Weps うち明け話 文:清尾 淳

#826

57歳

ある日の大原。
 前レッズ代表の橋本さんと、大原で洗濯を担当している女性スタッフが、「じーじ」「ばーば」と呼び合っていた。2人の正確な年齢は知らないが、ふだんのアクティブな様子からは、その呼称が似つかわしくないなと思いながら、自分の孫には絶対に「じーじ」とは呼ばせまい、と誓っていた。

 その女性スタッフに年齢を聞かれて57歳だと答えると、「いいわね、若くて」と言われた。最近、そんな言葉を掛けられることはめったにないし、57歳が「若い」という表現に苦笑してしまったが、相対的な感覚だから仕方がない。
 でも、ふと思いついて、こう言った。
「あなたも57歳のときがあったんだから、いいじゃないですか」

 本当にふと、そういう考えが浮かんできたのだ。
 年上の人が、年下の人間に対して「若くていいね」というのは、行動力や体力などをうらやましがる意味もあるだろうが、今後の可能性が広がっていることがうらやましい、という心理もあるかもしれない。
 だけど、たとえば現在67歳の人は47歳からいきなり今の年齢になったわけではなく、57歳という時期を含めた20年間があったはずだ。逆に現在57歳の僕が67歳まで生きていられる保障はないのだから、僕の方が「いいですね。僕より10年も多く人生を経験できて」と言ってもいいんじゃないか。
 同じ食事を先に食べ始めて、残りが少なくなってきた人が、後から食べ出してまだ半分残っている人をうらやましがるようなもの、というのはおかしな比喩だろうか。でも突発事態のために、食事を止めてすぐに出かけなくてはいけなくなったら、「俺はまだ満腹してないよ。いいな、先に食べ始めた人は」と思うのが普通だろう。

 この考えは、その女性スタッフから声を掛けられて思いついたのだが、決して年長者に反論するためのものではない。
 自分が、年下の人間に対して、若いというだけでうらやましがることはするまい、逆に若い人が「いいなあ、そういう人生を歩んできて」とうらやましがるような年寄りになりたい、と思ったからだ。
 念のために言うが、自分がこれまでそんな立派な人生を歩んで来た、と言っているのではない。あくまで今後の話だ。
 これまで「あのとき、ああするべきだった」「こっちの道を選択していたら」と思うことは山ほどある。だけど時間を戻すことはできないし、今の自分を作ってきたのは、周りの環境も含めて自分自身なのだから、後悔するのは精神衛生上良くないだけで何もプラスにはならない。
 ただし反省は必要で、反省することで今後の人生から後悔のネタを少しでも減らすことはできるだろう。

 若いから思い切ったことができる。
 そうとは限らない。
 57歳で思い切ったことをやって失敗しても、そのために苦しむ時間は若い人より短くて済む、という考え方もある。
 考え方もある?
 違うな。そういう考え方になった。今年。

EXTRA・1
 とはいえ、若い人たちに多くの可能性とそれを実現するための時間が与えられている(かもしれない)のは事実で、やっぱり上記の文章は、自分が若い人をうらやましがらないようにする戒めの性格が強いな(笑)。
 だけど、若者をうらやましがるより、周りにいる尊敬すべき先輩たちを見て、自分も頑張ろうと思うほうがよっぽどアクティブだから、やはり間違ってはいないと思う。

EXTRA・2
「最近、更新がないですけど、清尾さんも自粛ですか?」と8月6日(水)、あるサポーターに言われた。「も」というのがよくわからないが、たしかに気がつけば7月は更新なしになってしまった。
 実は本文にある大原での会話は7月上旬のもので、これを書こうと思っているうちに、19日(土)からの「週刊MDP」に突入してしまった。初めから上記で終わるつもりなら、すぐに書けたのだが、その後に続く文章を呻吟しているうちに、7月が終わってしまった。6日に指摘を受けなかったら、書きあがってもサイト運営会社の夏休みに入って、更新は18日(月)以降になってしまっただろう。
 指摘に感謝しつつ、続きがどこまで書けるか。頑張ってみよう。

(2014年8月8日)

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