Weps うち明け話
#081
当社比
 「川崎戦で我々が必要なのは、スタジアムが満員になって、選手たちを鼓舞してくれること」

 そうギドが言った。
 フロンターレにとって次の試合は決勝と同じ。現在勝点7差でレッズを追っているが、残り試合数も7。最後の直接対決で差を詰めなければ、リーグ優勝は遠のく。引き分けでもいい、という訳にはいかない。つまりは6月のナビスコ準々決勝第2戦と似た状況だ。堅く守っておいて、ボールを奪ったら素早いカウンターで点を取る、という得意の戦術よりも、向こうから攻めてくる可能性の方が高い。また、それができないチームではない。現に6月7日がそうだった。
 そういう状況だからJの中でもトップクラスの面白い試合になるだろう、とギドは言う。しかし、レッズの指揮官としては「面白くなるはずだ」と言って楽しみにしているだけではすまない。ここで川崎に引導を渡して3チームによる優勝争いを2チームに絞る。そのためには今季負けていないホームのアドバンテージを最大限に発揮する必要がある、という訳だ。

 ここまでなら、それほどふだんのギドと変わりはない。サポーターの応援について、相手が特に強い場合は「いつも力強く応援してもらって満足しているが、今日はそれ以上のサポートをお願いしたい」と言うことはある。
 しかし「スタジアムを満員にして」と、入場者の数にまで言及するのは珍しい。
 「こんなにいいカードなのに、空席があるのはもったいない」というサッカーマンとしての素直な気持ちもあるだろうが、戦いの当事者としては「ホームで絶対に勝ちたい」という思いが強いのだろう。ナビスコで川崎に初めて負けたことが実は相当心に引っかかっているのか。
 ギドは、自分が作ってきたレッズには大きな自信を持っている。またレッズサポーターに対する敬意と感謝の気持ちは掛け値なしに深い。だからサポーターに「いつも以上に力を貸してくれ」と言うことは過去にそう何度もない。サポーターは毎回全力で応援しているから簡単に「当社比」を上回れないことを知っているはずだ。しかし敢えてそう言ったのだ。たとえば04年のチャンピオンシップ第2戦のときのように。

 当日のMDPのコメントで「スタジアムを満員に」と言われても…。なのでここに書くことにした。取材目的外の媒体にネタを先出しするのは良くないのだけど、今回は許容範囲だろう。
 コラムの回数の「借金」返すのにちょうど良かったんだろう?
 困るなあ。ギドみたいにもっと素直に考えてよ。
(2006年10月18日)
〈EXTRA〉
 本当は本記の続きネタなのだけど、話が終わってしまったからEXTRAにする。
 前回、優勝に向かっていれば連続○○という記録は後からついてくる、と言ったけれど、優勝争いと不可分の記録もある。それは勝点。現在レッズは61でG大阪が56。去年のG大阪が勝点60で優勝したから、7試合を残して去年の優勝ラインを上回っている。G大阪も、そして川崎も最終勝点が60を超えるのは確実だろう。
 今年が高いのか、去年が低すぎたのか。年間1ステージ制と2ステージ制では単純に比べられないが、他にないから過去のデータを見てみた。
 05年・G大阪60、04年・浦和62、03年・横浜M58、02年・磐田71、01年磐田71。年間30試合で、90分引分制での年間最高勝点はこうなっている。ちなみに優勝ラインとは違う。04年優勝の横浜Mの年間勝点は59、01年優勝の鹿島は54だった。
 レッズはチームの年間最多勝点(30試合制)で「当社比」を超えることは確実。J記録の71まであと10。7試合でこれを上回らないようなら優勝など覚束ない。Jの年間最多勝点記録を更新する戦いは、イコール06年の優勝争いなのだ。もちろんそこに刻まれる名前は浦和レッドダイヤモンズ。
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