Weps うち明け話
#018
5W1H
 5W1H。
 新聞記事などを書くときに必要な事柄として、教わる。別に新聞記事でなくても同じだが。
 「いつ(WHEN)、どこで(WHERE)、だれが(WHO)、なにを(WHAT)、なぜ(WHY)、どのように(HOW)」した、というやつだ。埼玉新聞にいたころ、大先輩が「私はそれに2Hを加える。HISTORYとHUMANだ」と言ったのを聞いて、感心した覚えがある。
 この5W1Hのうちの4W、「いつ(WHEN)、どこで(WHERE)、だれが(WHO)、なにを(WHAT)」というのは客観的事実として押さえやすいものだ。たとえば僕が誰かを殴ったとする。「7月22日、大原サッカー場で、清尾淳が、Aさんを殴った」というのは、それが間違いでなければ客観的事実として伝えてよい。ところが残りの1W1Hが絡んでくると、ややこしくなる。
 「なぜ(WHY)」「どのように(HOW)」というのは、それを語る人の立場でだいぶ変わって来る。たとえば、「清尾はAさんに日ごろから嫌がらせをされていて、その怒りが募って思わず手が出てしまった」というのと、「清尾はふだんからAさんをいじめていて、この日もその延長戦で殴った」のとでは、聞いた人の受け取り方がずいぶん違うだろう。
 前にも書いたことがあるような気がするが、「事実」と「真実」の違い。それは極端に言えば「事実」が4Wだけなのに対して、「真実」とは1W1Hを加えたものだ。「真実」の方が正確なように感じるが、しかしそこには語る人の主観が入っている。同じ事実について語られた真実でも、正反対の立場の人が語ればまったく違うものになることだってある。だいたい人が自分のことを語るときに、知らず知らずに「いい格好」をしてしまうのは仕方がない。自分の中のマイナスの部分はなるべく見せたくないものだ。
 報道は、そうならないように、異なる立場の意見をなるべく併記する。つまり複数の立場から真実を語ることによって、なるべく全体像を見せようとする。だが、実際に世の中で起こっていることは複雑だから、それに関わるすべての人の立場から語るなど、不可能に近い。だから報道のされ方によって、世論が左右されてしまうこともある。

 今回のエメルソンの移籍について、4Wはほとんど出尽くしている。それ以外の1W1Hを詮索しても、その事実は変わらない。エメルソンの気持ちは、カレンダーの1ページに書かれた本人直筆のメッセージをそのまま受け取っておけばいいだろう。クラブのホームページでは少し見にくいが、現物を見るとその筆跡からは伝わってくるものがある。
 アル・サドとの契約が切れるころ、エメルソンとレッズに関する新しい4Wが生まれるかもしれない。そうなったときには、1W1Hもぜひ本人の主観でいいから語ってもらおう。

 今、最も関心がある4Wは、「7月23日、静岡スタジアムで、浦和レッズが、清水に勝つ」ことだ。
 どのように?大差がつけば一番いいが、とにかく勝つことだ。
 なぜ?聞くなよ、そんなこと。
(2005年7月22日)
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