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COLUMN●コラム


#247
証拠


 福田正博引退試合。
 いつまでも引きずっているつもりはないけれど、記者会見のようすは「これは全部字にしてサポーターにも読んでもらおう」と思わずにはいられない。部分部分はすでにあちこち出ていると思うけど、このコラムでも全文を掲載しておこう。
 福田節をなるべく味わってほしいので、同時通訳調なところもあるがご勘弁。なお質問は要約。

あのスパイクはどうするんでしょうか。
返してもらえるんでしょうか?たぶん返ってくると思うんですけど(笑)

今日はスタンドで立って見ていて、90分間短く感じましたが、福田さんにとってはどうだったですか。
昔の選手と一緒にプレーができたということで、前半も後半もあっという間でした。立ち上がり、点を取られてしまったのでゲームとしてはもったいなかったなと思います。もう少しあのへん頑張れれば試合としてはもう少し面白くなったと思います。
 ただ、そういう中でもチャンスを作ってました。特に岡野の方からとか、ペトロ、ウーベ。僕のためにチャンスを作ってくれていたんで、何とか入れなきゃいけないな、と思っていたんですけどね。
 一度点を取られてすぐウーベからスルーパスが出まして、GKと一対一になったんですけど、ちょっと‥走れないんで(笑)、もっとゴール前で余裕があったはずなんですけど、あわててシュートを打ってしまったんで、ちょっと悔やまれますね。
 あれが入っていればもっと試合としては面白くなったし、ウーベと僕のホットラインというのが強調されて僕自身も乗っていけたと思うし、チームも乗っていけたと思うんで。あのへんがちょっと残念ではありますけど、まあ試合全体通して、天気もそんなに雨がバーっと降るような感じでもなかったですし、そういう中で非常にいい雰囲気で試合をやらせてもらったなと思いますけど。

セレモニーで出てくるときにちょっと目元がウルウルしていたかなという感じでしたが、今日は涙は無かったですね。
我慢しました。3回ぐらい(笑)。また泣くのかってみんなに言われましたから、ちょっと悔しいんで(笑)我慢しました。
 出て行くとき、あの大きな旗が敷いてあって、そこを歩くというのは特別なことだと僕は思うし、サポーターもそういうことを僕に許してくれたということを考えると、やっぱりそういう気持ちになるのは当然だと思います。サポーターと一緒に11年間歩んで来たんだな、という気持ちがこみ上げてきました。

前夜祭で、「明日の試合に備えてこれから早く寝ます」と言っていましたが、何時くらいに床に就いたんですか。
マッサージを受けながらみんなと話をしてたら、結局12時過ぎてしまって、寝たのはそれくらいですね。非常に久しぶりに会った仲間といろんな話ができて、本当にいい時間をすごせたなと思います。

今日の90分の中で、思い出に残るシーンというのは、やはりバインからのパスということが大きかったですか。
それはかなり意識していました。彼の感覚はずれていないんですけど、受ける側が遅くなっているんで(笑)、そこはどうしても埋まらないところがあったんですけど、できる限り合わせようと思ってそういう動きはしました。
 そして先ほども言いましたようにペトロ、岡野といったところはタイミングがわかるんで、そういうところのタイミングでできる限り勝負しようとはしていたんですが、まあレッズの選手もやられちゃいけないということで、かなり真剣に来ていたんで、フリーになるチャンスが少なくてゴールチャンスというのは少なかったと思うんですけど。まあそういう中でも岡野から何度もクロスが上がってきて、決定機は作れたと思うので良かったと思います。

ヘディングで1点決めましたが、あのときの感触は。
フリーな状態だったんで。
 ただ現役をやめますとヘディングをすることがほとんどないんですよ。で、ちょっとヘディング練習をしたら首がおかしくなってたんで、ちょっと不安だったんですけど(笑)、どうにか当たってくれて良かったな、と思います。
 やはり点を取って終わりたいという気持ちはありましたから、点を取ったことで満足してしまった感じはありますね。もう1点という気持ちはありましたけど、仕事ができたなという達成感というのが得られたんで、良かったと思います、あのゴールが決められて。すべての人がそういうものを望んでいたと思うんで、そういう後押しがあってあのゴールが生まれたんだと思いますけど。決してヘディングが良かったとは思わないんで、はい。

最後に一周したときに赤いカップもらいましたけど、あれは何だったんですか。
「サポーター一同」ということでいただいたんですが、結局サポーターの気持ちとしては、一度も優勝することがなく、僕がカップを上げることができなかったということで、そういう思いがあってのことだと思います。だから上げてくれ、と。一度でいいから上げてくれ、と言われましたけど(笑)。
 僕に上げさせたかった、と言う意味なんですけどね。それは逆に言うと、そういう夢とかをかなえてあげられるのは僕たち選手なんだけど、そういうものを逆に彼らからもらったというのはうれしいことです、すごく。もう少しこたえてあげられれば良かったと思いましたけど。
 まあ、そのときも少し涙が出そうになりましたけど(笑)。

まだ戦いたいという気持ちがあったと思うんですが、今日の試合でそれに火がついたことはありませんか。
この試合が終わるまでは、少し現役という形は自分の中に強かったと思うんですけど、今日の試合を区切りにきっぱりと区切りをつけられるようになったと思いますね。
 だからこれからは指導者として一歩を踏み出すのかな、という感じでいますけど。今まではどうもやっぱり選手というものを引きずっていたような気がするんで。今日の試合を区切りに本当に頭を切り替えて指導者としてやっていくということ、いい指導者に。
 まあ、今日は浦和の方にはオフト監督がいて、OBのほうにはオジェック監督という方がいますけど、二人とも非常に影響をもたらしてくれた大きな監督なんで、そういう監督のようになれるようにこれから努力していきたいな、と思いますね。

