Weps うち明け話 文:清尾 淳

#819

カモフラの9番

 きょう6月4日(水)からチームはしばらくオフになった。
 1日(日)、埼スタで会った多くの人から「清尾さん、今日が終わればひと息つけますね」と言われたが、年間カレンダーを見て「6月になったら手が空くのでやりますよ」と受けた仕事があり、山田暢久引退試合のMDPもやらせてもらえるので、レッズの公式戦がなくても、実はけっこう忙しい。いや、いつもの仕事と内容やサイクルが違う分、スムーズにいかないことも予想される。先日、スケジュールを組んでいて、大げさでなく少し蒼ざめた。

 日曜日の話だが、僕は「原口元気写真展」の設営に立ち会うため9時ごろ埼スタに着いた。
 写真を埼スタに納品したのが前日の夕方で、前日の準備作業に間に合わないため、当日の朝9時から始めると聞いたからだ。写真を選んでプリントし、キャプションを作ってしまえば僕の仕事は終わりなのだが、特急でやった仕事のため、何かアラがないとも限らない。万一、何かを発見しても朝のうちならば、12時の開場までに手を打てるかもしれない。そんな理由だった。
 途中、自転車や徒歩で埼スタに向かう人を何人も追い抜いた。開場6時間前の当日抽選に集まるサポーターだ。
「あ、カモフラの9番」「また、カモフラの9番」
 レプリカ姿の多くが原口元気のものだった。

 きょう、「カモフラの9番」を着た人は全部で何人になるのだろう。「24番」も合わせれば相当な数に違いない。
 そんなことを思いながら、写真展のコーナーに行くと、まさに写真を壁に張っている最中だった。他の展示物は全部出来上がっており、まさに僕が担当した育成時代の写真待ち、だったことが明白。12時開場の試合で、当日になっての設営というのは、できれば避けたいところだろう。クラブの担当者にも、設営の担当者にも非常に申し訳ない思いだった。
 それでも来て良かった。前日、急いでやったキャプションの間違いを一つ発見。もう作り直しができないので、手書きで直す。
「これ、見に来た人が『間違ってるぞ」って直してみたいに見えないかな」
 ちょっと気になったが仕方がない。
 開場後、しばらくして写真展のコーナーを見に行って、盛況ぶりに驚いた。迫力のあるB2判の写真パネルだけでなく、僕の撮った育成時代の写真にも人が集まっていて、多少ハードだったが準備をして良かった、と実感した。しかしA3サイズというのは、机に広げるとけっこう大きいが、埼スタの壁に張るとかなり小さく見えるな。
 特に撮影者の名前を入れてもらわなかったのだが、何となく「こんなのを撮っていたのは清尾しかいまい」と思ったのか、知らない人からも「ありがとうございます」と声をかけられた。

 原口は運がいい。
 レッズが育成関連の情報誌「Little Diamonds」を発行するようになったのが2004年からで、それまでMDP用には全国大会の準決勝ぐらいにしか行かなかったのが、なるべく行ける試合には行って取材するようになった。ちょうど大山俊輔や中村祐也が高校3年生だった年で、原口がレッズのジュニアユースに入ったのもその年だった。
 またトップが関東のチームとの試合のとき、条件が整えばボーイズマッチで、中学1年生同士の試合をするようになったのが2004年からだった。そうでなければ、中学1年生のときの写真は残っていなかっただろう。
 クラブのホームページのスタジアムイベント情報のコーナーに「秘蔵写真」という表現があったが、MDPの「INFORMATION」コーナーでは削除した。何も大事に隠しておいたわけではなく、発表する機会がなくて、人の目に触れなかっただけの写真を「秘蔵」と称するのは、ちょっと違う。よく「独占インタビュー」と銘打って、いかにも自分たちだけが取材できたような触れ込みをするメディアがあるが、あれと同じでかえって白ける。「!」が多い文章も同じだ。
 いろんな偶然が重なって、中学1年から高校2年まで、レッズの育成で過ごした時期の原口の写真をそろえることができた。だが条件はあっても、本人がそれぞれの試合で活躍しなければ、あれだけの枚数が出せたかわからない。
 運だけではなく、本人の力があの写真展を可能にしたのだ。

 その後のナビスコ杯名古屋戦で、原口自身のゴールが見られなかったのは残念だったが、後半15分のFKはユース時代を思い出させてくれ、少し満足した。高2のころはFKキッカーとして、けっこうスコンスコン決めていたのだ。 
 名古屋戦のFKもGKが楢崎でなければ決まっていたかもしれない。ただ、弾かれた後、槙野が詰めてくれた。何故かゴールを決めた槙野の名前は、記者席では全く聞こえなかったが(一部の人は「槙野コール」をしていたと後で聞いた)、僕は記者席で「槙野、でかした」と叫んでいた(ちょっとエラそうだが)。
 あのままなら「原口が惜しいFKを放った」だけで終わっていたのが、「原口は再び2点差に相手を突き放すゴールのお膳立てをした」と、試合の勝利に大きく貢献する結果となったのだ。何よりも、最後に原口のFKがしっかり生かされたことがうれしかった。たった半年足らずの着用だったが「カモフラの9番」が、最後にしっかり目に焼き付いた。

 浦和レッズで10年半、これまでの人生の半分近くを過ごした原口元気。そのうちの前半の5年間を含めて、ずっと見ていることができて、僕自身が幸せだったと感じている。
 14/15シーズンのブンデスリーガで彼が活躍することで、僕はさらなる幸せと少しの寂しさを感じるだろう。

EXTRA
 今日から、レッズサポーターでもある関根秀星さんの個展が東京で開かれる。関根さんは、レッズサポーターがスタンドで展開するビジュアルサポートのデザインを担当している人。イラストレーターとしては、サッカー選手を内面の思いまで伝わってくるようなタッチで質感たっぷりに描くことで知られている。
 可能な人は、ぜひ一度ご覧ください。
「関根秀星 個展 追想 FOOTBALL MEMORIES」
・6月4日(水)〜9日(月)
  11時〜19時(最終日は17時まで)
・アメリカ橋ギャラリー
 (JR恵比寿駅東口徒歩5分)
 (渋谷区恵比寿南1−22−3)
 AmericaBashiGallery.com

(2014年6月4日)

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