Weps うち明け話 文:清尾 淳

#845

必死ということ


 どっち見たって同じだろうが(苦笑)。

 日産スタジアムの大型ビジョンは、南北サイドスタンドに同じものがある。北側(横浜M側)を見て、87分51秒。“念のため”反対側を見ると87分52秒になるところだった。両大型ビジョンの時計が違うはずがないのに、早く時間が過ぎて欲しくて思わずそんなことをしてしまった自分が可笑しかった。
 そしてまたボールのある辺りに目をやると、青木が齋藤学を倒したところだった。
 PKではなくてホッとしたが、この時間に入れられて同点、というシナリオが用意されているような気がした。その思いを頭から振り払って西川を見つめた。祈りはしなかった。ただ選手たちを信じて見つめた。藤本淳吾のFKはレッズの壁に当たり、そのこぼれも必死でクリアした。

 あらためて最初から。
 11月3日(月・祝)の横浜F・マリノス戦は、今季最も泥臭い試合だった気がする。
 4月から5月にかけて無失点試合を続けていたころ、1−0で勝った川崎戦、横浜M戦、F東京戦も泥臭い部分はあったが、レッズらしい試合のコントロールができていた時間も長かった。特に前半は。
 しかし、この横浜M戦は前半から、よく守ったという印象の方が強い。それも、いわゆる「堅い守り」というよりは「必死の守り」。リーグ最少失点(この試合でレッズもリーグ最少に並んだが)の横浜Mの守備をなかなか崩せず、カウンターを受けることも多かったが、ファーストディフェンスをサボらず、しかも一発で奪い返せなくても、二の矢、三の矢でアタックに行き、相手の攻撃を遅らせる。
 ミスも何回かあったが、それを味方がカバーし、失点にしない。相手のシュートやラストパスをしっかり感じて、最後は身体に当てて守る。
 何も新しいことではなく、今季の守備のやり方を徹底していただけなのだが、その集中が最後まで途切れなかった。逆に言うと、そういう守備に回る展開が多かったということだ。前線に当ててキープしたところから多彩な攻撃を仕掛ける、という興梠がいるときの攻撃ができにくかったことも、その要因だろう。

 いつも必死にプレーしているのはもちろんだが、その必死ぶりの次元が一つ上だった。
 特に相手のCKのときの位置取りやマークの執拗さは、松尾一主審も呆れたのではないか。横浜MのCKが4回だったから槙野に1回警告が出されただけだったが、CKがもっと多ければそれでは済まなかったかもしれない。それほど、「絶対にここで点はやらない」という意識がビンビン感じられた。
 セットプレーのときだけでなく、90分のほとんどで必死。どこかで抜かなければもたない、と言われているサッカーにおいては、なかなか難しいことを、この試合の選手たちはやり遂げたと思う。 

 40,571人という入場者数が発表されたとき、日産スタジアムにどよめきが起こったように感じた。おそらくいつも横浜Mのホームに来ているファン・サポーターの感嘆の声ではなかったか。今季3万人を超えたのは第11節のG大阪戦だけで、4万人の大台は初めてだったらしい。そのうちメーン、バックも合わせて赤い人は1万人? いや、4分の1ということはないだろう。
 とにかく、あの試合を生で見た1万人以上のレッズファン・サポーターは何を思っただろうか。
 この必死の選手たちが築いた、頂上への最後の一段。これを一気に昇りきる。そう決意してスタジアムを後にしたはずだ。昨日は何人もの人と「次で決めましょう」と声を掛け合った。調子に乗って浦和についてから、シーチケホルダーバッグを肩に掛けて信号待ちしている知らない人にも「次で決めましょうね」と手を差し出してしまった。

 試合後のヒーローインタビューで関根は「この調子でガンバにも勝って」と言ったが、昨日のレッズは決して全体の出来が非常に良かったわけではない。気持ちと結果は素晴らしかったが。
 11月22日の埼スタには、5月17日の54,350人を超えるレッズファン・サポーターが集まる勢いを見せている。相手の外国籍選手を見に来るのではなく、レッズの優勝への期待を胸に来場する人で、スタジアムは膨れ上がるだろう。
 それだけでも選手たちの大きな力になる。
 だが、そのパンパンのスタンドをさらに後押しのエネルギーにすること。その方法をレッズサポーターは何年も掛けて磨いてきたはずだ。今季は、自分たちの力を十分に発揮できない状態での応援を余儀なくされてきた。太鼓が復活し、応援がまとまってきた今でも、以前のようには戻っていない。
 だが戻すための努力、以前を上回るものを作っていくための努力は、今季のうちにもできるはずだ。
 
 昨日の試合で感動的なシーンはいくつもあったが、そのうちの一つ。後半42分過ぎ、横浜Mのロングボールをエリア付近で槙野が競り合い、大きなクリアにならずに左に流れた場面で、いち早く柏木が中央から全速力でボールに向かい、相手より一瞬早く蹴った。体力が限界に近い時間帯で、決して俊足とは言えない柏木のこの走りも、選手たちの必死さを象徴するシーンだった。
 選手たちが見せた必死さ。ハンパなことではそれに応えきれないだろう。

EXTRA
 ゆうべ、寝たのは12時を回っていたと思うが、意識が目覚めていて、結局3時半ごろに起きてしまった。トシだから? それもあるだろうが、このコラムの原稿が頭に浮かんで離れず、よく寝られなかった。こんなことは初めてだ。

(2014年11月4日)

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