Weps うち明け話 文:清尾 淳

#841

いま大事だと思うこと


 10月5日のMDP460号から、「浦和レッズの応援はどうなっていくのか」という連載を始めた。第1回は太鼓の復活について、淵田レッズ代表へのインタビューだった。

 誰かに話を聞いてそれを載せるとき、インタビュー形式が良いか、モノローグ(一人語り)形式が良いか、と考える。もちろんテーマによって、ふさわしい形式が決まると思うが、今回はインタビュー形式にした。
 理由は二つ。インタビュー形式にすると、質問にかこつけて質問者(この場合は僕)の意見が述べられるからだ。MDP460号を読んでくれた人はわかると思うが、質問の部分がだいぶ長くなっている。それらの質問がすべてサポーターの意識と合っているかはともかく、僕が抱いている率直な疑問を提示した。
 もう一つの理由は、そんな質問者の意見に対する答えを、モノローグ形式で書くと不自然になるからだ。

  MDP460号を読んだ人にとっては繰り返しになるが、補足も含めて少し書かせてもらう。補足の方が長いんだけど。

 まず前提として、横断幕などと違って「太鼓は禁止されていない」ということを、あらためてはっきりさせたい。先週の埼玉新聞にも淵田代表のインタビューが載って、その中でも話が出ていたが、今季、太鼓は一度も禁止されていない。
 3月29日(土)の神戸戦の直前に、応援の発信を行ってきたグループが解散した。団体としての活動をしないということだから、神戸戦からは太鼓もなく、チャントの発信場所もさまざまになった。
 しかし太鼓が禁止されたわけではないので、誰かが持ってきて叩き始める可能性は十分ある。しかも、あちこちで。そうなってはスタンドが混乱してしまうことを危惧したクラブは、4月4日(金)に「オフィシャルフラッグ類の掲出とリーディングアイテム(拡声器、太鼓等)の申請について」という声明を発表し、太鼓を叩きたいグループには事前申請してもらうことにした。当然ながら、重点禁止6項目など、クラブが決めたルールを遵守してもらうことを確認した上で、申請したグループ同士で運用について話し合ってもらった結果、太鼓の再開は時期尚早ということになった。
 大雑把に言ってしまえば、そして現在に至る、だ。
 #839でも書いたが、横断幕などの掲出物禁止と混同されて「クラブが太鼓をやらせない」と誤解している人が非常に多かった。
 まず、そうではないんだ、ということをはっきりさせないと話が進まない。

 では、なぜ禁止されていないのに、そして太鼓の復活を望む人が多いのに、今日まで太鼓が叩かれていないのか、という疑問が生まれる。4月6日(日)の段階で太鼓の申請をしたグループが複数あったにもかかわらず、「時期尚早」となって今に至っているのはなぜか。
 それには、太鼓って何? という問いがあらためて必要になる。
 太鼓は、大勢が発声するチャントのリズムを取ったり、開始と終了の合図をしたり、という役割がメーンだと思う。応援のツールではあるが、応援そのものではないだろう。大事なことは、太鼓のあるところが応援の発信地点になるということだ。すなわち、太鼓を叩くということは、ここが浦和レッズの応援の中心ですよ、と宣言することに等しい。
 それまで応援の発信源となってきたグループが解散して、すぐに新しい中心グループができる、ということは考えられない。群雄割拠的にいくつものグループができて、それぞれが発信源となることも考えられたが、4月6日の話し合いでは「そこで太鼓を使うのはしばらくやめよう」となったということだろう。実際、4月ごろはスタンドのあちこちからチャントが始まり、それが広がることもあれば、そこで終わることもある、という状態だったと思う。あのとき、各所で太鼓が使われていたら、それはそれで大変なことになったはずだ。

 その一方で、やはり浦和レッズとしてのまとまった応援を取り戻したい。そう願うサポーターが集まって、ずっと相談を続けてきた。それは太鼓の復活を目指すことが主眼ではなく、応援の中心を担っていくグループを作っていくということだ。
 中断期間が明けて、その動きは進んできた。実質的に、現在は太鼓こそないが、試合の際にはほぼ一つのグループから応援の発信がされていることが多いようだ。
 だが、ちょっと待ってもらいたい。
 3月の末に、グループが解散したのは、差別的横断幕掲出の直接的グループではないが、その仲間としての責任を感じてのことだったはずだ。またクラブは「差別的発言・行為」だけでなく、ごく常識的なルールさえも守られないことが過去にあったのを重視して、今後は「重点禁止6項目」を再度徹底していく、と宣言したのではないか。
 新しく応援の中心を担っていこうという人たちが、再び同じような過ち――差別的発言・行為以外のルール違反も含めて――を犯さないという保障はあるのか、というのは多くのサポーターが知りたい部分のはずだ。

