Weps うち明け話 文:清尾 淳

#423(通算#788)

手間の愛

 さて6日間のファイナリストの初日だ。
 まずは、このことを書こう。

 ホームゲームの前日の夜、必ず1件の携帯メールが入る。

<(略)また、記者席の旗付けを10時北門集合で行いますので、よろしくお願いします。参戦される方は到着時間を添えて○○○まで連絡ください。(略)>

 埼スタのメーンスタンド中段に、メディア用のテーブル席があるが、そこは前面が白い板になっている。そのままではレッズのホームらしくないので、試合のときは赤い旗を張っているのだが、それをやっているのは、サポーターだ。
 上記のメールは、それに協力してもいい、というサポーターに送られるもので、僕は違うことで、そのメーリングリストに入っているので、毎回必ず僕にも送られてくるのだ。その時間に行ったことはあるが、旗付けを手伝ったことはまだない。いつか、やろうと思っているが。
 
 またバックスタンド、アッパー席の最上段の壁に「We are Diamonds」の歌詞を書いたダンマクが張られているが、あれも毎回サポーターが取り外している。メーンスタンドの人たちを始め、初めて埼スタに来た人でも、勝利の後で一緒に歌えるように、という配慮で始めたものだ。

 上記の2つのことは、おそらくクラブに依頼すれば、運営の準備の一環としてやってくれるに違いない(よね? 運営部)。
 だが、サポーターたちは自分たちの役目として、やり続けている。クラブに頼んだ方が効率が良いにも関わらず、だ。
 これを読んでいる人たちには、そのこだわりについて、くどくどと説明しなくてもいいだろう。だけど、説明しなければわからない人、いや、もしかしたら説明してもわからないかもしれない人たちがいる。
 
 Jリーグの役員、事務局の人たちの多くは、一つのクラブを真剣に応援したことがないだろう。あるいはそういうサポーターと裸で付き合ったことがないだろう。
 だから、愛するクラブをサポートすることに自分の時間や労力を使うことに喜びを感じる。そのことが理解できない。
 そうでなければ、ナビスコ杯決勝の「バックスタンドにおけるコレオグラフィー」などという発想は、そもそも生まれないはずだ。
「主催者で企画し、準備しますから、みなさん、こちらの合図で上げてくださいね。あとで写真をダウンロードできるようにしますから」

 彼らは知らない。早朝から集まり、ビニールボードを席に1枚ずつ置いていくサポーターの気持ちを。終わったあと、片付けるサポーターの気持ちを。その作業に子どもを手伝わせる親の気持ちを。
 ビッグフラッグ(浦和名「デカ旗」あるいは「ファミリー旗」)を人海戦術で旗を運び、準備し、広げ、たたみ、片付けるときの喜びを。いや、あの旗を製作するのに協力した人たちの気持ちを。
 旗の下で、入場する選手たちが見えなくても、チームを鼓舞するためなら厭わない大勢のサポーターの気持ちを。
 すべての苦労が、手間が、我慢が、クラブへの愛なのだ。 
 
 ここまで書いて思った。Jリーグ事務局はきっとこう言う。

 でも、昨年はこんなに反対されませんでしたよ。

 わかった。鹿島と清水のサポーターは反対しなかったかもしれない。あるいは、スタンドでのコレオグラフィーをいつもクラブ主導でやっているところのサポーターも、賛同するかもしれない。
 だが、浦和レッズのファン・サポーターの多くは、その席がゴール裏であろうと、指定席であろうと、お仕着せでなく、自分の手間で、自分の仲間の呼びかけでチームをサポートすることが、身体の一部になってしまっている。そのレッズが今回、決勝の片方なのだから、昨年とは違うと考えた方がいい。

 メンツにこだわっているときじゃないと思う。

EXTRA
 ナビスコ杯決勝MDPに載せるサポーターのメッセージは、本日の深夜0時が締切です。あなたの思いのたけを、ぜひ寄せてください。

<ホームページから転載>
◆ファン・サポーターのみなさんの投稿は10月28日(月)24時が締切となります。応募要領、宛先は以下のとおりです。
【応募要領】
・必ず住所、氏名、年齢、電話番号を書き添えてください。
・原則として本名での掲載になります。
・掲載にあたって、趣旨を変えない程度に書き換えることがあります。
・すべての投稿を掲載できない場合もありますので、ご了承ください。
【宛先】
「MDPナビスコ杯決勝特別号」係
・eメール matchday@urawa-reds.co.jp
・FAX 048-814-3253

(2013年10月28日)

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