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#320
16歳


 PPV(ペイ・パー・ビュー)だったら「金返せ」モノだな。

 民放のサッカー中継でCM中にゴールが入ってしまうことはたまにある。だいたいゴールキックのときにCMを入れることが多いが、テレビ埼玉のディレクターに聞いたら、そのCMの間「頼むから点が入らないでくれ」と祈っているそうで、胃が痛くなる思いだそうだ。
 まあ見ている方としては45分間CMがない方がいいが、無料で見ているのだからその代わりCMが入るのは仕方ない。入れなくてはならないCMなら一番点の入る可能性が少ないタイミングで入れてもらい、もしその時間にゴールが決まってしまったら運が悪い(?)とあきらめるしかない。CM明けに選手の喜んでいる場面を見ることになるが、その場合もリプレイではゴールシーンを見ることができる。「被害」はオンタイムで喜びを分かち合えなかった、という精神的なものだけだ。
 しかし、22日の東京V―レッズ戦を生中継で見ていた人は、前半33分の達也の2点目がどうやって決まったのか、さっぱりわからなかったはずだ。レッズの右サイドでスローインやFKが続いているとき、その場面に何ら関係のない森本貴幸選手のアップを流していた。そして場内が沸いて慌てて画面を切り替えたときにはボールはゴールの中。達也が両手を広げて走っていた。リプレイが流れたが同じ映像で得点の経過はまったくわからない。おまけに見ていた(はずの)アナウンサーも、展開には触れず「2点目も田中達也!」としか言わない。わかるわい、そんなの!右サイドにあったはずのボールがどうやってネットの中に入ったのか、それが聞きたいんじゃあ!と思ったでしょう、みなさん。なぎらけんいちじゃないが、折も悪くカメラはアルバイトでアナウンサーはパートタイマーだったのか?と言いたくなる。
 「前半のハイライト」ではどうだ?と思っていたら、やっぱり何の映像もない。しかもアナウンサーも「右サイドのFKから」とは言うが、キッカーの名前は言わない。あのGKの前に絶妙のボールを上げたのが闘莉王だった、ということも大事じゃないか?特に「旬」好きの、あのテレビ局としては、U−23代表に再選出された選手は注目したいんじゃないの?そんなことより16歳、なのかい?違うな。あれはアナウンサー自身がFKを見ていなかったな、きっと。

 また清尾は自分もミスするくせに、他人の失敗は鬼の首でも取ったように言うんだから…。
 まあ、それは否定しない。ミスをしたことのない人間しか他人を批判できない、とは思わないから。他人に批判的ということは自分も批判を受ける準備があるということなんだから。
 別に鬼の首を取ったとは思わないが、大きな声で言いたいのは、この「ゴールシーン」無し事件の背景に、目の付け所や考え方に間違いがある、ということだ。いうまでもなく東京Vの森本貴幸選手への注目のこと。彼がシュートしたりゴールを決めたり、というときにアップの画面があったほうが効果的なのはわかるが、それこそリプレイであらためてやればいいこと。ボールを持っているときならともかく、サッカーでインプレー中に個人をアップにするのは、極力少なくすべきだ。それが、ちょっとプレーが切れたら森本アップ、とやっているから、今度みたいなことが起きる。これがCM中とか、前の場面のリプレイ中とかなら仕方がない。おそらく森本カメラがオンエアされていたから、メインのカメラはボールを追っていなかったのだろう。でなければ録画にも残っていないことの説明がつかない。目先の話題に振り回されて肝心なことを視聴者に提供できなかった、いい例だ。

