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Weps うち明け話
#054
最初はグー
 ジャンケンの時に「最初はグー」とやるようになったのは、いつからだろう。48歳の僕が子どものころにはなかった。石川県にだけなかったのかな、と思い、横浜生まれの同年代の人に聞いてみても同じだった。曖昧な記憶だが、「八時だよ、全員集合」で、志村けんが流行らせたのではないか、という気がする。でも「東村山音頭」と「東村山3丁目」とは同じ歌の前半と後半だと思っていた僕だから、あまりアテにはならない。
 最初はグー。これは勝負のアイテム(?)を出すタイミングを同時にするためのものなのかな。本当の勝負はその次だ。

 今回のゼロックススーパーカップ(以下XSC)は「最初はグー」のようなものだと思っていた。本番は1週間後のリーグ開幕戦。XSCで勝つことも大事だし勝てばうれしいが、リーグ開幕戦で勝つことの方がもっと重要。その同じ相手とやるのだから、手の内を見せない、ということもあるだろうし、違うイメージを相手に植えつけておく、というテもあるだろう。コテンパンにしておく、というのもいい。XSCに勝つことがリーグ開幕戦で直接のアドバンテージになる訳ではないが、3月4日の試合に影響がないはずがない。
 「何も同じカードを2週続けてやらなくても」という話も聞くが、Jリーグは何もXSCの顔合わせを見て、開幕戦の目玉試合をガンバ−レッズにした訳ではない。3月4日にその1試合だけをやるという報道が流れたのは12月だ。レッズが天皇杯で優勝する前から「Jリーグチャンピオンのガンバに開幕でぶつけるのは、大阪ダービーとなるセレッソでもナビスコ優勝のジェフでもなく浦和レッズ」と決まっていたのだ。
 レッズが元日決戦に勝ったことで、今年のXSCは「最初はグー」になってしまった。ただし世界で一番注目される「最初はグー」だった(あ、世界にジャンケンはないのか)。最初はグーのはずなのに、どちらかがいきなりパーを出して「勝った!」というんじゃないか。グーはグーでも握り方が違うんじゃないか。どこかに1週間後の勝負のヒントが隠されているはずだ、と。
 開幕戦と同じカードになったがために意義が薄れてしまったかの感もある2006XSCだが、違う見方をすれば注目度がこれほど高まったXSCもなかったのではないか。正直言って、いくら「KING OF KINGS」と掛け声を大きくしても、やはり大会のための大会であり、屋根の上にまた屋根を重ねた印象は拭えないから。
 スーパーカップ自体を否定する気持ちはまったくない。リーグチャンピオンとカップウイナー。王者と覇者が激突する、というのは当然のことながら興味津々だ。ただチームが変わってしまってから、しかもリーグ開幕1週間前に行う、というのはどうなの?とは思う。日程的にこの時期しかない、と知りながらも。
 で、2006XSCだが、レッズが日本代表選手4人を先発させたのに対し、ガンバは代表選手の先発は遠藤だけ。加地が途中出場し、宮本はベンチを暖めて終わった。水曜に代表戦があったとは言え、移籍してきたばかりでできるだけ実戦でチームに慣らしたいはずの加地を途中出場させ、守りの要である宮本を使わず明神をストッパー?ガンバは完全に「最初はグー」だな、と感じた。後半17分から加地と播戸を投入したが、開幕戦はそれに宮本を加えた形で来るのかもしれない。
 一方、レッズは現時点でのベストメンバーの1つで臨んだ。「の1つ」というのは、たとえばオーストラリアでの練習試合では、長谷部を外して山田が守備的MF、右アウトサイドに永井、という形も見たからだ。では、レッズの先発は「最初のグー」ではなかったのか。いや、ある意味十分「お試し」戦だった。なぜならこの日の先発メンバーで対外試合をするのはこれが初めてだったから。レッズはまだ、相手への牽制などというより、自分たちの形を探る期間なのだ。もしかしたら自分でも本番で何を出すか決めてないまま「最初はグー」を出した、ということかも。
 レッズが「温存」したのは相馬だ。後半28分、アレックスと細貝が交代。僕は頭の中で慌しくフォーメーションを入れ替えてみた。ええと、ハジ(細貝)が守備的MFに入って、長谷部が左か?もしくはホリが守備的MFに上がってハジはDFか?と見ていたらそのまま左アウトサイドに。ありゃ。
 なるほど、同点もしくはビハインドだったら相馬を入れたかもしれないが、勝っているし相手が日本代表の加地を入れてきたから左サイドの守備を固めるのか、と僕は納得した。相馬が納得しているかどうかは別だが。

 今まで、自分たちのプレシーズンマッチで精いっぱいだったこの時期だが、XSCという場が与えられ、しかもリーグ開幕戦の顔合わせと同じになったことで、非常にワクワクする開幕1週間前になった。「最初はグー」も悪くはない。
(2006年2月27日)
〈EXTRA〉
 「最初はグー」で、思い出し笑いをしてしまう。
 少し前にあった新年会でのこと。立食形式のその会の最後に、お楽しみジャンケン大会があった。その会には前レッズGMの森孝慈さんも出席しており、森さんと全員がジャンケンして、最後まで勝った人に賞品、というよくあるパターンになった。
 前に立ってジャンケンをしようとする森さんに、司会者が「森さん、最初はグーでお願いします」。これも普通のことだ。だが森さんには「最初はグー」の習慣がない。ジャンケンの姿勢から司会者の方をチラッと見て
 「最初は、グーか?」
 「はい」
 あらためてジャンケンの姿勢から、思い出したようにまた司会者を見て
 「次は?」
 「……」
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