Weps うち明け話 文:清尾 淳

#828

記念日


 再来年から8月11日が「山の日」になるという。夏休み中なので、子どもはあまり関心を寄せないかもしれないが、勤め人にとってはお盆休みと合わせて連休が取りやすくなる、というメリットがあるかもしれない。これで国民の祝日は年間16日で、祝日がない月は6月だけになった。
 国民の祝日というのは、何かを忘れないため、あるいは何かを思い起こさせるための記念日のうち、特に広く国民に関係したもので、かつ「みんなで祝おう」という趣旨で制定されたものだと思う。広く国民に関係する忘れてはいけない日でも、8月15日が「祝日」とならないのは当然だ。冒頭の「山の日」も、当初はお盆と隣接した8月12日が候補に挙げられたというが、この日は85年に起こった日航機墜落事故の日なので「祝日」とするには違和感があるとして、11日になったという。

 国民の祝日以外に「記念日」はたくさんある。各業界団体が制定したものを含めれば、きっと毎日が何かの記念日だろう。それも複数で。
 それ以外に、各家庭にはそれぞれの記念日があるし、最もベーシックなものが家族の誕生日だ。
 浦和レッズはどうだろうか。
 2016年か17年に行われるであろう、25周年記念事業(きっとあると思う)の一環として、みんなの意見を集約して浦和レッズの記念日を制定してはどうだろうか。新しいサポーターに歴史を知ってもらえる機会にもなるはずだ。
 その案を10日分出せ、と言われたらどうするか。タイトルに絡んだ11月3日や12月2日、11月14日は当然、頭に浮かぶだろうが、僕の性格からして、お祝いでなく忘れてはならない日を挙げるような気がする。「記念」というと、お祝い的なイメージが少しあるが、念(心)に記すのだから、記念する出来事の性格は問われないだろう。

 筆頭は、やはり11月27日か。
 J2降格というのは、11月27日の試合だけで決まったわけではない。試合だけなら勝っている。それまでの29試合の積み重ね、いや積み重ねが不足していたことが原因なのだし、その要因は一つではない。主力選手の怪我もあったし、シーズン中の監督交代が、その時期を含めてどうだったのかということもある。シーズン前の準備にもさかのぼって要因を探すことも必要かと思う。
 二度とJ2には落ちない、そのために何をするか、何をしないか、という気持ちを誰もが失くしてはならない。この日をレッズの記念日の一つとすることに賛同する人は少なくないだろう。

 もう一つ強く推したいのは5月17日だ。
 相手サポーターの蛮行に端を発した一連の騒動のため、日本最大のサッカー専用スタジアムである埼スタのキャパシティが約1600席減るきっかけになった日だ。山田暢久引退試合のとき、南スタンドに緩衝地帯がないことが実に新鮮だった。
 数年前までは「あそこ、もったいないですね。あんなに空ける必要があるんですか」と言う新顔のメディア関係者に、08年のレッズ-ガンバ戦のことを説明したものだったが、最近は埼スタが満員にならないので、その疑問を抱く人がいないのは残念だ。満員のスタンドの中に存在する「空席地帯」こそ、「5.17」を記念する、ある意味で顕著なモニュメントだ。
 ちなみに「5.17」の引き金になったのは、相手サポーターの考えられないような行為だったが、それが制裁金2,000万円を課せられる大騒動になったのはクラブの適切な対応がなかったからであり、クラブが目指す「警備のいらないスタジアム」の警備とは何かを考えさせられる契機になった。
 だがネガティブな出来事はあまり積極的に思い出したくない。できることならなかったことにしてしまいたくなるのが人情だ。負けた試合のビデオは、あまり見たくない。だからこそ記念日にする意義もある。

 それでは、3月8日や3月23日はどうか。
 2017年になったら、僕もレッズの記念日に入れることを主張するかもしれない。だが今は推せない。
 なぜなら3月8日に起こった問題は、まだ記念日になどできない、現在、進行中。真っ只中だと思うからだ。
 進行中だとは思わない、思いたくない人も多いと思う。
 しかし今、スタジアムで起こっていること、起こっていないことは、明らかに「3.8」がまだ終わっていないことを示している。進行中のものが、どう収束するのかはっきりしないうちに、記念日にはならない。
EXTRA
 レッズの試合にいつも撮影に来ておられるカメラマン、清水和良さんの写真展「Theatre of Football」が今日から始まった。
 JR北浦和駅西口から徒歩10分の埼玉県立近代美術館「一般展示室1」で、8月24日(日)まで。入場無料。10時から17時。

(2014年8月19日)

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