4月9日の福岡戦は前泊だった。次の水曜日にホームゲーム(ナビスコ福岡戦)があるから試合の後でゆっくり泊まっている訳にはいかない。しかし、せっかく博多に行くのに1泊もせずに帰る訳にはいかない…、いやそうじゃない。前日の土曜にサガン鳥栖-東京ヴェルディ戦があるから見に行こうと誘われたからだ。まあ、せっかく博多に泊まるのだから夜は行きつけの天神の屋台にお邪魔したが。
試合の方は、前半のうちに東京Vが1人退場になり、力のバランスは良くなったが、先制は東京V。鳥栖がいったんは追いついたが最後は東京Vが決勝点を挙げた。個人の能力の差が出た感じだ。
さて試合を見ながらも、どうしても東京Vベンチに目が行ってしまう。なにせ選手の誰よりも監督が有名なチームだから。前半、東京Vが10人になって、ラモス監督がどういう戦い方をするのか。アウェイで1人少なくなった。まだ0-0。守りを固めて引き分けを狙うのか、鳥栖相手に引き分けてはいられないからあくまで攻めるのか、興味深かった。
と見ていたら、東京Vベンチ前でボールがタッチラインを割って鳥栖ボールになりラモス監督がそれを拾った。お、この返し方で、時間をかけさせるのか、そうでないのか目安になるかな。でも考えてみれば、相手の攻撃エリアでのスローイン。ゆっくり返すのが普通だな。などと思っていたら、ボールボーイがボールを入れて何事もなくプレー再開してしまった。ところがラモス監督は手に残ったボールを、そのまま真上というか真後ろにポーンと投げたのだ。ボールはメーンスタンドへ。
あららー。迷惑だなー。でもラモスなら何でも許されるんだろうな。
試合は続く。後半の終盤、平本がうまく決めて2-1。残り時間は少ない。と、さっきと同じ位置でボールが出た。どっちのボールかは覚えていない。やはりラモスが拾った。つまりしょっちゅう、ベンチの前で立っているということだ。今度は絶妙のタイミングでボールを中に返した。「絶妙」というのは、ボールボーイがボールを入れるのに一瞬遅れてラモス監督もボールを入れたからだ。ボールが2個入ってしまえば、試合は再開できない。残り数分で1点負けている鳥栖側にとっては、実にイライラする時間だったろう。
ラモス監督は、その前のスローインのとき、ボールボーイに「負けた」から、今度は急いで返したのだろうか。そうではない。そんなに急いではいなかった。彼にとって急がねばならない理由は何もないのだから。それに、自分が返さなくてもボールボーイがちゃんと仕事をする、というのは前回経験しているのだから、自分がボールを中に入れれば2個になって試合が遅れる、というのはわかっていたはず。巧妙な遅延行為だと言っていい。でもラモスなら何でも許されるんだろうな。
小さなことかもしれないが、この試合で強く印象に残った二つのことのうちの一つだ。「そこまでして勝ちにこだわるのがプロ」という見方もできるし「サッカーの内容にはまったく関係ない行為で見苦しい」とも言える。判断はそれぞれだ。だけど、一連の行為にマッチコミッショナーは何も言わないのか?という疑問は残る。ラモスって得だなあ。
で、この試合で印象に残った二つ目のこと。東京V側のゴール裏に、「土方歳三」の絵が旗に描かれて張られていた。僕は初めて見た。あれは土方さんのように「自分1人になっても、信念は曲げずにこのチームを守るぞ」というサポーターの意気込みの表われなのだろうか。それともただ、土方さんが東京Vのホームタウン付近の出身だからだろうか。 |