Weps うち明け話
#045
ベスト4
 ジュニアユース、連日の“雪”戦制す

 と、スポーツ新聞なら見出しをつけるところだろう。ついでに記事も新聞風にしてみると。

 高円宮杯第17回全日本ユース(U-15)選手権決勝ラウンドにコマを進めた浦和レッドダイヤモンズジュニアユースは、12月17日にラウンド16(1回戦)で柏レイソルU-15を、18日に準々決勝で大分トリニータU-15を、いずれも広島ビッグアーチで破り、準決勝に進んだ。
 この両日は、日本列島を寒波が襲い、特に広島地方はこの時期としては記録的な大雪に見舞われ、レッズジュニアユースの選手たちにとってほとんど経験のない、雪の中の戦いとなった。
 同じ関東のライバル、柏とのラウンド16は苦戦。DFラインを中心に手堅くパスを回す柏に試合の主導権を奪われる形となった。決定的なチャンスは作らせなかったが、レッズもいい形でシュートを放てず、80分は0-0に終わる。延長に入っても同じ展開が続きスコアレスで前半を折り返したが、後半3分、途中出場の葺本のシュートがゴールイン。貴重な先制点となった。
 しかし柏も次のキックオフからいきなりチャンスを作り、それまで堅く守っていたレッズ守備陣のスキを突いて同点ゴール。振り出しに戻ったまま延長の20分も終え、勝負はPK戦に持ち込まれた。
 PK戦ではGK慶徳が大当たり。柏のキッカーを先頭から3人連続シャットアウト。入れられた4人目も跳んだ方向はピタリだった。一方、レッズは5人中3人が決め、3-1で勝ちを手にした。
 柏とは夏の日本クラブユース選手権でも決勝トーナメント1回戦で当たり、このときは2-2からやはりレッズがPK勝ち。選手たちの多くが「一番苦しかった」と感想をもらした試合だった。今回も完全決着はつけられなかったが、小雪の舞う中、死力を尽くした末の勝利にイレブンたちは満足げだった。
 翌18日は、前日以上の豪雪に見舞われ、試合の後半はピッチが真っ白になった。大分GKがペナルティエリアを飛び出してセーブした際、主審がハンドの判定をするのに雪をのけてラインを確認したほど。ボールが止まり気味で、レッズの持ち味であるつなぐサッカーには不向きのコンディションとなったが、得点が決まったのはすべて後半。14分に高橋がシュートを突き刺し先制。19分には途中出場の藤田が2点目を決めた。28分に1点を返されたが、すかさず3分後に高橋が突き放す3点目。相手のクリアボールをカットして蹴り込んだ。4点目はショートCKから岸がヘディングで、5点目は田仲がFKを直接決めた。
 終わってみれば5-1の快勝だったが、前半は0-0。33分に高橋がPKを止められるなど嫌なムードにもなったが、先制点はその高橋。1点差に詰め寄られたすぐ後に再びリードを広げたゴールも高橋だった。前半PKを失敗し、思わず顔を覆った高橋が、後半は2度にわたり会心のガッツポーズを見せた。
 高円宮杯U-15はベスト4が出そろった。レッズは27日に西が丘サッカー場で、同じ埼玉県の狭山ジュニアユースと準決勝を行い、勝てばサンフレッチェ広島-FC東京U-15深川の勝者と29日に国立で決勝を戦う。ちなみに決勝は天皇杯準決勝の前座試合として行われる。
 レッズはレディースも17日に東京電力マリーゼを破り25日の準決勝に進出。こうなってはトップチームも24日の準々決勝で負けてなどいられない。
(2005年12月19日)
〈柏レイソルU-15戦〉  
1.柏戦の延長後半、葺本のシュートが決まり勝負あったと思ったが 2.PK戦で柏のキッカーを2人目も止めた慶徳
3.PK戦の勝利に喜ぶ浦和イレブン
〈大分トリニータU-15〉  
4.U-14日本代表に選ばれた原口は左MFの位置からドリブルで仕掛ける 5.先制点を挙げ、ガッツポーズの高橋。(4)とピッチの色の差を見よ
6.スタンドに応援のお礼。そうサポーターも応援に来ていたのです 7.2日間、ビッグアーチのスタンドには、下部組織の試合ではおなじみのダンマクが。指導者や選手たちも「今日も来てくれている」と感激していた
〈EXTRA・1〉
 レッズの試合は予定では13時15分からだったが、始まったのは14時30分から。11時から予定されていた第1試合(広島-仙台)も12時30分にズレた。理由は雪かき。広島県サッカー協会の役員の方々100人が朝8時から汗を流してピッチに積もった30センチ近い雪をきれいに除去してくれた。本当は7時から作業を開始したかったそうだが、ビッグアーチの事務所が8時でないと開かないので、この時間になったという。ピッチの周りは、まるで「かまくら」でも作れそうなほど雪の小山ができていたが、選手たちが戦うフィールドは緑一色。特に第1試合は、寒さ以外にほとんどプレーに障害はなかったのではないか。広島県協会のみなさんに感謝だ。
 もっとも雪は降り止まなかったから、レッズの第2試合の途中からは写真(5)のようにラインすら見えないほどになってしまった。それと試合時間が近づいて自分の迂闊さにあ然。俺はどこで写真撮りゃいいんだ?前半はバイアスロンの選手になった気分だった。
〈EXTRA・2〉
 準決勝の相手、狭山ジュニアユースは埼玉県の強豪チーム。レッズジュニアユースが県大会で勝たなければならない相手の一つだ。来季レッズユースからトップに昇格する西澤代志也選手もここの出身だ。
 狭山はこの高円宮杯埼玉県予選で優勝。4試合すべてに1点差あるいはPK勝ちだった。関東大会では8チームによるトーナメントの初戦で敗れたものの、敗者復活戦2試合に勝ち、関東第5代表になった。全国大会では1次ラウンドで今年の全国中学校大会優勝のルーテル学院中(熊本)を破るなど3戦全勝でグループ首位になったが、決勝ラウンドでは1回戦(名古屋FC)、準々決勝(京都サンガ)ともPK勝ち。粘り強さは折り紙つきと言っていい。レッズとは今年5月22日の日本クラブユース大会埼玉県予選の決勝で対戦し2-5で敗れているが、この半年間は対戦していない。
 ここで思い出すのは夏の日本クラブユース選手権のU-18大会。レッズユースは予選リーグを首位で通過し、決勝トーナメント初戦(準々決勝)で大宮アルディージャと対戦した。大宮は当時関東第9代表。崖っぷちで勝ち上がり全国に名乗りを挙げていた。「打倒レッズ」のモチベーションが高い大宮はレッズの長所を見事に封じ、2-1で大宮が勝利。レッズは準決勝進出を阻まれたのだった。
 狭山に関して、県内の大会ではだいたいいつもレッズが制しているから27日の準決勝はもらったと思う人がいるかもしれないが、それは早計だ。「打倒レッズ」の気持ちは県内のクラブチームに強いし、それが全国大会準決勝という場でパワーアップすることは十分ありうるのだ。若いチームは勢いに乗れば手が付けられないが、油断したときは違うチームになってしまう。レッズジュニアユースは、柏に競り勝ったときに気持ちを忘れずに戦わないといけない。だからと言って周りに雪を持ってくるのはカンベンしてほしいが。
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