Presented by 埼玉縣信用金庫
Weps うち明け話
#002
どっちの味方?
 毎週月曜、火曜更新って嘘ばっかり。僕のことだから、みなさん想定の範囲内だろうけど。

 世の中で何かが話題になると、初めは興味本位で見ているだけだが、そのうち「自分ならどうするだろう」と考える。とうてい自分には当てはまらないことも多いが、逆にピタリとハマることもある。
 ライブドア(ロゴ使わないといけないんだろうな、きっと)とニッポン放送−フジテレビの一連の抗争については、自分の身にはあまり関係がないと思っていた。
 僕がM&Aを仕掛ける? これはたぶんありえない。
 僕がM&Aを仕掛けられる? 将来、絶対にないとは言えないが、清風庵が株式会社になり、上場し…、今世紀中にはなさそうだ。
 埼玉新聞社が誰かに乗っ取られそうになる? これはなくもないだろうが僕はもう社員ではない。もちろん埼玉新聞社は株式上場していないが。
 という訳で、堀江さんが「知らない人に株を買われるのが嫌なら上場なんかしちゃだめですよ」と言えば、「それはそうだよな」とうなずいていたし、亀渕さんの顔を見ると、「ここまで積み上げてきたものを他人に崩されるのは悔しいよな」と思っていた(中学生のころ、たまに聞いてました。僕はどちらかといえば「パック」派だった)。まあ興味で見ていた部類だった。

 最近、「ライブドアがフジテレビの経営に参画するなら番組を降りる」という芸能人や野球評論家が現れだした。
 おや?「ライブドアがフジテレビの経営に参画したから番組を降りる」というならまだわかる。賛同はしないが理解できる。でも、まだ問題の決着がついていないうちに、そんな宣言をするのは何故だ?
 もちろん世間へのアピールだ。ライブドアがこの抗争に勝ったら、いま自分が出ている面白い番組がなくなるよ、という。ライブドアにやや好意的な世論をひっくり返そうという意図もあるだろう。
 しかし、あの人たちが、たとえば某テレビ局で幹部社員による不祥事が起こったときに「不祥事体質が変わるまで、この局には出ない」と宣言したのだろうか。現実に、視聴者にとって許せないような事件が起こり、報道に関わるメディアとして「間違いなくふさわしくない」ことがあっても、そこを仕事場にしている人たちが抗議のアクションを起こしたというのは何度あっただろうか。
 まだ堀江さんがフジテレビの経営権を手にした訳ではない。経営権を持ったらこういう方針でやっていきたい、と発表した訳でもない。にも関わらず、早くも防波堤を築いているのは、やはり「おどし」だろう。
 「実際にライブドアが経営権を持ってからでは遅いから、そうならないように、いま反対しているんだ」ということかもしれないし、それ自体は理解できなくもない。「仕事を降りる」というのは、自らの収入の道を捨てても、とういう捨て身の決意にも見える。ただ、さっき言ったように、現実に不祥事が起きている局に対して「1年間おたくの仕事はしない」とか「今度やったら縁を切る」などと言ったことがない人が、「もしあの人が役員になったら仕事をしない」と声高に叫んでも、説得力のかけらもない。現経営者の味方をしているとしか見えない。
 これも「焦土作戦」の一つなのだろうが、自分の仕事によほど自信がないとこんな発言はできないだろう。自分が仕事をやめたら、この局の価値は大幅にダウンする、という自信。でも、もし堀江さんが「あ、私が経営権を持ったら、あなたには真っ先にやめていただこうと、前から思ってましたからご心配なく」と言われたら、どうするつもりだろう。

 さて、僕ならどうするだろう。
 フジテレビではない。レッズの話だ。
 浦和レッズも、三菱自動車フットボールクラブという株式会社。もしもライブドアが何らかの手段を講じて浦和レッズの株の過半数を取得し、レッズの経営権を得ようとしていたら、僕はどうするだろう。
「ライブドアが経営に入って来るならMDPの仕事をやめる」
 少しせっかちなところがあるから、そう宣言してしまうかもしれない。でも後で悔やむことになる可能性が大だ。
 もし結果的にライブドアがレッズの買収をあきらめれば、「清尾が体を張って守った」とか言われるかもしれない。しかし、堀江さんがレッズの社長になったらどうする。
 もしかして画期的な政策をバンバンうち出し、チームは強く、サポーターは楽しく、サッカーファン以外にも好感を持たれる存在にレッズが変わっていくかもしれない。
 もしかしたらレッズを私物化し、無茶苦茶になっていくかもしれない。
 どっちにしても僕はもうMDPの仕事をやめている。新しく躍進していくレッズをMDPで表現したくても、あるいはMDPが堀江さんのPR誌になっていくのを阻止したくても。一度「やめる}と宣言しておいて、やっぱり撤回するなんてことはできない。カッコつけて「やめる」と宣言したことを後悔するのは間違いないだろう。
 そんなに極端な例を挙げなくてもいい。ここまで築き上げてきたMDPを守り育てていくのが、あるいはMDPを発展させていく体制を作っていくのが、僕の仕事。クラブのフロントにそういう認識が薄ければ、よけいに自分が頑張らなければならない。MDPが変質してしまいそうになるのを黙って見ている訳にはいかない。そんな可能性があるときに「だったらやめる」と軽々しく言ってはいけないはずだ。
 僕は、犬飼基昭さんが代表だからMDPの仕事をしているんじゃない。今のスタッフたちが好きだからやっているんでもない。ギドが監督だからでも、チームに山田が、永井が、達也や坪井がいるからでもない。「URAWA BOYS」や「ROSSO BIANCO NERO」や他のサポーターグループが好きだから、角田修一さんや清水博弥さんがゴール裏に立っているから、会社を辞めてまでMDPに関わっている訳じゃない。
 いま挙げたことが、新しい環境で頑張れる要因になっていることは間違いない。だが、しかし。
 代表が誰になろうが、大株主がどこになろうが、監督が誰になろうが、どういう選手が辞めてどういう選手が来ようが、サポーターがどうなっていこうが。僕は、浦和レッズだから、この仕事をやっていく。誰の味方でもない。
 僕、浦和レッズの味方です。
(2005年3月31日)
〈EXTRA〉
 あ、今日で48歳か。
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