Weps うち明け話 文:清尾 淳

#433(通算#798)

今シーズンを振り返る④「警告1枚」

 それはないだろ、という判定はよくある。
 基本的に主審は誰よりも近くで見ているはずだから、レッズに不利な判定に「ええー!」と思っても、ひいき目で見るからそうなるのは当たり前で、たいていは正しいジャッジだ(当然だが)。
 でも中には首をかしげる、というより首を横に振りたくなる判定もある。
 試合中、ゴールラインの3〜5m後ろにいることが多い僕は、かなりプレーを近くで見ているし、ほとんどの場合は主審とほぼ反対側から見ることになる。見え方が違うのだから、判断が違ってもおかしくないし、審判の資格を持っていない僕の見方は、やはりレッズびいきのものでしかないと自覚している。
 それでも「うそぉ〜」と思わず口から出てしまうことはあるのだ。
 
 今季の8月17日(土)、第21節大分トリニータ戦の前半31分もそうだった。
 0−3から興梠が1点を返してもまだ2点のビハインド。ペースを取り戻して攻めるレッズは、柏木がエリア内に走り込み、後方から浮き球のパスが来る。DFと交錯した柏木はバランスを崩し、思わず上げた手にボールが当たってしまった。
 当然、ハンドのファウル。そして西村雄一主審はイエローカードを示した。
 なに、それでイエローかよ!
 立ち上がって文句を言いたくなった(立ち上がったかもしれない)。
 味方のクロスに対して、届かないからと手を出して触ってしまうことがある。故意ではなく、何とか触りたいという思いから咄嗟に出てしまうのだろうが、それでも「反スポーツ的行為」で警告。それは、よく知っている。
 だが、この柏木のプレーは、届かないから咄嗟に手が出たというより、ボールを受けようとジャンプしたところ、DFに引っ張られて身体が傾き、バランスを取るために自然と手が上がったものだと思う。僕の位置からはそう見えた。
 
 ふだんなら、見る位置が違うから仕方がない、不運な警告、で済ませただろう。この試合は4−3で、レッズ初の3点差からの逆転勝ちを収めた。この警告が試合の結果を大きく左右したわけではない。しかし、僕はいつまでも引きずっていた。それは、これが柏木にとって今季初めての警告だったからだ。

 今季の柏木陽介は、警告がないな、と気が付いたのはいつごろだったろうか。
 リーグ戦の前半を折り返しても警告ゼロ。こんなことは珍しい。
 柏木が受けた警告というと、ラフプレーより判定に対する異議や反スポーツ的行為が多い印象があった。試合で自分のプレーや味方の攻撃がうまくいかないと、だんだんイライラしてくる様子が見た目にもわかり、「今日はヤバいな」と思っていると、案の定警告を受ける、ということもあった。
 だが、それは去年までの話。調べてみると2010年レッズに来てから、4枚、6枚、5枚と毎シーズン“コンスタントに”4枚以上のカードをもらっていた。今季は17試合でまだゼロ。これは試合中に、イライラすることが少なくなったということだ。実際、昨季までは試合中にウンザリした顔や、やる気のないそぶりを見ることもないではなかったが、それが今季は僕の記憶にない。
 チームが好調だったこともあるだろうが、毎試合うまくいくわけではないから、柏木自身が意識して自分の気持ちをコントロールしているに違いない。

 だが、そういうことを本人に聞いたら途端に警告をもらうかもしれない。ここはグッとこらえて、柏木が今季初警告を受けたら質問しよう。いや、最後まで無警告で行って、「優勝の一因」として披露したいものだ、と我慢していたのだが、21節でついに警告。僕が「西村さん、それはないでしょ」とつぶやいたのも無理はないだろう。
 次の週、柏木に警告の件を質問した。
「ホンマやで。本気でフェアプレー個人賞狙ってたのに」
 冗談でもなかったようだ。
 開幕前からそんな目標を立てていたわけではなく、途中気が付いたら警告がなかったので、「それならば」と思ったそうだ。
 もともと、うまい選手だから、判定に文句を言いたくなるのをこらえ、集中を切らさなければ、警告をもらわずにプレーを続けることは難しくはないのだろう。決して消極的になるのではなく。
 そして、それはチームの勝利を目指すのと同じ道なのだ。

 フェアプレー個人賞の可能性がなくなった22節以降も、柏木が無警告の試合を続けたことからも、彼の姿勢が今季大きく変化したことは十分わかる。
 勝てば優勝の可能性が残った33節の鳥栖戦。徐々にタイトルへの道が細くなっていくような苦しい展開の中で、最初から最後までゴールを目指してチャンスを作っていた柏木は、勝敗を度外視して頼もしい存在だった。
 終了のホイッスルのあと、ピッチに倒れ込みも、芝をたたいて悔しがることもしなかったが、落とした肩と少しかしげた首、そしてややうつろな目から、「何で勝てへんねん!」という自分とチームへの怒りのようなものを感じた。それを来季につなげることができるのかが、ちょっと心配だったが、最終節を前に柏木は、MDPの取材にこう答えた。
「レッズに来てから、いろんな意味で人としても成長した部分があって、それを生かせた1年だった。来年はそれを全部生かして、チームの優勝のために、良いプレーと良い結果を出すことを心がけたい。自分がチームを引っ張っていくようにしたいし、チームが良くないときに落ち着かせる役割を果たしたいです」

 良かった。そこに期待したかったのだ。今季、見せてくれた柏木の変化を、本人だけに留めるのではなく、チーム全体に広げてくれれば、試合運びの面でレッズはもっと巧者になれるように思う。

(2013年12月25日)

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