Weps うち明け話 文:清尾 淳

#386(通算#751)

もっと主人公に頼って

 リーグ戦の日程を決める際に、ACL出場クラブに配慮したものにするのは、Jリーグの担当者がかなり苦労するのだろう。なにせ4チームもあるのだ。でも奇数チームだと、今日みたいにACL組同士の試合だけ別の日にやる、ということができないから、もっと困っただろうな。

 

 Jリーグの役員やスタッフの人たちが、一般のファン・サポーターに比べてサッカーへの造詣が深くない、ということはないはずだ。特にサッカーの戦術などよりも、大会の規定や枠組みなどについては、相当に研究もしているのではないか。その結果、20年で少しずつ改良を重ねてきたと思う。

 理想と現実を見比べながら。

 

 たとえばナビスコ杯の今のレギュレーションは、満足いくものではないけれど(予選リーグに不公平が出すぎる)、あれも理想はありながら、現実に即したやり方を模索した結果の苦肉の策なのだろう。だが、もう一度考え直してもらえないか、という思いは残る(今季は、自分たちが予選リーグに出ていないから、忘れていた感はあるが)。

 

 リーグ戦を2ステージ制に退行させる、という案も、そういうことだと思う。世界標準が何なのか、Jリーグの関係者がわかっていないはずはないし、2ステージ制にしたときに、チャンピオンシップ2試合の盛り上がりを越えるダメージが、あることも想像がついているはずだ。
 だが理想を貫けない現実が、この案を浮かび上がらせたのだとしたら、その「現実」が何なのかも含めてはっきりと示して欲しい。たとえば、お金の問題ならお金の問題だと。2ステージ制にすれば、これくらいのお金が入る。そのお金がないと、Jリーグが立ち行かなくなってしまう状態だから、仕方ないんだと(あくまで、たとえば、ですよ)。

 

 そういう現実を広くファン・サポーターに示した上で、その中で理想を貫いていくにはどうしたらいいのか、Jリーグに関わるみんなで考えていくべきなのではないだろうか。
 どうすれば、2ステージ制に退行せず、Jリーグを維持・発展していけるのかを、ある意味では「最大のスポンサー」であるファン・サポーターに問いかけずに結論だけ出してしまっていいのか、と思う。
 昨季のJ1総入場者が約537万人。チケットの平均額を2千円とすると、年間総売り上げは100億を優に超える。これを1割増、2割増にしていく方策をみんなで考えよう、みんなで行動しよう、と訴えるときなのではないか、と思う。

 

 各クラブのファン・サポーターの中には「2ステージ制賛成」という人がいるかもしれない。だが、そうなったとしても、たとえば第1ステージ、第2ステージの優勝クラブが同じだった場合、最大の目的であるチャンピオンシップは行われない。まさか、それぞれのステージの2位同士がプレーオフをやって、あくまでチャンピオンシップを行うという初期のレギュレーション(一度も行われなかったが)にまでさかのぼるわけではないだろう。

 財政的な問題が、2ステージ制への退行の理由ならば、それが根本問題の解決になるとは思えないのだ。

 

 現在Jリーグが直面している大きな問題を解決していくために、一番の主人公であり、喜びの最大の享受者でもあるファン・サポーターを信頼し、そこに依拠していくことも、必要なのではないか。

EXTRA

 5月18日の鳥栖戦のあと、選手たちが出した「俺たちは5万人の前で戦いたい 集え、浦和人」というメッセージ。スタジアムで見た人は「来ている俺たちに言われても…」と思ったかもしれないが、もっと突っ込んで考えれば、「今日来てくれた3万5千人の方が、次は2人で1人を誘って来てください」という意味にも受け取れる。
 もちろん、「チームはもっと面白い試合を見せます」「クラブはもっとホスピタリティーを良くします」ということが前提になっての話だが、本当にそういう具体的なお願いをしてもいいのではないかと思う。
 本文に書いた話、レッズから始めてはどうか。

(2013年5月29日)

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