Presented by 埼玉縣信用金庫
Weps うち明け話
#040
紙コップ
 以前こんなことをMDPに書いた覚えがある。2001年のシーズン前に出た増刊号だ。

 前年、J1昇格をかけた最終節で3位の大分は90分で勝って試合を終えた。2位のレッズは1−1で延長に入っており、引き分けか負けると順位が逆転し、大分の昇格が決まる。大分の選手たちはどこかの部屋に集まってレッズ−鳥栖戦のテレビ中継を見ており、その様子をやはりテレビのニュース番組が撮っていた。レッズにとっては今や伝説になっている土橋のミドルシュートが決まると、大分の選手の一人がイスから立ち上がり手に持った紙コップを床に叩き付けた。
 その悔しさはわかる。しかし大分はその年、レッズに4戦して1分け3敗。昇格の天王山と言われた39節の直接対決でもホームで0−2で完敗していた。J2優勝で昇格を果たした札幌にレッズが1分け3敗だったのと同じ。直接の相手に一度も勝ったことがなくて、終わってから紙コップを叩き付けても仕方ないだろう。その前に勝てるチャンスは4回もあったのに。

 という内容だ。大分の選手を批判することが目的ではなく、自分で何とかできるチャンスに失敗しておいて、他力本願が叶わなかったからといって憤っても遅い、やれるときにやっておこう、ということをシーズン前に言いたかった(拙著「浦和レッズの快感2」126〜127ページ)。
 今年のレッズの状況は、その大分と似ている。31節を終わって4位。上にいるG大阪、C大阪、鹿島には今季2回の対戦を終え、一度も勝っていない。だからこの順位はある程度当然と言えば当然なのだ。そんなチームが優勝を夢に見ることさえおこがましい、と言われれば僕も大声では反論しない。
 昨日の僕の心理状態。レッズが東京Vに勝った瞬間、もちろんうれしかった。そして同時スタートの他会場の結果が場内アナウンスで流れ、G大阪が名古屋に負けたことを知ると、思わず声に出して喜んだ。その数分後、あらためて新しい順位表を見て少しだが落ち込んだ。前節勝ってりゃ、いま首位かよ…。昨日、仲間と祝杯を挙げたサポーターたちはみんな多かれ少なかれそんな感じだったのではないか?「勝利にカンパーイ」→「はあ…」「それにしてもなあ…」と。
 運不運が作用しようとも、すべては自分たちの闘いの結果。それだけに悔しいのだが、現実はその通り。床に叩き付けた紙コップは自分たち自身にはね返ってくる。
 しかし、それだけで順位が決まらないのもリーグ戦の妙。特に1ステージ制になった今季は、ハーフシーズンで結果が出る昨年までに比べて1敗が致命的ではない。他力本願はちっとも恥ずかしくないことだ。

 もしかして首位への距離が試合に臨む気持ちに微妙な影響を与えているのなら、お互いの勝敗を知らさずに、12月3日が終わって、「さてどうだった」、と結果を見せ合うほうがレッズにとってはいいのかもしれない。が、もちろんそんなことはできない。
 G大阪に負けた後、とにかく残り4つの試合に全部勝つことだけが課題、と心に誓ったはず。首位と勝ち点4差になろうが、勝ち点7差のままだろうが、千葉に勝たなければ今季の最後のノルマを果たせないことには変わりがない。阿部とストヤノフが出場停止。攻守の核2人がいないことは、戦力的にはレッズに有利だ。特にいつも千葉のゴール裏から試合を見ている僕にはストヤノフの存在が大きく見える(はっきり言えば「邪魔」だ)。
 だが、それを意識すれば逆にアドバンテージは吹っ飛ぶ。ちょうどG大阪がレッズとの試合前にナビスコ決勝と天皇杯で120分を戦い、疲れていたのと同じだ。相手だって自分たちが不利な状態にあることは百も承知なのだから、それをカバーする対策を採り、モチベーションを上げてくるはず。今季、千葉には2分け1敗だということを忘れてはいけない。ギドには怒られるかもしれないが、阿部とストヤノフがいなくてちょうどいい、くらいに思う方がいいかも。
 永井、長谷部が出場停止で勝てたとは言え、相手が違う。いま柏のコーチをしているラモス氏がヴェルディにいたころ、「浦和は弱すぎる。浦和に勝っても自慢にならないヨ」と言っていたが、なるほど、と思う。だから前回、東京Vに大勝した後、今季初の連敗を喫したのかもしれない。

 果報は寝て待て、というが、リーグ戦は寝ているだけでは上に行けない。自分は精いっぱい頑張って、あとは他の結果待ち、というのが勝負の世界の他力本願だ。2000年の大分は一度もレッズに勝てなかったが、最終節では大宮にきっちり90分で勝って、他力本願にかけていた。レッズがこの段階で千葉に勝てないようなら、悔しさに紙コップを握りつぶすほどの資格もないことになる。
 紙コップは勝利の乾杯のために使おう。
(2005年11月21日)
〈EXTRA・1〉
 ちなみに上位3チームのお互いの戦績はG大阪とC大阪がG大阪の2勝、C大阪と鹿島がC大阪の1勝1分け、鹿島とG大阪は2分、G大阪はレッズを含めた2〜4位のチームに1敗もしていないということだ。首位にいるのも当然だが、それでいてまだ優勝が決まらないというのがリーグ戦の面白さ、ということか。

〈EXTRA・2〉
 ここで募集するのも筋違いですが、告知の場がないので。
 MDPの次号272号は今季最終号になります。特別編集でサポーターの声のコーナーも拡大しますので、東京V戦や千葉戦の感想、今季の振り返り、磐田戦や最終戦に向けての仲間への檄など、お寄せください。200〜250字程度がありがたいです。あて先や要領はMDPをご参照ください(ここに書くと迷惑メール殺到してしまうので)。なおご存知の通りの日程です。お疲れでしょうが、千葉戦が終わったその日のうちくらいにメールかFAXでいただけると幸いです。
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