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#350
分身


 孫悟空が自分の体の毛をむしってフッと息を吹きかけると、1本1本が無数の悟空になって敵と戦う。西遊記に出てくる中で、この技(術?)は結構好きだったなあ。


 何事も自分でやってみなくちゃわからない。
 とりあえず古い新聞とコンビニ袋(大)を用意して、ストップウォッチをスタートさせた。新聞を開いて、まず折り目に沿って縦に。それを重ねてもう1回縦に。さらに重ねてまた縦に。縦に3回裂くと幅約10cmの細長い束ができた。さすがにそれ以上は重ねるとつらい。ディック・ザ・ブルーザーじゃあるまいし(クラッシャー・リソワスキーだったか?東京都の電話帳を引き裂いて見せたのは)。
 最後に細長い束を4つに裂く。これを2回やって、新聞一日分が片づいた。一片はだいたい葉書大だ。それをコンビニ袋に入れ、次の古新聞にかかる。10日分の新聞を紙吹雪用に裂いたところで時間を見ると12分。できた量は、というと片手で大きめにつかんで2回分強というところ。だから埼玉新聞8日分くらいで2回分、つまり両手で撒ける量ができる。要する時間は10分ぐらい。ただし広いところで作業して。それと埼玉新聞は通常18〜20ページだから、32ページの全国紙の場合は換算が必要になる。埼玉新聞8日分だと全国紙5日分になるか。
 5日分×20,000人÷365日≒274年
 93年5月からずーっと新聞をためている家庭が24軒あったとすれば、11月20日は、その24軒で今年の11月までにたまった新聞を全部紙吹雪にする計算になる。あまり意味はないか。第一、93年当時の全国紙は32ページもなかったな。何か数字にこじつけて書こうとした目論見はここでもろくも崩れた。


 全国紙に換算して10万日分。それより多くなるか少ないかは当日になってみるまでわからない。しかし、これまで何度か言われた「史上最大」の紙吹雪をさらに上回る規模のそれを実行しようとサポーターたちは頑張っている。実際、「ないか、ないか、もっとないか」と僕のところにも毎日のように電話が入っている。先週の土曜日は駒場に朝から夕方まで集まって紙吹雪作りをやったそうだが、「まだ足りない」と言う。
 「何の意味があるの?」「掃除が大変そうだなあ」「資源の無駄じゃない?」
 言わば言え、だな。掃除の件はともかく、「何の意味があるの?」と言われてスラスラ説明できるようじゃ何の意味もない。確かに選手のへ励ましや応援と言えばそれで済むかもしれないけれど、それ以外の言葉では説明できない部分があるから、サポーターがこれほど熱くなるのだ。そもそもJリーグってそういうものだろう。
 「チケットがないから参戦できない。紙吹雪を作るから自分の分まで撒いてほしい」。そう父親に頼んだ小学6年生の男の子がいるが、そんな光景はあちこちで見られるだろう。
 平日の朝4時から古新聞を求めてワゴン車で走り回ったサポーターもいるが、家庭の新聞をせっせとためて20日に駒場に持って行こうとしているサポーターは、おそらく山ほどいるだろう。
 他人から見れば意味のないことかもしれないが、自分たちにとっては三度のメシよりも大事。そういうものがあることは幸せだと僕は思う。その意味において、資源の「無駄」でもない。古紙の再生はできないが。


 別に紙吹雪の量で勝敗が、優勝が決まる訳じゃない(仮にそうだとしたらレッズはとっくに常勝軍団だ)。
 紙吹雪は思い。紙吹雪は歴史。紙吹雪は自分の分身。ピッチで戦えるのは選手だけ。しかしスタンドで(またはテレビの前で)闘う自分の分身として、自分の代わりにより選手の近くで闘え!と空に向かって撒く。
 いいなあ、書いてるうちに僕もやりたくなってきた。僕の作った紙吹雪は誰に託したらいいんだ?

(2004年11月17日)


<追伸>
 レッズサポーターからも「紙吹雪は大変結構ですが、後片付けもちゃんとするように伝えてください」と僕あてにメールが来た。もちろん、呼びかけている「ROSSO BIANCO NERO」も「史上最大の掃除」を予定しているはずだ。こちらも、ぜひよろしくお願いしたい。
 駒場の外に出てしまった分については?この話が持ち上がったときからクラブの関係者がお詫び方々掃除に回る覚悟をしている。こういうと、「ほら、クラブに迷惑をかけているじゃないか」と言う人がいるかもしれない。また「クラブはそれくらいやるのが当然」と思うサポーターがいるかもしれない。僕はどちらも違うと思う。
 クラブのスタッフや関係者も「We are REDS!」。これで通じるかな?