Weps うち明け話 文:清尾 淳

#405(通算#770)

発信

 Jリーグの2ステージ制退行決定が秒読みに入っているのかもしれない。

「入っているのかもしれない」と曖昧なのは、よくわからないからだ。
 Jリーグの理事会や実行委員会が、どこまでサポーターの声を決定に反映するのかがよくわからないし、その前に「2ステージ制反対」の意見が、レッズ以外のサポーターからどのくらい上がっているのかもわからない。
 これが国会なら、毎日ニュースで報道されるし、強行採決しそうだとか、野党の意見を少し入れて修正しそうだとか、先送りされそうだとか、少しは見当がつく。

 だが、この問題が毎日報道されることはないし、そもそも自分も大きな括りではメディアの範疇に入っているけれど、超ドメスティックなメディアの人間だから、本業(MDP)としてJリーグの中のことを取材に行くことはない。先日もクラブのオフィシャルメディアというのは、報道とは一線を画していることを痛感させられたばかりだ(後述)。

 だから、たまに報道される程度のことしかわからないのだが、ニュアンスとして感じるのは、スケジュール的にはそろそろ決定されそうな日程的だが、意外に(僕にとっては意外ではないが)多い反対の声が、ブレーキをかけるかもしれない、ということだ。

 サッカー専門紙の「エル・ゴラッソ」で取ったアンケートによると、96パーセントが反対、という結果が載っていたが、それはエルゴラの購読者層の中の声であって、無作為抽出ではもちろんない。
 そもそも、エルゴラやサッカーマガジン、サッカーダイジェストなどを読まない人たち、ふだんはJリーグをそれほど気にしない人たちに、興味を持ってもらおうというのが、チャンピオンシップの復活やプレーオフ制の導入なのだから、このアンケートの結果をもって、Jリーグの戦略会議が「世論」とはとらえないだろう。

 それは、スタジアムのゴール裏、すなわち最も熱く応援するサポーターが陣取る場所からの発信も、同じように受け止められるに違いない。特にレッズのゴール裏などは、その最たるものと考えられているかもしれない。
 だが、5月から中断期間を挟んでレッズサポーター(一部と言われるかもしれないが)が行ってきた「2ステージ制反対」の意見発信は一過性のものではない。
 
 順を追ってみると、初めて何らかの発信があったのは、


5月26日の国立での柏戦。
「Jリーグ成人おめでとう頭は赤ちゃんのままだね」
「世界基準からかけ離れた2ステージ制、そこに日本サッカーの未来はあるの?」
 前者は皮肉が過ぎるが、後者はシンプルかつ根源的な訴えだ。

 26日はアウェイだったが、その3日後のホーム埼スタ(仙台戦)でも、それが出された。
 そして中断が明けた6月23日、ナビスコ杯準々決勝第1戦、長居でのC大阪戦。前述の2本目のものに加えて、新しいものが出された。
「俺達は2ステージ制反対おたくはどない?」
 
 よく見ると「俺達は」と「おたく」に傍点がついている。これはC大阪のサポーターに訴えているものだ。「どない?」という表現が、きちんと方言考証を経たものなのかはともかく(笑)。

 6月30日の準々決勝第2戦、埼スタでC大阪サポーターからの返信があった。
「セレッソファンも2ステージ制に反対」
 それを受けて、さらにレッズサポーターが出したのが
「せやろ!年間で一番強いチームがチャンピオンだ!」
 しっかりキャッチボールになっている。最後が「だ!」になっているのが、俳優に関西弁を使わせているドラマみたいで、雰囲気にあっている。
 そして、かなりシリアスなものとして
「Jを愛する仲間達へ 目先の金儲けより大切なものがあるだろ?さあ立ち上がれ!」
 と出された。
 レッズサポーターの仲間へ、全国のサポーターへ、Jリーグそのものへ訴えているのだろうか。とにかく「立ち上がれ!」と行動を呼びかけている。

 6日の国立、甲府戦で、個人の意見を発信するようなゲーフラなどを出そう、という呼びかけがあった。強い声だけでなく、広い声を、ということだろう。
 これがJリーグの意思決定にどう影響を与えるのか、やはり僕にはわからない。
 だが、確実に反対の意見は「声なき声」から変化を見せている。

EXTRA
 明日の朝、9時に続きます。

(2013年7月4日)

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