 MDP460号の「浦和レッズの応援はどうなっていくのか①」では、「太鼓を含めたリーディンググループができつつある」という見出しどおり、「太鼓は禁止されておらず、その復活はサポーターの手に委ねられている」ということと「新たに応援の発信源を担おうとするグループがある」ということを、多くの人に知らせることが最大のテーマだったと言える。
 クラブは浦和レッズについてのすべてのことについて関わっていかなければならないのはもちろんだが、ここからは当該グループや賛同者だけではなく、多くのサポーターが考えなければいけないところだと思う。
 
 浦和レッズはサポーターが一つのグループに組織されているわけではない。大中小さまざまなつながり、ポリシーを持ったグループがある。
 ただ組織上は一つでなくても、行動においてまとまる必要があるときは、そうしてきた。たとえばホームゲームのときの前日抽選の仕切り、アウェイの開場待ち並びの仕切り、ビジュアルサポートの呼びかけと準備など、みんなが共同歩調を取らなくてはいけないときは、誰か個人が、あるいはグループが仕切ってやってきた。
 試合中の応援は、その中でも重要なものだが、それも同じだ。決して応援を発信しているグループに全幅の信頼を置いているわけではなくても、「勝利のために」という一致点で、応援を合わせてきた。

 だが3月8日の事件を皮切りにした一連のことで、応援の発信源に対する思いは、さまざまに分かれている。
 どういうグループがやってもいいから、まとまって応援したい、という考えもあるだろうが、以前とあまり変わらない人たちがやるのでは、自分は合わせたくない、という考えもあるだろう。あるいは1か所からの発信にこだわらず、自由にやった方がいいという考えも聞いた。
 浦和レッズが誕生して23年目。まだ何もなかった92年のスタンドから応援を構築していくには大変な独創性と行動力が必要だっただろう。だが、いま新しくスタートするのは、それとは別の大きな苦労が伴うと思う。

 今季の状況の中で、新しく応援の発信源になっていこう、と決断するのは非常に勇気のいることだ。それに向けて何度も話し合いがもたれ、先日は試合後に200〜300人規模での話し合いが行われたという。
 だが越えるべきハードルはまだまだあると思う。
 浦和レッズは、Jリーグ内外からの信頼を取り戻すのに非常に苦労をしているが、それと同時に、浦和レッズの中での信頼関係を取り戻さなければいけない。それはクラブとサポーターの間の信頼ももちろんだが、応援に関してはサポーター同士の信頼が一番なのではないか。
 応援の中心になっていこうというグループは、自分たちの周りだけではなく、埼スタに集う全てのファン・サポーターに理解を求めるような覚悟が必要だ。それもスタンドからトラメガで話すだけではなく、あちこちの場所に出向き肉声で相手の目を見て話すこと。もちろん、メディアを使っても良いだろう。
 MDPで「浦和レッズの応援はどうなっていくのか」を連載するにあたって、初めはテーマを替えて4回のインタビューということも考えたが、それをやめたのはサポーターからの意見、疑問を特集する回、直接話を聞いてそれを掲載する回もあるかな、と思ったからだ。

 こう言うと選挙活動のようだが、まさにその要素はある。今のままスタート(太鼓を復活させることが、その狼煙になるのだろうが)させても、ある程度の成功は収めるかもしれない。しかし、絶対にモヤモヤは多くのサポーターに残るし、以前よりも素晴らしい応援ができるのかは疑問だ。選挙にたとえて言うと、当選はしても投票率が非常に低いようなものだ。より多くの人に理解され、認められることが、投票率、得票率の高い当選となり、新しいレッズの応援ができていくエネルギーになるのではないか。
 そしてさらに選挙にたとえて言うなら、有権者たるサポーターは一票を投じる代わりに、この動きに対する意見を直接、あるいは間接にぶつけて欲しい。より多くのサポーターが関わってできていくものこそ、新しいレッズの応援にふさわしいと思う。
EXTRA
 これだけ長く書いて何が「EXTRA」だ、とも思うが追記で一言。
 昨年まで、「応援の中心になっているメンバーには怖くて何も言えない」という声を少なからず聞いたし、今季の初めは「ある選手のゲーフラを上げていたら『降ろせ』と言われた」という話も聞く。そんな中では信頼関係も何もあったものではない。
 多くの人と話すとき、理解を求めていくときには、まずは、そのイメージを払拭するところから始めなければならない。ある意味では、ゼロからのスタートではなく、マイナスからのスタートだ。

(2014年10月9日)

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