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#306
ウォリアー


 ウォリアーがゴングを鳴らしてくれた。

 シーズンオフだってそんなに変わりはないが、試合が始まるとレッズ中心の生活がより際立つ。しかし僕の場合、生活のリズムはMDPの製作スケジュールに沿っている。今季もMDPのシーズン第一号に向けて動いてきたから、21日のセレッソ戦がずっと頭にあり、シーズン開幕と言っても13日のマリノス戦は「その前の試合」みたいな気分がぬぐえなかった。これが名古屋だ鹿児島だ鹿島だ、というように、遠征の準備がそれなりに必要な場所なら意識も違うだろうが、距離にして熊谷とそう変わらない横浜だからますます「本番の前の試合」化してしまったのかもしれない。

 13日は朝から家で仕事をしていた。車についているカーナビで事前に調べたら横浜国際総合競技場までの所要時間は1時間ちょっと。10時に出れば十分だし、順調なら11時半の永山邦夫の引退セレモニーにも間に合うな、と思っていた。ところが仕事の量が思った以上に多く、10時になっても予定していた分が終わらない。カーナビが示す所要時間は、道路の空き具合によって2割は短縮できる。もちろん混んでいるときは何時間よけいにかかるか無限なのだが、こういうときは都合のいいほうにしか考えない。「混み具合」ではなく「空き具合」なのだ。結果的には同じ意味でも期待するところが違うと、こういう表現になる。
 「急げば1時間で着くな(混んでたら急げないって)」
 「まあ、永山の引退試合はMDPに載せる訳じゃなし(お前、見たいってみんなに言ってたろうが)」
 「1時に着けばいいだろう(開幕だぞ、おい)」
 「とにかくキックオフには間に合えば(間に合えば、じゃなくて間に合わなくては、だろう!)」
 カッコ内の心の底の声は無視して、上記のような自分への言い訳をしながら、10時出発が10時半になり11時になり…。結局家を出たのは11時半だった。でも、さすがに1時間では着かなくても、遅くとも1時半、最悪でも2時のキックオフには間に合うだろうと思っていた。

 1時50分。キックオフは完全にあきらめていた。まだ第三京浜にも乗っていない。こんなときの言い訳は決まっている。「俺が試合する訳じゃなし。俺が応援のリード取る訳じゃなし」。居直るしかない。スタジアムに着いたとき、少しでもスムーズに試合に入っていけるようにラジオをつけた。ニッポン放送から福田正博さんの高揚した声が聞こえた。
 目黒通りの信号で右折待ちをしていたとき、それが聞こえた。自分の中で開幕のゴングがなった。
 たぶんラジオでウォリアーを聞くのは初めてだったろう。亜空間のスタジアムで、取材のスタンバイをし、大観衆を見ながら聞くのとはまったく違う。ポカポカ陽気の、渋滞気味の道路の、車の中で聞くそれは、たとえて言うなら、4畳半の散らかった部屋でパンツ1枚でくつろいでいるときに突然現れた藤原紀香…。違うな。やっぱり僕は豊田充穂さんのような表現ができない(泣)。
 本来のコースをはずれて、あるいは遅れて走っていた僕を、ひょいとつまみ上げて、あるべき場所に戻してくれた見えざる神の手。それがウォリアーだった。開幕の実感がようやく、しかもいきなりやってきた。それからの15分間、道路が空いてきたこともあるが、横浜国際に着くまで、さっきの居直りはどこへやら、1分でも早くその場に行きたいと第三京浜をぶっ飛ばしていた。
 ピッチの下の堀で荷物をほどいているとき大歓声が起こり、その後の「浦和レッズ」コールで先制されたことを知った。

 試合結果は、勝てずに残念でもあり、初めてアウェー開幕で勝ち点を取ってホッともし、相手が去年のチャンピオンということで、まずまずかな、とも思い…。いろいろだった。みなさんの評価や感想はいつもとおりMDP編集室に寄せてほしい。
 さあホーム開幕。今度は遅れないぞ!

(2004年3月15日)


<追伸1>
 実は去年の最終戦も、試合前に忘れ物を取りに帰っていてキックオフに大幅に遅れた。埼スタに着いたのは鹿島の青木のゴールが入った後だった。ん?ということは去年から2試合連続リーグ戦の失点シーンを見ていないということか。いや、僕が試合に遅刻すると先制されてその後、追いつくということに…。

<追伸2>
今季からMDPが32ページの厚さになる。当然、記事量やコーナーの種類も増える。感想や助言、指摘をドシドシちょうだいしたい。もちろん料金は300円のまま。

<追伸3>
豊田充穂さん。新著「我らが街に凱歌は響き」(1600円+税/流星社)の上梓、おめでとうございます。上記のような忙しさで、感想を申し上げられるほどまだ読んでおりません。追って必ず。