Presented by 埼玉縣信用金庫
Weps うち明け話
#090
ホーム不敗
 いま吐露すれば複雑な心境だった。
 26日の朝、家を出るとき「さあチャンピオンになる日だ」と心の中で言った。03年ナビスコ杯、04年セカンドステージ、05年天皇杯(決勝は06年だけど)。過去3回の優勝の瞬間を思い出し、その何倍かの喜びを想像して鳥肌が立った。ついでにその後の仕事のハードさも頭に浮かんできて、武者震いがした。
 だが一方で、他の自分が「アウェイで決まるのか…」とつぶやいていた。国立、駒場、国立…。今回埼スタで優勝できたら、次はどこでもいいんだけどな、とまるで毎回優勝できるかのように傲慢なことを思いながら、味スタへ向かった。

 ホーム21試合連続無敗。Jリーグ新記録を作ったレッズ。もちろんチームが強くなったからには違いないが、たとえば今季で言えばアウェイでは7勝4分け6敗(勝点25)。かろうじて勝ち越しだ。ちなみにG大阪はアウェイで8勝2分け6敗(26)、川崎は9勝2分け5敗(29)だ。G大阪も川崎もまだ1試合アウェイを残しているのに。まあガンバはこのまま勝点26で終わるはずだが…。
 いまこの位置にいるのは間違いなくホームでの強さが要因。アウェイでもっと勝てば、とっくに優勝できてたじゃないか!という指摘はこの際おいといて、ホームでここまで強くなったのは埼スタができたおかげだと思う。
 もちろん大きなスタジアムをホームにすれば負けなくなる訳じゃない。まず、そこがほぼ満員になる必要がある。少なくともロアースタンドまではいっぱいになれば相当な迫力がある。さらに満員になっただけではまだ不十分で、そこに居る人が観戦するだけの存在から、少しでも応援する存在に変わってくることが必要だった。
 簡単ではなかったが2004年、05年と努力するうちに、埼スタは素晴らしいホームになった。北側ゴール裏はもちろんメーン、バック、南側ゴール裏も含めて、相手を威圧するムードを作っている。
 僕はアウェイに行って「お、ここはアウェイの雰囲気があるな」と感じるのは、相手のゴール裏ではなくメーンやバックからどれだけ拍手や歓声が起こるか、による。だってゴール裏の勝負なら、アウェイでもたいていレッズの勝ちだから。でもメーンやバックの人たちがホームチームを本気で応援していると感じる場所では「ここは手ごわいぞ」と思う。たとえば今年の新潟や甲府がそうだった。
 長谷川健太監督の正直な言葉が有名になったが、他のビジターチームも「埼スタでのレッズ戦はやりにくい」と感じているだろう。それはゴール裏だけではなく、300度の周囲全体から包囲されたあの感じが嫌なのではないかと思う。

 話は冒頭に戻る。26日の味スタへもレッズサポーターがいっぱい来ることは予想された。しかしキャパから言っても、相手の売り方から言っても、もちろんアウェイだということからしても、ふだん埼スタのメーン、バックで応援している人たちがたくさん来られるとは思えない。今のホーム不敗状況を作り上げるのに、少なくない力を発揮してくれているメーン、バックの人たちで味スタに来る人は多くないだろう。まだ最終節を残しているとは言え、リーグ初優勝が決まる試合にその人たちがいないのは残念だなあ、と思ったのだ。
 結局、優勝は最終節に持ち越された。ここまで一緒にレッズを支えてきた人たちの前で初の栄冠を獲得できるチャンスができた。これはうれしいことだ。おっと、うれしがっているだけでは駄目だった。明日、本当に決めなければ意味がない。
 メーン、バック、南側ゴール裏のみなさん。あなた方がもはや観戦者ではなく、レッズのリーグ優勝にリーチをかけるのに一役も二役も担ってきたのは、いつもピッチにいる僕がよく知っています。明日もいつもどおり、いや、できれば1割か2割増しぐらいでよろしくお願いします。ホーム不敗をみんなで一緒に続けていきましょう。

 おまえ…、ここにこんなこと書いて、MDPに書くこと残ってるのか?
(2006年12月1日)
〈EXTRA〉
 ホーム不敗か、ホーム無敗か。ちょっと表現に悩んだ。で、決めた。記録として過去のことを言うときには無敗。現在進行形あるいはこれからのことを言うときは不敗にする。「無敗」は「負けていない」という状態を表す感じだが、「不敗」は「負けない」という意志が入っている。だから「21試合連続無敗」だし「今季ホーム不敗」なのだ。理屈っぽいが。
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