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#364
北朝鮮


 飛行機の中で書いているから資料が手元にない。若干あやふやなところはご勘弁。


 9日の日本ー北朝鮮戦は本当に面白かった。マスコミの過剰な反応がなければもっと良かったかもしれない。


 僕が初めて在日朝鮮の人たちと出会ったのは、仕事で少年サッカーを取材してからだ。大宮にある、朝鮮初中級学校の子どもたちで作っているサッカーチームと、取材でしょっちゅう会っていた。朝鮮4・6というチーム名だった。子どもたちはもちろん、応援する親も指導する先生たちもみんな在日朝鮮の人たちだ。もちろんみんな日本語のネイティブスピーカーなのだが、学校では朝鮮語(やっぱり韓国語とは言わないんだろうな、この場合)で話すから、要するにバイリンガルたちだ。セットプレーのときなのどはサインも何も必要ない。誰それの頭に合わせるぞ、とかキッカーが朝鮮語でしゃべっても、相手チームにはわからない。そのせいだけではないが、なかなか強かった。たいてい大宮市でベスト4には顔を出していた。ということは県南大会や県大会にも出場するということだ。
 埼玉県の少年サッカーには県大会が3つある。11月に決勝が行なわれる県少年団大会、2月に決勝が行なわれるNTT東日本カップ県少年大会(5年生対象)、そして6月に決勝がある全日本少年大会県予選だ。それぞれに地区予選がある。3番目の全日本大会につながる大宮市大会にも朝鮮4・6は出場するが、そこで勝っても県南予選には進めない。なぜか。全日本少年大会は、日本サッカー協会の主催。選手全員が北朝鮮籍の4・6は日本サッカー協会に登録できない。だから大宮市の大会には出場できるが、全日本大会の予選には出場資格がないのだ。4・6が上位に入ったら、次のチームに出場権が与えられる。そんな規定だったと思う。
 「この子たちは日本で生まれ日本で育っても、日本国籍にならない限り、日本代表にはなれないのか」と当たり前のことに妙にうなずいた記憶がある。「でも、北朝鮮代表にもなれないだろうなあ」とも。


 なれたじゃないか。しかも2人も。昨日、埼スタで戦った2人の北朝鮮代表は、小学生のころ「将来は国の代表に」という夢を見たことがあったのだろうか。たぶんあっただろうが、遠い夢だったのではないか。それがかなった喜びというのは、日本の選手が代表に入ったときとは一味も二味も違うもののような気がする。
 北朝鮮とサッカーというと、もう一つ思い出すことがある。以前にも書いたかな?MDPだったか?
 97年の秋、翌年のフランスワールドカップを控えて、というより2002年のワールドカップ決勝の埼玉誘致をにらんで、「国際ユース大会」というのが埼玉で開かれた。毎年、招待チームを変えて行われていたが、その年は埼玉選抜、静岡選抜(清水選抜だったか?)、東京朝鮮高校、韓国の某高校(名を伏せているのではなく忘れた)の4チームによる大会だった。
 夜、大会関係者や選手が一堂に会するイベントがあり取材に行った。4チームの代表がそれぞれ、一言ずつしゃべるためにステージに上がった。高校生でもさすがにキャプテンとなるとしっかりしたものだった。東京朝鮮高校のキャプテンも当然ながら日本語でしゃべった。さて韓国の高校の番になった。キャプテンがステージに立ったまま困っている。大会役員が「通訳はいないのか」と叫ぶ。そのとき、東京朝鮮高校の監督が「○○」とキャプテンの名前を呼んで、ステージを指差した。さっきあいさつしたキャプテンはすぐに壇上に行くと、同じ民族で違う国の友人が話す「韓国語」を日本語に通訳した。
 その光景を見た僕は、この仕事をしていて、ちょっぴり得をした気になったものだ。そういえば、あの場にいた小野伸二選手はそのことを覚えているだろうか。


(2005年2月10日)


<追伸1>
 で、なんで飛行機で書いているの?熊本キャンプ?
 今日は徳島へ行って、徳島ヴォルティスの田中真二監督に会う。明日は大阪で佐藤慶明・大阪産業大サッカー部監督に面会する。熊本には土日に行く予定。田中、佐藤両氏に会う理由はシーズンが始まってからのお楽しみに。


<追伸2>
 習慣なのだろうけど、なんで「北朝鮮」なんだろう?朝鮮半島の北半分の国だからと言っても、南側の国名は「韓国」なんだから、「朝鮮民主主義人民共和国」の略称は「朝鮮」だけでいいような気がするけど。「在日北朝鮮人」とは言わないのに。「朝鮮」は民族名だからだろうか?でも言葉は朝鮮語とも韓国語とも言うぞ。「北朝鮮語」とは言わない。
 戦争を知らない子どもたちだから、自分で調べてみよう。