 いま「目先の話題に振り回されて」と言ったが、正確に言うと振り回しているのはマスコミ、振り回されているのは受け手である視聴者や読者だ。で、自分たちが作り出した目先の話題に、今度は自分たちが振り回される、ということになる。
 15歳でJリーグデビュー、16歳でJリーグ初ゴール、というのは大変なことだと思う。そのときに大きく報道されたのは当然だったと思う。しかし2点目がいつ入るか、今度はプロ契約後初ゴールだ、なんてことは、そうなったときに大きく取り上げればいいんで、その前から紙面や電波を割く(電波を割く、って言うのか?)必要はない。もちろん、いざというときに備えて取材者は用意しておく必要はある。日常的に話を聞いておいたり、試合のときに○○カメラを据えたり、というのはあくまで下準備だ。それをそのまま書いたり放送したりしてしまうから「過剰」となる。
 大原で、ハンディのテレビカメラを構えて、坪井に森本選手のことを聞いている記者がいた。
 ―森本選手の印象について。
 「対戦したことがないのでよくわかりません」
 実際に当たったことがない、相手チームのDFとしてはそれしか答えようがないだろう。しかし、それでは番組が作れないから、何とか答えを引き出す。
 ―宮本(恒靖)選手に聞くと、本音を言えば(ゴールを)決められたくない、と言っていましたが。
 ありゃ、恒さん。「本音を言えば」って、じゃ「建前」では決められてもいいと言ったのか?
 ―16歳の選手に決められる、ということについてどう思いますか。
 おいおい。失点するのに16歳ならいいけど37歳じゃ駄目なんてことないだろ。16歳の森本に決められても37歳のカズに決められても1点は1点なんだから、DFとしてはどっちも嫌に決まってる。
 とにかく「決められたくない」とか「(16歳としては)すごい」とかの言葉を引き出そうと懸命だった。どんな番組で使われるのだろうと思っていたら、22日の試合の前に味スタの画面で流れていたけど、あれはどこかのテレビで放送されたのかな?ちなみに「よく知りません」というところはカットしてあった。
 坪井にはあそこで「16歳じゃなくても点を取られるのは嫌に決まってます」と言ってほしかったなあ。五輪代表に選ばれた平山相太選手が「高校生で五輪代表に選ばれるというのはうれしいですか」と間抜けな質問をしたインタビュアーに「高校生じゃなくてもうれしいと思いますけど」と答えたのを見習ってほしい。山瀬ならきっとそう言ったはずだ。

 平山選手といえば、高校選手権の準決勝を国立で見たときは、たしかに「超高校級」だと思った。高校生の中でやっていれば「超高校級」はよくわかる。でも超高校級=プロでも一流、とは限らない。いや何も平山選手がプロでは通用しない、と言っているのではなくて、一般論として高校生とプロの間にはそれだけ大きな隔たりがある、ということだ。それを、さも「プロでも即一流」のような取り上げ方をするのはどうかと思う。実際にU−23代表でもゴール、アシストしているから、先輩たちに伍して戦える力があるとは思うが、「伍して戦う」のと「ダントツ」は違う。その選手がプロでもダントツの結果を出しているのなら、毎日新聞紙面を大きく割こうが○○カメラの映像をそのまま流そうが、何の文句もない。しかし、そうでないのに度を越して騒ぐのは良くない、いや間違いだ。なぜなら限られた紙面や放送時間の中で、ほかに伝えるべきことがあるのに、それを伝えられない場合があるからだ。今回の達也の2点目ゴール(闘莉王のナイスFKも)のように。別にレッズの得点シーンじゃなくても、だが。

 森本貴幸は、16歳という年代の中では群を抜いているだろう。当然、今後もっと伸びていく可能性はある。将来の日本のエース候補であることも間違いない。しかし、今の彼は9試合に出場してジェフ戦で1点決めただけのFW、というだけだ。それなのに、まるで得点王候補みたいな扱いをするのはどうか。スポーツ紙の記者に聞くと「騒がれてもつぶれるタマじゃない」そうだが、騒がれて力が出るタイプならとっくに2点目を決めているだろう。やはり過剰な騒ぎ方は本人のためにもならないのではないか。
 もし、レッズの中村祐也(ユース=二種登録選手)や細貝萌(前橋育英=強化指定選手、「もえ」じゃないぞ「はじめ」だぞ)が試合に出て活躍したら、うれしいことだけど、本当に一流選手になるまでは、取材関係ではそっとしておいてやりたい。僕はそう思う。

(2004年5月24日)


<追伸>
 夜中に録画でやっていた、東京Vの親会社のテレビ局では達也の2点目をちゃんと放送していたので念のため。

<追伸2>
 木曜更新の予定ですが、忘れるといけないので書いてしまいました。これ臨時ではなく定期更新分です。たぶん。

<追伸3>
 ある人からこんなハガキが来た。
「清尾さん、油揚げは浦和でも『アブラゲ』と言いますよ。私は子どものころからアブラゲと呼んでいますし、周囲もそうです。カツオブシは『カツブシ』です。東京と一緒です」。
 わざわざこれだけをハガキに書いて送ってくれたので、僕も言わずばなるまい。
 浦和や東京に限らず、おそらく日本中で油揚げのことを「あぶらあげ」と正確に呼ぶ人はほとんどいないだろう。それは体育を「たいく」と発音するのと同じ。
「ABURAAGE」が、発音するときには「ABURAGE」になるのは当然のこと。でも文字で「あぶらげ」と書いてある豆腐屋さんはそんなにないだろう。栃尾では「栃尾のあぶらげ」と書かれているということなんだけど。
 ちなみに「カツブシ」は音便じゃないけど、これも口語だけで、商品名にそう書いてある訳じゃないでしょ。もっともうちの田舎の海の家には昔「コーラー」という張り紙があったけど。