最後に「ゲットゴール福田」が続いたんですが、そのへんの気持ちはどうだったですか。
最後のロスタイムのときにそうなってるというのは十分わかってましたし、その期待にこたえようという気持ちではいました、すごく。
 ただ、「もうこれで聞けないんだな」とかいうような気持ちはちょっと起きなかったんですよね。今言われるとそうですよね。ちょっと、やり直さないといけないかな、とかいう気がするんだけど(笑)。そうですね‥。
 だから、いつまでもあると思っちゃうんですよね。それがいけないんだな‥。本当にそういう重いものだったと思います、僕も。

「ゲットゴール福田」のコールはサポーターが作ったと思うんですが、今までどういう気持ちで聞いていましたか。また、今日はそれを作ったサポーターが戻ってきていたらしいんですが、そういう方々とのコミュニケーションがあったのかどうか。作った方々に今言いたいことがあればお伺いしたいんですが。
浦和の場合はサポーターにいろいろなことがあって、僕のわからないところもたくさんあるんですけど、ただ一つ、僕の引退試合ということは浦和の10年の歴史のお祭りみたいな、そういうイベントに僕はしたかったんで、ここに来てくれたすべての人が主役であってほしかったんですよ。
 やっぱり昔のそういう歴史があるから今があると思うんで、そういう人たちにスタジアムに来てほしかったんで、集まってもらいたいという意見は僕はしましたけど。そういうことで戻ってきてくれたんだと思うんですね。今日限りだと思いますが。そういうものというのはこっちとしてもうれしいですし、大切にしていきたいものですね。
 やはり僕を大きくしてくれたのは浦和の町であり、大きなサポーターであり、もしかしたらその僕の声援、僕の顔を知らない人でもそのテーマソングは知ってる、という人もいるでしょうし、子どもも口ずさみやすいという、そういうものが僕にあったからこそ、今日みたいな大きな引退試合が開催できたと思うんで、すごく僕は感謝してますね。
 で、そういう期待に少しでもこたえようというふうに10年間やってきましたけど、結果としては付いてこなかったけど、僕はいつもその期待にはこたえようと努力してきた、ということだけは彼らに約束できるんで。一度も裏切ったことは僕はないと思ってるんで。

3回ほど泣くのを我慢した、と。いま2回出てきたんですが(笑)、もう1回は‥。
ひみつ(笑)。
 最初はセレモニーに出て行くときに、あの旗を踏みながら出て行って、スタンドがすごい状況なわけですよね。そこでちょっとジーンと来たんですけど、泣いちゃいけないと我慢して。
 その後、花束の贈呈がありまして、伸二が出てきたときに、どうも遠くから見ると泣きそうな顔してたんで(笑)、それを見て僕もちょっとヤバイなと思って、近くに来たらあいつがニコッとしてくれたんで、それでちょっと助かりましたけど(笑)。
 まあ3回というか、何回かそういう気持ちが。サポーターの周りを歩いていくと、声援なり、字に書いてる言葉なり、そういうものを見ると、ぐっと来るような。当然メーンにもバックスタンドにもサポーターがいるわけですから、そういうところを歩けばその時々にそういうものは来るわけです。何回ということではなくて。

横断幕がいくつも出てまして、「また一緒に闘う日を待ってます」というメッセージがサポーターからありましたが、これから選手とは違った立場でここに帰って来るという、非常に重たい期待を背負っていくことになるのかな、と思って見てたんですが。これから指導者としてのプレッシャーみたいなものはどんなふうに感じていらしゃるんですか。
誰もが今言われたように大きなプレッシャーを背負って仕事ができるわけじゃないと思ってるんですよ。限られた人にだけ与えられた権利だと思うし、僕はそういうものを背負える、また背負っていかなければいけないと思ってるんで、ちっとも嫌なプレッシャーだとは思ってないですね。純粋にまた一緒に闘いたいと。
 プレーヤーのときには大きな成功を収めてないわけですよ。その中で今度は違った形で、このクラブで多くの成功を収めたい、と。それは多くの声援をもらった恩返しになるんじゃないかと思うんで。だからいい指導者になるために今からいろんなことを学んでいきたい、と。
 あとは、伸二が帰ってきてくれればな、と(笑)。

まだトップの試合に出ていない若い選手へのメッセージを。
今日の試合で、浦和というチームがどういうチームなのかわかったと思うんですよ。だからそういうチームでやってるという自覚を持ち、そして責任があるという気持ちを持って毎日の練習に取り組んでもらいたい、多くの期待がかかってるんだと。その中の一員であると。浦和レッズのユニフォームを着た限りは、やはり90分間手を抜くことなく自分の力を最大限出さなければいけないんだと。
 そういうクラブだと思うんで、浦和でプレーするときはそういう気持ちでしてもらいたいな、と思いますね。5万人が集まるというのはなかなか大変なことだと思うんですが、そういう中でできるクラブな訳で、逆に言えばその責任もあるということです。そういう自覚を持ってトレーニングをしてもらいたいと。

今日は223人の報道陣が埼玉スタジアムに来ました。次回こういう会見を開くのはいつごろにしましょうか。目標で結構ですから青写真を。
指導者のライセンスを取るのに3年かかりますから、それ以降ですね。4年‥じゃ無理でしょう(笑)。そんなに甘くはないと思うんで(笑)、まあ5年6年、長い目で見守ってほしいなと思います。

 どうもありがとうございました。(報道関係者の、大きな拍手で送られながら退出)