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COLUMN●コラム


#253
負けられない


 僕の個人的な見方だから外れているかもしれない。
 何言ってんの。そもそもこのコラムが個人的なものだろう?
 そういや、そうだ。でも、ひょっとして反論されるかもしれないな?ということを言うとき「個人的には」とか頭に付ける人いるよね。そういうとき、「あなたの言ってること、全部個人的な意見じゃないの?」と突っ込みたくなる。あ、俺もか。
 「個人的な」は「全体的な」の反対で、統一されたもの、公のものに対しての「私的な」という意味なんだろう。でも実際の使われ方としては「ほかの人の意見と違うかもしれないけど、ちょっと目をつぶってね」というニュアンスがないか?やっぱり人間は(日本人は、か?)、集団の中で毛色が違うことを良くないと感じてしまうのかな。何を「言葉の使い方入門」やってんだ?俺は。


 オフト体制になってほぼ1年半。明日の試合って初めてのシチュエーションじゃないか。どういうことかというと「絶対に負けられない」という意味で。
 今までだって、絶対に負けられない試合、はあった。この間のFC東京戦だってそうだ。でも、どちらかというと精神的なものが強い。「絶対に負けたくない試合」のニュアンスだったはず。もちろん成績上も負ければ優勝戦線から脱落してしまうのだから、負けられなかったが、あの順位差のまま節が進んでいけば、ずっと負けなくても「終わり」だったのだ。
 リーグ戦というのは、総当たりだから「この試合がキー」というのはなかなか言えない。終わってみてどうだった、とは言えるけど。リーグ戦において「絶対に負けられない」試合とは、言葉の意味だけを考えれば、最終節で優勝がかかった試合か、負けると降格が決定する試合だ。それ以外の試合は多かれ少なかれ精神的な意味を含んでいる。もっとも勝負においては、その精神的な意味が大事なんだから、これからもこの表現はどんどん使われるだろう。


 そういう点では明日の神戸戦は最終節だから、文字通り後がない。負けたら(引き分けも負けに等しいが)ナビスコカップが終わってしまう。去年のナビスコ予選リーグはどういう訳かトントン拍子に進んで、「負けたら終わり」という試合は一つもなかった。決勝トーナメントはサドンデスだったけど、レッズはベスト4の壁があったから、準々決勝の柏戦は「負けたら終わり」というより「勝って壁を破りたい」という気持ちが強かった。準決勝のガンバ戦もそう。
 だから、この1年半で、明日の神戸戦は最も「絶対に負けられない」状況だと思うのだ。


 というのも、去年ファイナルを経験した身だから。最低ベスト8に名を連ねなければ、去年の決勝はなんだったんだ、ということになる。今後上位常連チームになっていくためには、予選突破なんて最低ノルマだ。カップ戦の予選、相手は神戸、となると気合が薄れそうだが、まったくそんなことはない。
 僕はある意味で昨年のナビスコ決勝、もしくは99年の11月27日、2000年の11月19日に匹敵する試合だと思う。
 選手は(オフトも)かなり気持ちを切り替えて臨んでいるようだ。「負けたら終わり」「勝つしかない」と。そういうときに彼らが、どんな力を発揮するのか。そういう試合で勝つことができるのか。今後のステップのためにも期待している。
 個人的な意見だが。

(2003年7月15日)


<追伸>
 去年の天皇杯福岡戦は?うーん、あれは「絶対負けられない試合」というより「負けるはずのない試合」だったかな。だから先制してホッとしてしまったんだろうな。