「川崎戦で我々が必要なのは、スタジアムが満員になって、選手たちを鼓舞してくれること」
そうギドが言った。
フロンターレにとって次の試合は決勝と同じ。現在勝点7差でレッズを追っているが、残り試合数も7。最後の直接対決で差を詰めなければ、リーグ優勝は遠のく。引き分けでもいい、という訳にはいかない。つまりは6月のナビスコ準々決勝第2戦と似た状況だ。堅く守っておいて、ボールを奪ったら素早いカウンターで点を取る、という得意の戦術よりも、向こうから攻めてくる可能性の方が高い。また、それができないチームではない。現に6月7日がそうだった。
そういう状況だからJの中でもトップクラスの面白い試合になるだろう、とギドは言う。しかし、レッズの指揮官としては「面白くなるはずだ」と言って楽しみにしているだけではすまない。ここで川崎に引導を渡して3チームによる優勝争いを2チームに絞る。そのためには今季負けていないホームのアドバンテージを最大限に発揮する必要がある、という訳だ。
ここまでなら、それほどふだんのギドと変わりはない。サポーターの応援について、相手が特に強い場合は「いつも力強く応援してもらって満足しているが、今日はそれ以上のサポートをお願いしたい」と言うことはある。
しかし「スタジアムを満員にして」と、入場者の数にまで言及するのは珍しい。
「こんなにいいカードなのに、空席があるのはもったいない」というサッカーマンとしての素直な気持ちもあるだろうが、戦いの当事者としては「ホームで絶対に勝ちたい」という思いが強いのだろう。ナビスコで川崎に初めて負けたことが実は相当心に引っかかっているのか。
ギドは、自分が作ってきたレッズには大きな自信を持っている。またレッズサポーターに対する敬意と感謝の気持ちは掛け値なしに深い。だからサポーターに「いつも以上に力を貸してくれ」と言うことは過去にそう何度もない。サポーターは毎回全力で応援しているから簡単に「当社比」を上回れないことを知っているはずだ。しかし敢えてそう言ったのだ。たとえば04年のチャンピオンシップ第2戦のときのように。
当日のMDPのコメントで「スタジアムを満員に」と言われても…。なのでここに書くことにした。取材目的外の媒体にネタを先出しするのは良くないのだけど、今回は許容範囲だろう。
コラムの回数の「借金」返すのにちょうど良かったんだろう?
困るなあ。ギドみたいにもっと素直に考えてよ。 |