ狙ってれば済む。長いレンズはいらない)
 (もし、このあと一方的に攻められて、反対側ばっかりで試合が進んだら?)
 (そのときゃ、仕事にならないだけさ)


 僕は監督ではないから、あまり深く考えない。このあと、面白い展開になるとしたらレッズが反撃して同点、逆転劇になることだけだ。選ばなければいけないとしたら、そっちを選ぶ。はずれたって命までは取られない。
 そう考えて傘をさして西側のゴール裏に座った。そこで撮った最初のシーンが山田の右クロス、次が永井のつぶれ、エメルソンのシュート。自分の判断に、心の中でガッツポーズしたね、僕は。もしあと1分判断が遅れていたら?なんて、そのときは思いもしなかった。こういうときはノー天気なの。ふだんは小心者なんだけど。
 で、間に合ったんだから、いい写真撮れたんだろうな。
 それは7月5日(次のMDP)のお楽しみということで(1ヵ月半もすりゃ、みんな忘れてるだろ)。


 実は神戸で2点先制されたときも思ったんだ。
 (追いついてみろよ、ここから勝ってみろよ。3−0から逆転負けしておいて、2点先制されたら勝てません、じゃ情けねえだろ)
 間違ったら許してほしいが、レッズが0−2から逆転勝ちしたことって‥、ないよね?こんなコラムを書く以上、全部を調べ直さないといけないんだろうが、印象だけで言うと、ない。あったら宦官の刑、いや汗顔の至りだ。
 追いついたことは最近もある。01年の駒場セレッソ戦、02年の万博ガンバ戦。2試合ともまだ延長制だったが結局引き分けだった。0−2から勝ったことはない。基本的に0−2なんて状況はごめんだが、なってしまったら大逆転(レッズにしては)の歴史を作るチャンスだ。やってくれ。どうせなら0−3から?いや、ちょっとそれは‥。


 追いついた。山田ならよけられそうなスライディングタックルだったが(笑)、見事に足にもらってPK。エメルソンのシュートは、コースは読まれたが右隅に決まった。
 そして逆転した。完全に流れをつかんだ中で3−2。初めての領域に足を踏み込んだ気がした。(ところで達也、MDPの7ページの原稿読んだ?)


 その後の再逆転までは台本になかった。3−2のまま勝つ。あるいは4点目が入る。はずだったのに、この日の脚本家は70年代のヤツか?
 でも物は考えようだ。3−2で逆転勝ちムードを土壇場でまたひっくり返され、しかしロスタイムに同点。その後のピンチもしのいで引き分け。勝ち点3を取れるところだったのは悔しいが、あのロスタイムにもあきらめないでまた追いついた、というのは勝ち点2を減らしても引き合う貴重な経験だったのではないか。もう1点取って勝ってればもっといい経験だった?いや、それじゃ甘すぎでしょ。


 どうしても一言でくくってしまいたくなる。それを許してもらえば、1stステージは、いや中断前の10試合は経験の時期だ、と。
 若い選手、長谷部や小林、三上、堀之内(サッカー界では大卒はすでに若くないが出場経験ととらえて)らが経験を積んだという意味でもそうだし、無失点で終わる経験を何度もしたこともそう。かと思うと大量先制に気が緩んで大逆転を食らった。もっと早く気持ちが前にいけば勝てたかもしれないのにエンジンがかかるのが遅すぎた神戸戦の後悔。苦い経験は次の試合に必ず生かしているという点で、中断前のいろいろなことは決して無駄ではないと思う。そしてホームでは力が100%、あるいはそれ以上発揮できるというのも、当たり前のようだが言えている。中断明けは5試合中3試合がホーム。アウエーのうち1試合は国立。当初の目標とは少し意味合いが違うが「結果としての」トップ5は射程距離だ。


 ん、じゃ次のマリノス戦も何か経験しなくちゃいけないの?
 いや、それはちょっと。悪いことならやめて。


(2003年5月19日)

<追伸>
 タイトルを見て、辺見えみりのお母さんを思い出した人、握手。


<追伸2>
 あるかもしれないと思ったときは必ずあるなあ。0−2からの逆転勝ち。
 一つは94年10月19日、博多でのジェフ戦(これでもホーム扱い)。後半24分まで0−2だったが、ルルのゴールでまず1点。さらに44分に、宮澤ミッシェルのオウンゴールで同点。そして最後は延長前半12分、宮澤じゃない方のミッシェル(ルンメニゲ)のVゴールで勝利。福田と菊原が数ヵ月ぶりに出場した試合だった。
 もう一つはJ2時代の00年4月23日、ベガルタ仙台との初対戦(J2で)も前半0−2から、後半吉野、大柴のゴールで追いつき、クビツァが Vゴール。
 2試合もあったじゃない。Nさん、ご指摘ありがとう。でも、これでますます確信したね。上記の2試合は今なら90分で2−2の引き分けになっている。0−2で負けている試合を90分以内に(とりあえず)ひっくり返したのは、ガンバ戦が初めてだ。