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#363
競艇のスタート


 競艇場には父親に連れられて行ったことがあるが、賭けたことはない。やってみたいとは思うが、競艇はじっくりとデータ集めが必要だと聞いているので、今から始めるにはちょっと無理があるような気がする。
 レースそのものも迫力があったが、興味を引かれたのはスタートだ。競艇のスタートは、他のレースのようにスタートラインに並んで、「よーい」「ドン」ではなく、スタート時間の何秒か前にラインの少し後ろから走り始め、スピードに乗ってスタートラインを通過する。ラインを通過したときがスタート時間より早ければフライングで失格になる。そのあたりのタイミングの取り方が難しそうで面白かった。
 陸上の短距離で100m10秒で走る選手が200mを20秒より速く走れるのは当然で、100mを過ぎて次の100mに差し掛かるときに初速ゼロからまた始めるのではなく、十分スピードに乗っているから、後半の100mを10秒未満で走れるからだ。


 レッズの練習が本格的に始まって1週間。会う人に「今年のレッズはどうですか?」と聞かれるが、簡単には答えられない。
 去年のようにアレックスが来た、闘莉王が来た、酒井や岡野が入った、というなら話題もいっぱいある。一昨年もエジムンドに山瀬に都築、という豪華メンバーが移籍してきて、特にエジムンドはサッカーマスコミの話題をしばらく独占していた。開幕してからは、違う角度で話題になったが。2002年のシーズン前は、移籍による選手補強はなかったが10人という大量の新人選手が入ったし、何と言ってもオフトの就任という話題があった。その前はJ1復帰に加え、監督も外国人選手もすべてブラジル人というのが目玉だった。


 しばらくぶりに景気のいい話が何もない。監督、コーチ陣はまったく同じ。即戦力と呼べる補強は西谷だけ。新人選手は素質十分だが、小野伸二のように開幕からどうのこうのというのはないだろう。今の選手層はそんなに薄くない。「坪井のケガが治ったのが補強」と犬飼代表が言うのも確かにうなずけるが、話題にはならない。最もマスコミをにぎわしたのが、山瀬が出て行ったというマイナスのことなのだから、「今年のレッズはどうですか」と聞かれて、「こうだ!」と言えない辛さをわかってほしい。


 と言っても、時間さえもらえば語れる。エラソーニ。でも長いよ。くどいよ。


 何も変わらないのが今季の一番のアドバンテージだと思うよ、と。
 お互いが相手のこと、自分のことをよくわかっているメンバー。選手の個性を理解し、監督の戦術を飲み込んだ選手たち。開幕からそのメンバーで戦うのだ。去年のように3・3・3・1だとか、3・4・3だとかをやってみる必要はない。システムはさんざん試したから、相手チームの予想戦術とと自分たちのコンディションに合わせてベストのものを選択できる。
 これが即戦力の補強が何人もあると、戦力的にはプラスでもそれがフィットするまで時間がかかることがある。2003年のエジムンドがそうだった(結局フィットする、しないの問題ではなかったが)。99年の盛田剛平もそうだった。この2シーズンは、監督が交代しなかったのに、スタートの成績が今ひとつだった。新しい選手を核として戦術を組み立ててのがうまく機能しなかったからだ。


 もう1シーズンある。96年も監督が前年と同じだった。そしてこの年、即戦力として入ったのはDFのバジール・ボリぐらい。後に活躍する大柴健二は新人で、先発出場するようになったのはだいぶあとだった。基本的な戦術が変わらず、メンバーも大きな変化がなかったこの年、チーム初の開幕5連勝を果たすのだった。
 96年は、この後勝ったり負けたりが続いたが、後半になって首位にも立ち、優勝の可能性も出てきたのは、この開幕5連勝があったからに他ならない。そう。過去12年のJリーグの歴史の中で年間2ステージ制でなかったのは、この96年だけだったのだ。この年の成績は前半10勝5敗、後半9勝6敗。もしステージ制だったら、どっちも芳しいものとは言えない。通年制でなかったら、あの11月2日の鹿島戦のPK負けが、これほど強く記憶に残ってはいなかっただろう。


 2ステージ制ならば、シーズンの開幕時にチームが出来上がっていなくても、「まあいいや、勝負は2ndだ」というところがある。去年のレッズも、「まあいいや」とは思わなかったが、開幕5試合は2勝1分け2敗だった。1stステージの興味がチーム作りに傾いていってもおかしくはない。
 しかし今季は34試合の通年リーグ。開幕の数試合も18試合目も最後の1試合も同じ重さがある。そのときに開幕から去年と同じチーム(監督も選手も)で戦えることのアドバンテージは限りなく大きい。いっぱい補強をした他のチームが「位置について」初速ゼロからスタートダッシュを狙うのに対して、レッズは競艇方式でスタートするようなものだ。


 こんな長くてくどい話、ここでしか書けない。


(2005年2月4日)


<追伸>
 クラブからまだリリースがないが、よく聞かれるから書いてしまおう。MDPのEXTRA、開幕前の増刊号は2月19日(土)から配布される予定。現在、鋭意製作中だ。配布場所については発表を待ってほしい。