Weps うち明け話 文:清尾 淳

#432(通算#797)

今シーズンを振り返る③「レッズをレッズに戻す選手」

「それについては非常に責任を感じています」
 そう言われて、困ってしまった。僕には、責める気持ちなど全くなかったのだが。
 12月3日、最終節のMDPに載せる選手をコメントを取っていた。マルシオ・リシャルデスにはこう質問した。

「今季は先発の機会が少なかったが、リザーブに入ったときには、ほぼすべての試合で途中出場し、勝利に貢献していた。逆にマルシオがケガで欠場した試合は、勝点を落としていることが多い。チームへの貢献度は高いと思う。それについて、どう思うか」

 僕は今季のマルシオにずっと注目していた。2011年に新潟から移籍し、2シーズンは多くの試合で先発。常に“王様”だった新潟とは違い、“大駒”ではあるが駒の一つとして扱われ、毎年システムや戦術が変わる中で、それに対応してきたが、移籍の理由の大きな一つであったタイトル獲得は果たせなかった。昨季は原口をワントップにおいて、マルシオと柏木が2シャドーに入ることが多かったが、今季は興梠の加入で前線がどうなるか注目された。
 シーズン初戦となったACL広州恒大戦は、興梠がケガで欠場。昨季と同じく原口がワントップに、柏木とマルシオがシャドーを務めた。しかしリーグ戦では、開幕から興梠がワントップに定着。原口と柏木がシャドーで先発し、マルシオは控えに回った。
 昨季、慣れないワントップで持ち味を十分に発揮できなかった原口が、二列目でゴールに、アシストにと結果を出したこともあり、リーグ戦ではその起用法が基本となった。

 新潟時代から先発を外れた経験のほとんどない、10番を背負った選手のプライドを僕は心配した。
 だがマルシオの口から、先発で出られないことへの不満は一切聞かれなかった。そしてリードした後半、投入されてそのまま勝利することが多かった。
 第4節のアウェイ新潟戦では、前半先制したものの、後半になっても落ちない新潟のハードワークに苦しめられていたが、マルシオが90+2分にダメ押しゴールを挙げた。だが、おそらくそのゴールがなくても、相手陣内でボールをキープし、攻撃の構えを見せながらうまく時間を使うマルシオの投入で、逃げ切ることもできたに違いない。

 マルシオ不在の大きさを感じたのは、9月7日、ナビスコ杯準決勝第1戦の川崎戦だった。後半立ち上がりに追加点を挙げ、2−0とレッズがリードしたが、その後、3失点。2試合合計で決着のつく方式だから良かったが、リーグ戦であれば、とんでもない逆転負けになっていた。後半の試合運び、特に1点返されてからがチグハグだった。この日ケガで欠場していたが、試合中「マルシオがいれば…」と思ったものだ。
 その「れば」はF東京、甲府、湘南のリーグ3試合でも当てはまってしまった。F東京戦は前半0−2に後半追いついたが、終盤に決勝点を入れられ、甲府戦は1−0で勝点3を得る寸前に追い付かれた。湘南戦は後半逆転されたが、最後にドローに持ち込んだ。3試合で得た勝点は2だったが、少しのことで勝点7、うまくいけば勝点9を得ていてもおかしくなかった。#431で「運が良ければ」と書いたが、その運を呼び込むキーマンはマルシオではなかったか。劇的に試合の流れを変えるのではなく、前がかりになりすぎ、あるいは下がりすぎたチームを落ち着かせる選手。言わば、レッズをレッズに戻すことができる選手だ。そうなれば、レッズはかなり強い。

 ナビスコ杯の決勝の後、マルシオが別メニューになり、嫌な予感がした。そしてその予感はアウェイ仙台戦でも的中した。ここで落とした勝点2と9月の3試合の分を合わせれば、広島との勝点5差は引っくり返っていた。
 決してマルシオの欠場だけが、今季優勝できなかった原因ではないが、レッズとしてまだ足りないところを埋められる選手が、他に見当たらないことは事実だ。
 そういう思いが、シーズン最後の質問として出てしまったのだが、マルシオは「お前がケガさえしなければ、優勝していたのに」と言われたように感じたのかもしれない。彼がいかにチームにとって必要不可欠な選手かを言いたかったのだが。

 今季は移籍で選手層が厚くなったと言われる。ポジションとしてはそう言えなくもないが、チームの中での役割という意味ではどうだろうか。
 今季の経験が選手全員のものとして、来季に生かされることを望む。

(2013年12月20日)

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